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詩『初恋』

扇風機の回転が貴方の愚痴を輪切りにして 異性間通信ごっこの始まり、
皺くちゃの七曜表をあと六回捲れば 桃色の雪が街を踊る。
淡く みどり色した市松模様の田畑に垂れ込む送電塔の夕影、
濛々と煙を吐く機関車を追い掛けるは 朝顔の蔓をぶら下げた自転車。

湯煎で溶けていく初恋の味、
誰にも届けないままで誤魔化して。

夏のジオラマ模型で迷子になる帰り道 二秒遅れで灯りだす街灯りの列、
名前も知らない植物の意匠が彫られた銀色の突き匙を愛でる。
柔く 水色をした水母姿の風鈴に流れ込む偏西風の忘れ物、
蕭々と雨を降らす鉄砧雲を追い掛けるは 稲妻を夢見る自動車。

帰りたくない場所を目指す毎日に
何故か初恋を何度も想い出す。

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