のび太くんの奥さん
近所の小児科のセキネ先生は、見た目がのび太くんそっくり。中身はジャイアンだけど。
丸メガネの奥からジロッとこちらをにらんで「お母さん、あんたねぇ、お子さん病気にするつもり?」などとドスを効かせては、ここら一帯の新米ママを震え上がらせている。
ただ腕はとってもいい。近所に住む医療職の義姉はこのセキネ先生の大ファンで「あの患者に全く媚びないところがいいわぁ」なんて言っている。
セキネ先生のところの看護師さんは、ガタイのよい怖そうなおばさんと同年配の綺麗で優しそうなマダムという対照的な2人がいて(ほかにも数人いるけれど)、わが家ではジャイ子さんとしずかちゃんと呼んでいた。
予防注射を受けに来た子は、ジャイ子さんが担当になると泣かない。泣こうものなら、もっとオソロシイことになりそうと本能で察知しているのだ。
義姉はこのジャイ子さんのこともエラく尊敬している。
あるとき、ママ友が「セキネ先生の奥さんは看護婦さんで、ご夫婦で一緒に働いている」というから、義姉も私も確かめもせずに、てっきりしずかちゃんが奥さんだと思っていた。10年以上も。
週末、ちょっと離れたモールに買い物に行ったら娘が「あっ、セキネ先生とジャイ子さんだ」という。
お二人がカートを持って、食料品を選んでいた。どう見ても夫婦。のび太くんの妻はジャイ子さん?! 今年一番の驚きだった。
なぜ長い間、勘違いしていたのだろう。真実を知った今、これ以上お似合いのご夫婦もいない気がするのに。