詩『盗聴』(ルネ・マグリットによる絵画作品『The Son of Man』に寄す)(作:蜂芳弌)
壁紙の隙間を縫って解き放たれた音、
盗聴器越しに誰かの鼓膜を震わす叫び。
朝靄に混じるは鯨が噴射した潮、
乱反射する寄せ集めの結晶。
緑色の林檎を齧る。
私の言葉を盗聴している誰かに
微かな思いを馳せる。
前髪の組織を断って錆び付いた鋏、
盗聴器など仕掛けられていない腑抜けた部屋。
夕霧に潜むは蛇口が噴射した水面、
全反射するごった煮の結晶。
絶望の深みに嵌る今宵も
聴いて欲しい言葉を探している。
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