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【地業工事】

今回は土の中シリーズのラスト「 地業工事」についてお話します。

概要

「地業」とは、基礎を支える地盤を造ることです。

地盤調査の結果、支持できる強度があれば地面に割栗石(ゴロゴロした石ころ)を敷き詰めて締め固めることもありますし、「杭工事」「地盤改良」も含まれます。

一級建築士の試験では「杭工事」の占める割合が圧倒的なので今回の話も「杭工事」中心になります。

杭工事について

過去問を解いていて、混乱したり意味不明に陥ってしまう方は、まずは大雑把にイメージをつかむと良いでしょう。

イメージというのは「杭の種別」と「杭の打設工法」です。

杭の種別

ではまず「杭の種別」ですが、大きく分けて2種類です。
「場所打ち杭」と「既成杭」

「場所打ち杭」とは・・
「場所」と言うのは「現場(建設地)」と思って下さい。現場でコンクリートを打設して杭を構築するから「場所打ち杭」と言います。
現場で造るので、直径2mとかのバカでかい杭も50mの深い杭も可能です。
ちなみに、コンクリートだけの杭では引張り力や曲げに弱いので、鉄筋も入れます。

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(場所打ち杭 出典:生コンポータル)

「既製杭」とは・・
「既製」つまり出来合いのものという意味です。
工場で杭の形に造り上げたものを、トレーラーとかに積み込んで現場に運び込みます。
出来合いの杭を打ち込んでいくので工期の短縮を図れますが、運搬による制限があるため長さや杭の直径は限られます。

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(既製杭(PHC杭) 出典:東洋ベース株式会社)

杭の打設工法

次に「打設工法」について。
こちらも大きく分けて2種類で、
「打込み工法」と「プレボーリング工法」です。

「打込み工法」とは・・
杭を地面におっ立てて、杭の頭をハンマーで叩いて地面に打ち込んでいく工法です。
ちょっと横道にそれますが・・
直接杭を打込むのを見たことがある人は少ないでしょうね。
昔は、やってたみたいですが騒音がすごいので、今ではほとんどがプレボーリングでしょう。
管理人はインドネシアの工業団地で現場監督をやったことがあります。
その時、既製杭を打込み工法で建て込むのを見たことがあります。
重りを持ち上げて杭の頭に落として打込んでいくんですが、支持地盤に到達したかどうかをどうやって確認すると思いますか?
叩いてる杭に紙をあてて、そこに鉛筆をはわせます。
杭頭を叩くと杭が沈みますが、その沈み方を鉛筆の動きで見て、沈み方が小さくなってきたらOK!
ほんまかい!?と思うでしょうが、そんなもんでした。
立ち会った時は機械油まみれになりました。
余談でした(^^;;

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(↑打撃杭工法 出典:日本コンクリート工業)

「プレボーリング工法」とは・・
「プレ」というのは「先に」という意味です。
先に穴を掘っておくということです。
ドリルで穴を掘って、その穴に既製杭を埋め込んだり、鉄筋を入れてコンクリートを打設(場所打ち杭)したりします。

「プレボーリング」の中にもいろんな工法があります。
覚えておきたいのは「オールケーシング工法」でしょうか。
杭の全長にわたって「ケーシング」と呼ばれる鉄管を挿入し、その中で杭を構築します。
どんな地盤でも施工可能ですが、手間とお金がメチャかかります。
ですから、地表面から数mだけに「ケーシング」をセットして崩壊を防ぐ「表層ケーシング」を採用することが多いです。

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(↑表層ケーシング 出典:朝日建設)

それから「拡大根固め工法」なんて名前も聞いたことがあるかと思います。
杭の先端部分の孔を拡大して、杭の支持力や引き抜きに対する強度を上げる工法です。
「杭の先端だけ拡げるなんてどうやるん?」って思いますよね。
要は孔壁を削ります。
孔を掘る時にドリルの先端につけるやつを「オーガーヘッド」って言います。
(工法によっては「ドリリングバケット」を取り付けます)
この「オーガーヘッド」に可動式の羽根を取り付けておいて、オーガーを逆回転すると開くようにしておきます。
こうすることで「拡大」された球根みたいなのができるわけです。
(上の図の右側のようなイメージです)

杭の打設手順

では「場所打ち杭工法」の施工の流れについて簡単に説明します。

【杭芯出し】
杭を打設する位置を測量して「杭芯棒(くいしんぼう)」という目印を挿します。誰かさんみたいでしょ(^^)
  ↓
【杭打機搬入・組立】
でっかい低床トレーラーで運んできます。

