BGMで語るゲーム 第2回 「Right Behind You Baby」

どうも、深井業です。

BGMで語るシリーズ、第2回は曲と世界観、登場人物とのゆるかったりそうでなかったりする関係性について語ろうと思う。

人は過ちを繰り返す

今回紹介するのは、Fallout4より、レイ・スミスの「Right Behind You Baby」

Fallout4はベセスダソフトワーク開発のオープンワールドRPGで、核戦争により荒廃したアメリカを旅する物語である。
生きるのに必死な人々を助ける救世主になったり、あるいは暴力で世界を支配する世紀末覇者になったりなど、プレイヤーのやりたいこと、価値観を最大限尊重しており、できることはなんでもできる。まさにオープンワールドの金字塔と言っていい。

Falloutシリーズの伝統として、ラジオ局が存在し、ラジオでは実在する50年代60年代のロカビリを流している。インクスポッツボブ・クロスビーロイ・ブラウンナット・キング・コールなど時代を象徴するアーティストの名曲をバックに、荒廃したアメリカを歩き回れるのだ。

今回紹介する曲もそんな曲の一つだ。

ショーンを取り返す、必ずだ

主人公(以下111)は核戦争が起きる前の人間である。伴侶と、一歳になったばかりの息子ショーンと、家政夫ロボットのコズワースと幸せに暮らしていた。
しかし2076年の10月23日、アメリカが核の炎に包まれる。111の一家は核シェルター「Vault111」に避難し難を逃れるが、そこで冷凍睡眠ポッドに押し込まれ、200年間眠ったままになってしまう。しかもその間に、息子のショーンは何者かに誘拐され、ショーンと一緒にポッドにいた愛する人は何者かに殺害されてしまう。
冷凍睡眠から解放された111はショーンを誘拐し伴侶を殺した男がケロッグという人物であることを突き止め、彼を追うのである。

いつでも後ろにいるからな

Right Behind You Babyは、原曲のニュアンスとしてはオンナのケツを追いかける男の心情を綴ったものである。
しかし、この曲がFallout4で流れると、原曲のイメージはがらりと変わり、追う者と追われる者というニュアンスがより一層強くなる。

イメージしやすいものから言えば、復讐に燃える111が家族の仇であるケロッグを追う姿が連想できるだろう。東へ行こうが西へ行こうが、俺は私は許さない。地の果てまで行こうが必ず追い詰めて相応の報いを受けさせてやる。惚れたオンナを追う男から、復讐者の執念へと曲のイメージが大きく変わる。これを意図して曲を採用したのかはわからないが、もしそうであればすごいことである。

だが印象の変化はこんなものではない。もっとメタな視点からでも語ることはできる。
Falloutは核戦争後の世界の話だ。ケロッグにとっての111がそうであるように、この世界に生きるものにとっての背後からにじり来る脅威とは何か。そう、放射能の危機である。放射能を浴び過ぎれば死に至り、そうでなくても皮膚が焼け爛れ醜いグールになってしまう。もっと悪ければ、意識や理性などなく見かけたものを見境なく襲うフェラル・グールになってしまうかもしれない。
放射能以外にも脅威はたくさんある。突然変異により巨大化した虫や、恐ろしい野生動物、レイダー、知能を持ち人を喰らうスーパーミュータントなど世界は危険で満ちている。いつどこでそれらに襲われるのかわからない、この世界の脅威は決して場所を選ばないのだ。

これで終わりだと思ったか?後ろにいるのはゲームの中の存在だけではない。
Falloutに限らず、操作するキャラクターの後ろにいるのは何か。そう、プレイヤーが操作するカメラである。後ろからキャラクターを見ているのは、より神の視点に近いもの、すなわちプレイヤー自身である。
いつもお前を後ろで見守っている。何かあったら生き残れるようになんとかしてやる。追う者が追われる者のために粉骨砕身する。視点が違えば、これまでのイメージとはまた別の新しい解釈が生まれる。この、一つの考えにとらわれない多様な想像の余地が、Falloutというゲームを表しているのかもしれない。

終わりに

個人的にはFallout4にはもっと好みの曲があるのだが、語るというところまでくるとこの曲が一番いいのではないかと思い今回の記事を書いた。
ラジオに採用されている曲は華やかさや幸福なひと時を綴った曲が多く、それが荒廃し寂れてしまった世界のバックに流れることで、ありし日を懐かしむ心や寂寥感を味わえるのが特徴である。
だからこそ、一度断たれてしまった人との繋がりや絆をもう一度取り戻そうと走り回る111の姿が眩しく見えるのかもしれない。

いろいろそれっぽいことを言ったが、ラジオをかけて歩き回るだけでも楽しいゲームなので、興味がある方は是非プレイしてみて欲しい。コンシューマでもPCでもプレイできるし、Skyrimとセットになったお得なパックを売っているのでぜひ。

今回はこれでおしま

「将軍、また居住地が助けを求めている」

うるせえ!たまにはお前が行けプレストン!