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詩『苺(令和六年能登半島地震に寄す)』

画面の向こうが灰色に染まる
砂嵐 鹹い濤と罅割れた玻璃が突き刺さる。
地球は導火線のような半島に火を点けて
私達の心を碧く追い詰める。

画面の前で私はひと粒の苺を齧る。
混じり気ない最高純度の甘酸っぱさ。

何で不味くないんだよ。

赫く燃える果実の表面、
夜空に充満する黒煙と阿鼻叫喚。
同情する権利も持たない私に対し
この不条理は苦々しく突き刺さる。

淡く揺らぐ青春の哀しみが
血塗れの下着に映っている。

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〈虎井春より〉
 震災のことを詩にするのは不謹慎であるという意見がある中で、
 どうしても私達が言葉にしたかった想いです。
 自然を前にやるせなさを感じていた元日の自分は、
 詩を書くことで何かを伝えたいと思うようになりました。
 察するに察しきれぬ被災者の皆様の心中を代弁するのではなく
 自分の正直な思いを綴りました。
 非難されても構いません。
 何よりも被災地の復興と、皆様の心の安らぎをお祈りします。

〈蜂芳弌より〉
 この詩は私の実体験を元に書いた詩です。
 画面の向こうで起きている災害に対し何もできない無力感と
 住んでいた場所が違うだけで無事に過ごせている私、
 そして失われた命を身勝手にも比べてしまう自分の愚かさを
 言葉にしたいと思いました。
 怒りも哀しみも遣る瀬無さも大事な自分の一部です。
 目を背けたくなるような悲劇を前に
 私達ができる最善の行為が「詩を書く」ことでした。
 どうか世界にひと時の平穏が訪れますように。
 

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