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鉄筋工事

前回までで、地盤が固まりました。
いよいよ躯体工事に入ります。
今回は「 鉄筋工事」です。
ほんとは、墨出し大工さんの方が先に乗り込んで位置を出すのですが、都合上位置は出てる前提で進めます(^^)

「鉄筋工事」は覚えなければならない数字がたくさんありますが、なるべくストレスの無いように説明していきたいと思います。

【鉄筋の種類とマーク】

「鉄筋」と一言でいっても材料や加工の仕方で、引張強度などの性能が異なります。
使用する部位や、要求される性能(品質)によって経済性も考慮しながら選択するわけです。
基本的に数字が大きい方が性能が良いです。

鉄筋は、まず製作工場で原料から作られます。
次に鉄筋を加工する工場に納品されて、工事現場の鉄筋屋さんからの指示(加工帳)に従って加工(切断したり、曲げたり)されます。

現場に搬入される時には【SD295 4.0m 50本】といった形で同じ種類ごとにくくられてきます。
そのくくられたまとまりに「メタルタグ」という値札みたいな金属の板がくくりつけられていて、鉄筋の種類が見分けられます。
それから「ミルシート」と呼ばれる納品書みたいなやつもセットで納品されます。
「ミルシート」は、鉄筋のトレーサビリティ(どこで製作して、どこの工場で加工したなど)を確認することが出来ます。

現場では納品された鉄筋をあっちこっちに取り付けていくので「メタルタグ」や「ミルシート」と見比べようと思っても無理です。

そこで、鉄筋1本1本に「マーク(刻印)」がついています。
このマークを【圧延マーク(ロールマーク)】と言います。
SD295:無し
SD345:【・】 (突起1つ)
SD390:【・・】(突起2つ)
とりあえず上記だけ覚えましょう。

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(↑ 鉄筋ロールマーク 撮影:俺 SD345 D25)

【鉄筋径(鉄筋の太さ)】

鉄筋コンクリート造を扱う建築現場で働いていると、だんだん覚えてしまうんですが、馴染みが無いと「次に太い直径は何mmだっけ?」となってしまうかと思います。

試験対策としては、
最も細いのが【D10】(直径10mmと思ってOK)と覚えましょう。
次が【D13】⇒【D16】と太くなっていきますが、『3mmずつ』太くなると覚えておけば良いです。
実際は【D25】⇒【D29】と4mmの時もありますが、試験では『鉄筋径の違いが1段階なのか、2段階なのか』が見分けられたら良いので、深く考えなくて大丈夫です。

【部位の名称】

・「主筋」
部材の軸方向に配置する鉄筋です。
鉄筋は【引張り命】なので、最も太い鉄筋を使います。
現場では、どうしても鉄筋どうしを繋ぐ『継手』を設けないといけません。
この『継手』は構造的に重要なので、試験にもよく出題されます。

・「帯筋(おびきん、フープ)」
「せん断補強筋」といって、柱の主筋と直交して配置します。
主筋がコンクリートをぶち破って、致命的な破壊をしないように主筋を拘束する役割をします。

・「あばら筋(スターラップ)」
梁の主筋を拘束します。
柱における帯筋と同じ役割で、やはりせん断補強筋です。

・「中子筋(なかごきん)」
帯筋やあばら筋の補強として+αで入れる鉄筋です。

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(↑ 中子筋 出典:建築学生が学ぶ構造力学)

・「壁筋、スラブ筋」
上記は「柱・梁」について書いていますが、「壁筋」や「スラブ筋」の場合は「主筋」「配力筋」と言います。
「主筋」と言うだけあって、こちらが主に荷重を負担します。
スラブについては、短辺方向が「主筋方向」になります。
片持ちスラブ(キャンチスラブ)は根元から先端に向かう方向が「主筋方向」です。
先っぽが落ちない(垂れ下がらない)ようにするんだから当然ですね。
片持ちスラブの主筋は、特に上端筋(うわばきん)が重要です。
下端筋(したばきん)に比べて径も大きく、配筋ピッチも細かくなります。

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(↑ 片持ちスラブ:主筋方向はD13、配力筋方向はD10です。上端筋の先端は90度フックで余長は4d以上(4×13=52mm)です。)

【フック形状】

フック無し、90度、135度、180度の4種類があります。
鉄筋は引っ張りに対抗するので、当然180度フックが一番威力があります。
が、加工性や施工性が優れているのは、なんと言っても「フック無し」
どれを採用するのかは、設計図書や仕様書の指定、現場での納まりを考慮して決定します。

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(↑ 鉄筋のフック 出典:建築学生が学ぶ構造力学)
180度 ⇒ 135度 ⇒ 90度と余長が長くなる
4d ⇒ 6d ⇒ 8d (ヨー・ロッ・パ)

