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ご唱和ください我の名を!全人類にウルトラマンZをおすすめしたい

どうも、深井業です。

今日はおすすめの特撮について話していきたいと思う。


ウルトラマンZとは?

ウルトラマンZは、2020年放送のウルトラシリーズ作品の一つ。
地球防衛組織の対怪獣専門部隊「ストレイジ」に所属するナツカワ・ハルキと、ウルトラマンゼロの弟子を自称する新米ウルトラマンのウルトラマンゼットが、怪獣との戦いを通じて成長し、隠された陰謀に立ち向かうというストーリーだ。
メイン監督を田口清隆氏、メイン脚本とシリーズ構成を吹原幸太氏が務める。残念ながら吹原氏は本放送を待たずして旅立たれてしまったが、田口監督と二人三脚で作り上げたこの作品は非常に評価が高く、普段ウルトラマンを見ないという層からも「とても面白かった」という声を聞くことができた作品である。2020年のニコニコ、pixiv主催のネット流行語100にて、ウルトラマンZは第6位に入賞しており、反響の高さがうかがえる。

今回は4つの観点からウルトラマンZの面白さを語っていきたい。

①大迫力の特撮

ウルトラマンZに限らず、ウルトラシリーズはどの作品も特撮パートのクオリティが非常に高い。
ミニチュアの精度の高さはもちろんのこと、ミニチュアと人物の合成、戦闘シーンのカメラワークなど様々な部分に創意工夫が施されており、どの回も「これはどうやって撮ったんだ?」と驚くこと間違いない。ここは言葉では伝えきれない部分であるので、是非一度見ていただきたい。

また、監督によって得意とする演出が異なるため、毎回見どころが変わるのも特徴だ。例えば坂本浩一監督であれば足元から見上げた視点からの戦闘、辻本貴則監督であれば怪獣の登場演出など、監督それぞれがこだわりのカットを見せてくれる。監督にも注目してみるとより楽しめるはずだ。

今作ではゲネガークのような新規怪獣が出てくるほか、ネロンガやゴモラ、レッドキング、更にはバラバやM1号など、皆がよく知る怪獣やまさかのチョイスの怪獣も登場する。昔の撮影技術では表現しきれなかった映像表現や新しい魅力を見ることができる。個人的にはブルトンの回とバラバの回は脚本、特撮共に非常にクオリティが高いので是非見てほしい。

②魅力的な登場人物たち

真面目な熱血漢の主人公、ナツカワ・ハルキをはじめ、負けず嫌いなストレイジのエースパイロット、ナカシマ・ヨウコ、科学技術のエキスパートで怪獣好きのオオタ・ユカ、ストレイジの作戦指揮官で、どこかで見たことあるような男ヘビクラ・ショウタ、整備班班長のイナバ・コジロー、地球外の言語を話し暗躍するカブラギ・シンヤなど、登場人物は皆個性的でそれぞれが異なった魅力を持っている。登場人物や所属する組織についてはかなり細かい部分まで設定されており、映像にもしっかり反映されている。それぞれの人物の所作や愛称など、細かい部分で人となりや関係性が示唆されており、そういった部分を見てみるとより楽しめると思う。

また、関係性といえば、ハルキとゼットの掛け合いも面白い。ゼットは宇宙警備隊所属の新米ウルトラマンで、性格はハルキと同じく熱血漢なところがある。常に一心同体で、しかもお互いが似たような性格や境遇をしていることから、細かいこと考えるよりまず突っ走るところで波長が合ったり、一方で経験不足や価値観の相違から生じる悩みを共有したりなど、経験を分かち合い互いに成長するバディものとしても面白い。
ゼットといえば、珍妙な言葉遣いが特徴で、SNSなどでも話題となっている。ウルトラマンは喋らず、故に神秘的なイメージがあるかもしれないが、そういった点で見ればゼットは親しみやすいかもしれない。