だいたい通行許可が必要です。

どこに提出するのか覚えてますか?警察?いやいや、道路管理者ですね(^^)
  ↓
【鉄筋・プラント・セメント等搬入】
鉄筋が長すぎてトラックの荷台に納まらない時は、どこに届出するんでしたっけ?こっちが警察でしたね。
  ↓
【鉄筋カゴ組立】
組立てヤードを確保して、先行して組み立てます。
  ↓
【掘削】
杭を建て込むための孔を掘ります。
  ↓
【孔内測定等】
ちゃんと孔が掘れているのか「超音波」で検査します。
  ↓
【一次スライム処理】
孔の中の余分な土やゴミを取り除きます。
まだ鉄筋を建て込んでないので、バケットで大まかな物をつかんで引き上げます。
  ↓
【鉄筋カゴ建て込み】
上下を間違えないように建て込みます。
上の方が「重要」ですので、掘削深さが変更になった時の調整は下部のカゴで調整します。
  ↓
【二次スライム処理】
鉄筋カゴを建て込む時に穴の壁を削ってしまうなどして沈殿した余分なゴミや泥を水中ポンプで吸い上げます。
鉄筋カゴを建て込んだ状態なので、バケットでの処理は出来ません。
  ↓
【コンクリート打設】
これで鉄筋コンクリート杭となります。
トレミー管は、コンクリート天端よりも何m突っ込んでおくべきでしょうか?
・・2m以上ですね。覚えておきましょう。
  ↓
【養生・埋め戻し】
杭頭の初期硬化を待って、埋め戻します。
そのまま放っておくと、新人が杭孔にはまります(管理人の同僚がはまりました)。笑い事で済まないことになるので、皆さんは真似しないように。
  ↓
(掘削して杭頭が出てきます)
  ↓
【杭頭処理】
品質確保のために「余盛(よもり)」をしてあるので、所定の高さになるように杭頭をハツります。(「余掘り(よぼり)」とゴッチャにしないように)
杭頭処理(ハツリ)はコンクリート打設後14日間経過が必要です。これも覚えておきましょう。
  ↓
(基礎工事に続きます)

過去問解説・注意事項

それでは、それぞれの工程の注意事項などを過去問も見ながら説明します。

【杭芯出し】
(27072)【既製コンクリート杭の打込みにおいて,一群の杭の打込みは群の外側から中心へ向かって打ち進められていることを確認した・・X】
・・杭芯というよりも「打設順序」ですが、掘削で土を搬出するといっても、やはり周囲を圧迫するので、外側の杭を先に構築すると、内側の杭の施工が難しくなりがちです。
ですから、何本かの杭が固まってる時は内から外へ、という順序にしましょう。

【鉄筋カゴ組立】
 1)鉄筋のかぶりは?・・100mm(フラットバーを加工したスペーサーを主筋に溶接固定します)
 2)帯筋(主筋の周りを拘束する丸いやつ)は溶接してもいい?・・片面10dの溶接です
 3)補強リングは主筋に溶接してもいい?・・帯筋と主筋は溶接したらダメなんですが、これだけだと、クレーンで吊り上げて建込む時にバラバラになったり、変形しちゃいます。
そこで「補強リング」って言うフラットバーを杭の形に丸く加工したものを主筋に溶接します。
ここを吊り上げれば大丈夫。
 4)主筋の継ぎ手は溶接してもいい?・・ダメです。主筋の継ぎ手は重ね継ぎ手(45d程度)です。

【掘削】
(23073)【予定の堀削深度になっても支持地盤が確認できない場合は,土質調査資料との照合を行いながら堀削を続けて支持地盤を確認し,杭を施工した後に監理者に報告する・・X】
・・地盤調査の通りに支持層が確認できないことはざらにあります。こういう時は勝手に決めないで、事前にちゃんと監理者に相談します。

【スライム処理】
(26221)【アースドリル工法による場所打ちコンクリート杭工事において,コンクリート打込み直前に行う二次スライム処理については,底ざらいバケットにより行った・・X】
・・一次処理は沈殿待ちをした後は,底ざらいバケットにて処理します。
二次処理(コンクリート打ち込みの直前に行うスライム処理)は,鉄筋カゴが入った状態なので底ざらいバケットは使用できません。水中ポンプなどで除去します。

【コンクリート打設】
(26073)【場所打ちコンクリート杭工事において,安定液に打ち込む杭に使用するコンクリートの単位セメント量については,310㎏/m3とした・・X】
・・正解は330kg/m3です。過去2回出題されてますので、覚えちゃいましょう。(これも1点のため)

