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【清水昇】史上初!”未勝利でタイトル受賞”を考える【'20 最優秀中継ぎ】

異例続きの2020年、NPBのレギュラーシーズンが終わりました。我らが東京ヤクルトスワローズはヘッダーの画像の通り…に…ってあれ………?




さて、そんな東京ヤクルトスワローズさんにも明るい話題はいくつか。
そのうちの大きな1つは2年目 清水昇投手の最優秀中継ぎ受賞でしょう。

「昨年はふがいない成績だったので、今年はキャンプから何とか結果を残したいと必死で準備した。今年自分にとって一番のうれしいニュースとなりました」

この本人コメントにもあるように、ルーキーイヤーの去年は1軍

11試合(3先発) 0勝3敗 防御率7.27 
26イニング 33被安打(7被本塁打) 24奪三振 13四球 25失点(21自責点)
K/BB:1.85, K/9:8.31, WHIP:1.77

と大卒ドラ1としては確かに物足りない成績に終わりました。
(大卒もしくは社会人ルーキーが必ずしも1年目から即戦力でなければいけない風潮自体がどうかとは思いますが、いったんそれはそれとして。)


そして2年目の今年は、OP戦から結果を残して開幕1軍を掴み取り、

52試合(0先発) 0勝4敗30ホールド 防御率3.54 
53イニング 45被安打(10被本塁打) 58奪三振 18四死球 23失点(21自責点)
K/BB:3.63, K/9:9.79, WHIP:1.14

上記成績により30HPで最優秀中継ぎのタイトルをゲットしました!
(そしてこの節はドラゴンズ与田監督、誠にありがとうございました…)


さて、そのタイトル獲得の中で少し話題に挙がったのが
史上初”未勝利でのタイトル獲得”でした。

本noteではなぜこのような史上初の出来事が起きたのか、私なりに考察していこうと思います。


そもそもホールドとは?


最優秀中継ぎ賞はホールドポイント(以下HP)が最も多かった選手に与えられる賞であり、その指標となるHPは以下の通り計算されます。
HP=【中継ぎ登板時の)勝利数】+【ホールド数】

勝利投手の条件はともかく、ホールドの条件はイマイチ知らないなという人も多いのではないでしょうか。
ということで確認していきましょう、まずは前提条件から。
(出典:Wikipedia「ホールド」より一部改変)

<前提条件(①~④の全てを満たす必要あり)>
①先発投手、勝利投手、敗戦投手のいずれでもなく、セーブ(一部後述)も記録されていないこと
②自チームの最後の守備イニングの3アウト目を取った投手ではないこと
③アウトを1個以上取ること
④降板した後、自身に記録された失点によって自チームが同点に追いつかれる、または逆転されていないこと

上記条件を満たした状態で、以下の1. もしくは 2.のいずれかを満たした投手にホールドが記録されます。

1. 自チームがリードしている状況で登板し、(1)~(3)いずれかの条件を満たしてリードを保ったまま降板する(※下記(1)~(3)はセーブの条件と同様)
 (1)3点以内リードの場面で登板し、1イニング以上投球する
 (2)迎える2打者に連続本塁打を打たれたら同点または逆転される場面で登板する
 (3)点差に関わりなくリードした状況で登板し、3イニング以上投球する

2. 同点の状況で登板し、以下のいずれかの条件を満たして降板する
 (1)同点のまま失点を許さずに降板する
 (2)登板中に自チームが勝ち越した場合、リードを保って降板する

…いや長いわ!!!!!


ということでホールド獲得の条件を超簡単に訳すと
1.僅差勝利時:リードしている状態を守って後続に繋げる
2.同 点 時:勝ち越されず後続に繋げる

のどちらかが出来ればホールド獲得、となります。(ざっくり)


ちなみに今回は中日ドラゴンズ・祖父江大輔投手、同じく中日ドラゴンズ・福敬登投手も30HPで同時受賞となっておりますが、3人のHP内訳はこちら。

D祖父江:2勝+28ホールド=30ホールドポイント
D 福 :5勝+25ホールド=30ホールドポイント
S清 水:0勝+30ホールド=30ホールドポイント

と、史上初の快挙(?)なので当然ではありますが、0勝で受賞したのは清水投手ただ1人です。


清水昇 '20シーズンを振り返って


さて、ホールドとやらが何者なのかはとりあえず理解できたところで、
今年の清水投手について超簡単に振り返ります。

昨年は2軍でも主に先発として起用されていました(17登板中15先発)が、
対照的に今年はオープン戦(4試合,6.2イニング)全てで中継ぎ登板、防御率2.84と一定の成績を残してアピールに成功しました。
(※少ないサンプルではありますが、四球0,K/9:9.95,WHIP:0.79と防御率以上に打者を圧倒していることも伺え、確かに躍進を予期させる成績でした)


開幕1軍入りを果たすと6/19の開幕戦で早速リリーフ登板し、先発・石川投手の火消しとして1/3イニングを無失点に抑えてプロ初ホールドを記録。

様々な事情が重なり、翌日の6/20から勝ちパターンを多く任せられるようになると、開幕から11試合連続無失点を続けるなど、一躍ヤクルトリリーフ陣の中心になくてはならない存在となりました。

その後、疲れや相手からの研究により、8月以降の月間成績は防御率4点台が続くなど成績を落としてしまったものの、勝ちパターンという立ち位置は最後まで守ったまま見事シーズンを完走しました。


何故未勝利でタイトルが?