③防衛チームの復活

本作には、2015年放送のウルトラマンX以来となる防衛チームが登場する。
ウルトラシリーズの玩具展開の一つに、防衛チームの武装やメカ、基地などがあるが、ソフビや変身アイテムを比較してそれらの売上はあまりよろしくない傾向にあるという。それが原因であるかはわからないが、ここ5〜6年はTVシリーズに怪獣と戦う防衛チームは出てこなかった。

しかし、ウルトラマンZではある革新的なアイデアを引っ提げて防衛チームが復活するのである。それが、「ロボット怪獣を搭乗型のロボットにし、防衛チームのメカとして扱う」というものである。そして、その一号機として取り上げられたのが、セブンガーだ。

これはプレミアムバンダイで買えるミニプラのセブンガー。

セブンガーはもともと「ウルトラマンレオ」に登場する怪獣の一体で、戦えないセブンの替わりに戦うウルトラマンたちの味方である。活動時間が1分だけというデメリットがあるかわりに、レオが苦戦する怪獣を一方的にボコボコにするという驚異的な強さを秘めている。
ゆるキャラか?ってくらい強そうに見えない外見と早送りしたビデオみたいなスピードで怪獣を一方的に攻撃するギャップが魅力のセブンガーだが、ウルトラ怪獣のなかではかなりマイナーな分類であり、これを防衛チームのメカ、それも記念すべき第一号にしようという制作スタッフのセンスは驚きである。
セブンガーの人気は凄まじく、第一回放送後すぐにソフビは売り切れ、放送終了まで買えないなんてこともあった。ソフビ以外にも、ミニプラやフィギュアーツ、ぬいぐるみなどセブンガーだけでもかなりのグッズが発売されている。

セブンガー以外にも、カプセル怪獣でおなじみウインダム、キングジョーを鹵獲改造したキングジョー・ストレイジカスタムなどが登場する。単なるやられ役ではなくしっかり戦果も上げるし、彼らの強さはいずれ物語の根幹にも関わることにもなる。その活躍に注目してほしい。

④縦軸を意識した脚本

本作はハルキとゼットの新米コンビの成長譚であると同時に、長年ウルトラシリーズで取り上げられてきた「怪獣という生命との向き合い方」「強大な力の取り扱い方」についても語られている。

前者については、今作は大抵の怪獣を「倒さなければならなくなってしまった敵」として怪獣を描いている。(もちろん、明確な悪意をもって地球に害を与えようとする怪獣や宇宙人もいる。)わかりやすく言うならば「人里に降りてきた熊」みたいなものである。罪はないが人間に被害が及ぶ以上どうしても駆除しなければならない。そういった生命と相対する上で、どのような心構え、覚悟で臨まなければならないのか。ハルキはどんな決断を下すのか。戦うための技術だけでなく、心も磨き、鍛え上げる。本作はそういった物語である。

そして後者については、ハルキだけでなく、ストレイジの面々が考え、行動していくことになる。
セブンガー、ウインダム、キングジョーに飽き足らず、更なる力を求める人類。そしてその陰で暗躍する謎の存在。対怪獣ロボットという高い技術力が仇となり、その結果もたらされてしまった悲劇。
物語終盤は、力や技術を制御しきれなかったものとそうなるように仕向けたもの、そして命懸けでそれを止めようとするものが全力でぶつかり合う怒涛の展開だ。最終5話はノンストップで見てほしい。

ウルトラマンZは、最終回の展開を先に考えそこから逆算して制作されたそうなので、一話完結で楽しむことができるだけでなく、連続ドラマとしても芯が通っており、非常に見やすくなっている。子ども向けの作品ではあるが、ドラマやSFが好きな層の人でも楽しめる作品となっている。

おわりに

ウルトラマンZは個人的にはここ5年間の中では最高傑作だと考えている。
お約束を踏襲しつつ、新しい表現や価値観を提供するこの作品を、是非一度は見ていただきたい。そして、2020年皆が熱狂した彼の名を、是非ご唱和してほしい。

ご唱和ください、彼の名を!ウルトラマンZ! 


7/23追記。星雲賞メディア部門受賞おめでとうございます。