(21073)【場所打ちコンクリート杭工事において,コンクリートの打込み開始時には,プランジャーをトレミー管に配置し,打込み中には,トレミー管の先端がコンクリート中に2m以上入っているように保持した・・〇】
・・この問題には2つ大事なポイントがあります。
1つ目は「トレミー管」
杭孔は深いし「安定液」で満たされているので、上からコンクリートを流し込むだけでは、「安定液」と混ざってシャバシャバになっちゃいます。
そうならないために「トレミー管」と呼ばれる配管をつないでつないで、杭孔の底からコンクリートと「安定液」を「置換」するんです。
初っぱなは「トレミー管」の先っぽを目いっぱい底に近づけておいて徐々に引き上げていきます。
そうすれば、下はコンクリート、その上に「安定液」っていう断面になりますね。
ここで「トレミー管」を上げすぎると、コンクリートと「安定液」が混ざっちゃいます。
それを防止するために「2m以上」コンクリートに突っ込んどきなさいってことです。
2つ目は「プランジャー」
たいそうな名前ですが、ラーメンマンがかぶるようなただのゴムです。
掘削した孔の中に「トレミー管」を突っ込む時には、先っぽにふたをしてないんです。
だから、そのままコンクリートを流し込むと「安定液」と混ざっちゃいます。
そうならないように「プランジャー」をセットして、コンクリートで押し込んでやるんです。
押し込まれた「プランジャー」は、安定液の中をゆらめいて「ぷか~」っと浮かんできます。
上から覗いて、鉤棒みたいなやつで救出して水で洗って、次に備えます。

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(↑プランジャー、トレミー管 出典:井澤式 建築士試験 比較暗記法)

(25073)【場所打ちコンクリート杭工事において,コンクリートの打込みに際し,杭頭部に余盛りを行い,コンクリートが硬化した後,余盛り部分を斫り取った・・〇】
・・「トレミー管」や「プランジャー」がいくらがんばっても、やはり「安定液」との境目部分には多少のスライムやレイタンスと呼ばれる不純物が混じります。
これを見越して杭頭を正規の高さよりも上げておいて(余盛りといいます)、不良部分をハツり飛ばします。
「オールケーシング」の時は孔壁の精度が高いので「500mm」程度
それ以外の場合は「1,000mm」程度とします。

ところで、杭のコンクリート打設中、天端がどこまで上がってきてるのかをどうやって知ると思いますか?
実は、おもりを垂らすんです。
「安定液」とコンクリートの違いを職人さんが指先で感じるのです。

既製杭について

ちょっと長くなっちゃってますが、少しだけ「既製杭」の過去問を見てみましょう。

(28031)【既製コンクリート杭の積込み及び荷降しについては,杭に生じる曲げモーメントを最小とするため,杭の両端から杭の長さの1/3の位置付近に2点で支持し,杭に衝撃を与えないように仮置きさせた・・X】
・・正解は1/5です。モーメント図を書ければ最高ですが、無理でも数字を覚えちゃいましょう。

(15081)【セメントミルク工法による既製コンクリート杭工事において,特記がなかったので,アースオーガーの支持地盤への掘削深さについては1.5m程度とし,杭の支持地盤への根入れ深さについては1m以上とした・・〇】
・・ここで重要なのは「根入れ」寸法で、1m以上を確保するために、余計に掘ってるんだって理解してください。

(28073)【セメントミルク工法において,掘削時にはアースオーガーの芯を杭芯に鉛直に合わせ正回転させ,引上げ時にはアースオーガーを逆回転させた・・X】
・・オーガーは正回転しかさせません。(上の方で説明した「拡底杭」の時だけはしますけど)
オーガーって、で~っかいビスみたいなもので、ネジ山の親分に土が乗って上がってきます。
それを職人さんが一所懸命スコップで掻き落とします。

セメントミルク工法とは

ここで【セメントミルク工法】って何やねん!?という声にお答えします。
セメントミルク工法は、プレボーリング工法の小分類と思って下さい。
ドリルで穴を掘るとき、何にも対策しなければ穴は崩壊する可能性が高いですね。
そこで、セメントミルク(セメントを水に溶かしたミルクのように白い液体)を穴の中に流し込みます。
セメントミルクは、セメントを溶かし込んであるので、水よりも比重が重いです。
比重が重いので、地下水の圧力に負けずに穴の形を守ることが出来ます。

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