実質的にはここからが本題。

毎年最多勝を獲得するのが(年間登板”数”が圧倒的に少ない)先発投手であることからも分かる通り、「勝ち投手」は先発投手に付くことが多いです。
(その条件はこちら

そんな中で、リリーフ投手が「勝ち投手」になるのは僅差ビハインドもしくは同点の場面で登板し、その直後にチームが勝ち越すことにより権利が舞い込んでくるパターンが殆どです。
実際に2020年のヤクルトにおいて、リリーフでプロ初勝利を挙げた長谷川宙輝・寺島成輝両投手はこのパターンに当てはまっております。

長谷川宙輝:6/25(木)1点ビハインドの9回表に登板して無失点に抑えると、9回裏に西浦直亨のサヨナラ3ランが飛び出して勝ち投手に。
寺島成輝:7/7(火)同点の9回裏に登板して無失点に抑えると、10回表にチームが1点を勝ち越して勝ち投手に。

このようにリリーフ投手でも(経験の浅い若手が担当することが多い)ビハインド展開で投げる投手には、打線の援護次第で勝ち投手になるチャンスが回って来ることがそれなりにあります。


一方で勝ちパターンの投手について。
勝ち投手の権利という観点で考えると「既に勝っている状況で投げ、勝ちの状況を守って後続に繋げた投手」にその権利が舞い込むことは原則ないため(※若干面倒な例外はありますが)
勝ちパターン”だけ”で投げている限り、リリーフで勝ち投手になることはなかなか起こらないといえるでしょう。

また、清水投手の場合は先述の通り、開幕2試合目から終盤僅差の勝利時(7回 or 8回)に登板する「勝ちパターン」を任せられるようになりました。

清水投手もプロとしての経験はまだ浅い訳ですが、主に1年間ビハインド展開の登板で経験を積んだ前述の2名とは違い、(チーム状況もありましたが)言うなれば一段飛ばしで勝ちパターンへと駆け上がっていきました。

また、今シーズンは投手コーチ並びに高津監督の比較的効率的なリリーフ運用もあり、例年以上に「勝ちパターン」清水投手が、本来の役割以外で登板することは少なかったように思います。
 ※この辺りのデータがどこかにあったら教えてください


つまり、今回の清水投手の”未勝利でタイトル受賞”という快挙は、多くの若手リリーフ投手が通常積むであろう「ビハインド展開での登板」というステップを飛ばした短期間での大躍進があったことによると言えるでしょう。

当然ではありますが「同点時の登板で無失点に抑えてその後勝ち越す」もしくは「清水投手の失点により同点or逆転されるもその直後に再度勝ち越す」という展開でも清水投手に勝ち投手の権利が発生しますが、
今年のヤクルト打線ではそのような事態は一切起こらなかったという、余りにも悲しい事実についても忘れずに記載しておきますね…。


最後に


今年の清水投手の躍進についても触れながら、史上初の”未勝利でタイトル獲得"について考えてきました。

去年はプロの厚い壁に跳ね返された形となった清水投手。投手である以上、プロでの初勝利は1つの目標としていたはず。
そんな中で、今年も勝ち星は付かなかったものの、それを遙かに飛び越え、プロ野球選手としての最高の栄誉ともいえるタイトルを獲得しました。

 今シーズン、寺島成輝、長谷川宙輝、ルーキーの吉田大喜がプロ初勝利を飾ったが、清水はまだ手にしていない。去年は「どんなかたちでも1勝したかった」と語っていたが、今はどんな心境なのだろうか。

「気持ちとして、1勝したいのはあります。でも、やっぱり自分に勝ちがつくということは、点を取られることですから。自分の勝ちよりも0点に抑えること、もしくは点差を縮められないことを意識したいと思います。大事な場面で投げさせてもらえることに感謝して、これからも投げていきたいです」


これは個人的な感想になりますが、どんな形であれ、タイトルを取ることができて本当に良かったなというのが今の率直な私の想いです。
長いプロ野球の歴史にタイトルの獲得で名を刻むチャンスは限られた選手・限られたタイミングでしかありませんし、そもそもタイトルが取れなければこの快挙自体が起こってすらなかったわけですからね。

何より、昨年あれだけ苦しんだドラ1投手が、自らの力で地位を勝ち取り、気迫を前面に出した投球でチームを支えているという事実。そんな姿が私の心に突き刺さり続けた1年間でした。タイトル争いも含めて、彼のおかげで私は今年のスワローズを見ていられたような気さえしています。

(そして、HPはチーム状況に大きく左右される成績のため、まさか最下位チームから最優秀中継ぎが誕生するとは思ってなかったですが。笑)



さて、早くも来年に話を少しだけ移すと、同じくヤクルトブルペンを支えた石山泰稚投手、マクガフ投手とどちらも複数年契約を結びました。


このような事情や今後の補強との兼ね合い、清水投手は元々は先発志望だった(?)こともあり、来年以降の役割がどうなるかは現状不明ですが、
それがなんであれ今年の獅子奮迅の活躍が素晴らしい財産となってくることでしょう。
(個人的には来年も勝ちパターンであの気迫溢れる投球が見たいです!)

また、長谷川投手・寺島投手のように、ビハインド展開が中心ながらもたくさんの経験を積んだ若手投手も多くいるため、彼らについても来年以降の更なる活躍に繋がってくれることを心から期待しております。


ということで、最後に清水昇投手に関する”推せる”人柄が現れた記事を2つ貼って、本noteを終了したいと思います。


来年こそは #清水昇初勝利チャレンジ が成功することを願って!



P.S. 今更ですがセーブ王でもこの"快挙"の達成可能性は有り得ますね。
   ことクローザーでこのような例が起こりえるかはとても疑問ですが…


参考:各種データ出典
東京ヤクルトスワローズ公式
Baseball LAB
Sportsnavi
nf3 -Baseball Date House -

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