【定着長さ】

これは『梁主筋の柱への定着』のように、部材どうしを繋ぐ役割を果たす鉄筋の長さです。
下の表で覚えておきたいのは

コンクリート強度:24~27 N/mm2
SD345:35d(L2)

ですね。
これを基準に過去問を解いて見てください。

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(定着長さ 出典:建築学生が学ぶ構造力学)

私も苦手でしたが、過去問で問われてる内容は最低限覚えるようにしましょう。
あと、梁主筋の柱への定着は『投影定着長さを柱せいの3/4以上』も過去問で出題されているので覚えておきましょう。

【継手長さ】

これは、鉄筋どうしを繋ぐ時の重なり長さのようなものです。
下の表でも上記と比較する形で覚えましょう。

コンクリート強度:24~27 N/mm2
SD345:40d(L1)

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(↑ 継手長さ 出典:建築学生が学ぶ構造力学)
(鉄筋の種類でSD295A,SD295Bとありますが、今はSD295に統一されました)

過去問で確認してみましょう。

(11092)【コンクリートの設計基準強度が24N/mm2の場合,SD345の鉄筋の重ね継手をフックなしとし,長さは呼び名に用いた数値の30倍とした・・X】
・・正解は40dです。

(20082)【設計図書に特記がない場合,耐力壁(コンクリートの設計基準強度が27N/mm2)の脚部におけるSD295Aの鉄筋の重ね継手については,フックなしとし,その重ね継手の長さを30d(dは異形鉄筋の呼び名に用いた数値)とした・・X】
・・正解は35dです。

基準となる【40d】だけ覚えたら、あとは5dずつ増減して判断しましょう。
(深入りは禁物、悩まない悩まない・・)

【継手の種類】

鉄筋の継手で最も簡単なのは『重ね継手』ですが、やはり物理的に一体化していないので信用出来ませんよね。
そこで、D19以上はの太い鉄筋は、重ね継手は認められていません。

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(↑ 継手の種類 出典:建築学生が学ぶ構造力学)

代表的な継手は
『機械式継手』と
『圧接継手』
です。
試験でよく出題されるのは『圧接継手』ですね。

【圧接継手】

圧接継手について、試験で問われるポイントは以下の通り。

1) その2本、ホントに圧接で繋いで良いの?
2) 圧接継手の位置、そこで大丈夫?
3) 検査は全部するんだっけ?
4) どうなってたら合格?

順に解説していきます。

1) 圧接の基準について
太さと材質が違うものを一体化したらダメでしょって普通に思いますよね。
でも、鉄筋の場合はちょっと違うだけなら、圧接しても良いんです。
『ちょっと』って?
簡単に言えば『1段階』です。

鉄筋の太さは5mmを越える差は【不可】
鉄筋径は3mmずつ(一部4mm)太くなるので、2段階の差があると圧接できません。

鉄筋の種類も2段階違うと圧接不可。
SD295 ⇒ SD345 ⇒ SD390
だけは覚えておきましょう。

2) 継手位置について
圧接するのは、主に柱と梁の主筋です。

柱主筋の圧接位置は、床から500mm~1,500mm辺りです。
目線よりちょっと低めくらいと思っておけば良いでしょう。

梁主筋の継手は、上下で異なります。
下図を覚えておきましょう。

『大ばりにおける下端筋の継手中心位置は,「そのはり端からはりの中央部へ向ってはりせいと同じ距離の位置」から「はり内法長さの1/4以内」の範囲とした。』の意味が下図の通りです。

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また、隣り合う圧接継手は『400mm』ずらすことも覚えておきます。

3) 検査の頻度について
3つ覚えましょう。
○外観検査・・全数検査
○引張り試験・・3本(1班(1ロット)から抜取り)
○超音波探傷試験・・30本(1班(1ロット)から抜取り)

4) 検査基準について
「検査項目」と「合格基準」は以下の通り。
1)ふくらみの「直径」・・1.4D 以上
2)ふくらみの「長さ」・・1.1D 以上
3)「偏心」・・1/4D 以下
4)圧接面の「ずれ」・・1/5D 以下
5)「折れ曲がり」・・2度 以下
上記のうち、「直径」「長さ」「折れ曲がり」の3つについては、不合格となっても、そのまま再加熱して是正してもOKです。
「偏心」と「ずれ」は切り取って完全にやり直しです。

合格基準の数字はどっちがどっちか分からなくなりませんか?
そんな時はまず
【1.1】と【1.4】
【1/4】と【1/5】
という風にセットで覚えます。
その後
ふくらみの方がゴツいから【1.4D】
芯がずれるのは良くなさそうだから厳しい方で【1/5D】
みたいに、自分なりの理屈でもいいので覚えてしまいます。

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(↑ ガス圧接部分の外観検査 出典:インシステム)

【あき・かぶり】

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