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型枠工事

型枠は、鉄筋コンクリート造の建物で外観を決定付けるものです
鉄筋と違って、生物であるコンクリートを型に流し込んで形作るためのものなんで、コンクリートに接するせき板の材質や、型を保持するための鋼管支保工(つっかえ棒)の強度、コンクリートが固まるまでの養生(ようじょう)期間など、いろいろな規定がありますね

では順に見ていきましょう

組立手順

まずは全体を把握するために、組立手順から・・
簡単な流れは以下の通りです

墨出し → 柱・壁型枠 → 大梁型枠 → 小梁型枠 → スラブ型枠

(鉄筋、設備は省略してます)

墨出し・柱型枠

この写真は、柱の配筋が終わって、さあ型枠組むぞ~って段階のものです
鉄筋の外側にある黒い線が『墨出し』で付けた柱の位置です
オレンジ色のベニヤ板が置いてありますが、これは、柱型枠の足元のレベル調整のためのもので敷桟(シキザン)と言います
コンクリートの表面は完全に水平ではありません
でも、その上に建てる型枠は垂直じゃないといけませんよね?
柱の型枠だけでなく梁や壁の型枠も『加工図』に従って、大工さんの工場で加工してから現場に搬入します
加工された型枠は、水平・垂直にバチッと作ってあるんで、建て込むときのコンクリート面をシキザンで調整すれば、バッチリって訳です

大梁・小梁型枠

柱型枠が出来たら、大梁を架けて柱の頭どうしを繋ぎます
上の写真は、柱と柱を大梁で繋いだところです

柱と柱に繋がってるのが『大梁
梁と梁に繋がってるのが『小梁
片っぽうの端っこしか支持されてないのが『片持ち梁
ここら辺の名前は覚えてますかね?

下の写真は大梁を架けてるところですが、よく見ると大梁の途中に四角く切り欠いてますね

これが『小梁』が架かる部分になります
小梁は、必ず大梁よりも小さくなります
何故かって?
荷重は
スラブ→小梁→大梁→柱→基礎→地盤
って伝わって、建物が安全に建ってられます
小梁が大梁よりも大きかったら、力を上手く伝えられませんよね
ちなみに製図試験で図示を求められた時には、この画像を思い出せば間違えないでしょう

スラブ型枠

スラブ型枠はベニヤ板だけではありません。
下の写真を見てください。

おいちゃんが張ってるオレンジ色の板がベニヤ板で、その下に写真の縦方向に流してあるのが『根太(ねだ)』です
根太の間隔は構造計算によりますが、30cm前後です
根太の下に写真の横方向に流してあるのが『大引き(おおびき)』です
大引の間隔は、これまた計算によりますが、120cm前後になります
この大引を『パイプサポート』っていう言わばつっかえ棒で支えます
パイプサポートの間隔は、またまた計算によりますが、180cm前後ですね。
根太→大引→パイプサポートと、だんだん間隔(ピッチ)が広くなってるのが分かりますね

型枠の材質

型枠は「仮枠(かりわく)」とも呼ばれます
なぜかと言うと、コンクリートが固まったら外してしまうので、仮設とも言えるからです
仮設なんですが、型枠の表面がそのままコンクリートに表れるので、ベニヤ板の材質は重要です

表面に何の加工もしていないベニヤ板を使うと、コンクリートもガッタガタになっちゃいます
また、型枠用に加工したベニヤ板は、そこら辺に放っておくと劣化してしまうんで、シートをかけておくとか、ちゃんと養生して保管します

とは言え、いつもいつも型枠外してそのまま見せる(打ち放し仕上げとか、コンクリート素地仕上げとか言います)訳ではなくて、補修して塗料を吹付けしたり、タイルを貼ることもあります・・っていうか、打放し仕上げの方が少ないですけどね
そんな風に仕上げがある時は、新品のベニヤ板じゃなくても大丈夫です
実際の現場でも型枠は、数回使い回します

それから、型枠がコンクリートの圧力(側圧)に負けて壊れてしまう(型枠がバレる、なんて言います)のを防ぐために、外側を鋼管、桟木(木の角材)や金物で締め付けます

さらに梁やスラブは落っこちないように下から支えないといけません
この、下から支えるものを『支保工』って言います
支保工に使用する鋼材の強度について、過去問で何回か問われていますね
【型枠支保工に用いる鋼材の許容圧縮応力の値は、「降伏強さの値」または「引張り強さの値の3/4の値」のうち、いずれか小さい値の4/5の値とした】
・・✕
最後の【4/5】が間違いで、正しくは【2/3以下】にしないといけません

余談ですが、こんな問題に当たった時に「これやから施工はワケ分からんねん!」って思うと、そこで脳が拒否反応を示してしまいます
そうではなくて「ふ~ん、4/5ではアカンねや・・2/3やね、オッケー」くらいの気持ちで覚えてしまえば良いんです
鋼材って何回も使い回すから、4/5(2割減)では足らなくて、2/3(3割減)くらいしないと安全じゃないのかな~、みたいな感じです
(↑↑これが正しいかどうか分からなくても、これくらいの感覚で覚えてしまうのも1つの方法です)
これに納得出来なくてグリグリ調べだすと、時間がいくらあっても足りません
そういうのは試験に合格してからじっくり根拠を調べて、実力を養っていけば良いんです

支保工の種類

話をもどして、支保工の種類について、もう少し・・

試験的に分類すると
①鋼管(パイプサポート)
②枠組支柱
③組立鋼柱
くらいでしょうか
何が違うのか、イメージ浮かびますか?

簡単に言うと『安定性』です
①の鋼管は1本(単独)です
建てておくだけだったら蹴飛ばしたら倒れちゃうし、中間に支えが無いから、荷重に対して折れ曲がっちゃう危険性が高いです
②の枠組になると、足場みたいな門型になるので、2本足になってより安定します
③の組立鋼柱になると、それ単独で自立出来る安定性があります
3本足や4本足で組み立ててあるので、安定性も強度もバッチリです
こういった理由から、支保工の高さの制限や、水平繋ぎの間隔の制限に違いがあるんです

パーマネントサポート工法

過去問で以下のように問われた事があります
支柱の盛替えを行わずにスラブ下のせき板を取り外せる工法を採用したので、コンクリートの圧縮強度が設計基準強度の50%に達していることを確認した後に、せき板を取り外した】・・○
太字の意味が分かりますか?
下の写真を見てください

ベニヤ板を部分的に残して、他は型枠を解体してしまっていますね
これがいわゆる『パーマネントサポート工法』で『支柱の盛り替えを行わずにせき板を取り外せる工法』です
写真で残してあるパイプサポートは、コンクリート打設をする前からこのような状態で設置します
一般的には、サポートは大引の下に設置してスラブを支えるんですが、部分的にこのようにベニヤ板を直接支持するように設置します

なぜこんな事をするのかというと、なるべく早くスッキリさせて、他の作業を進めたいという理由が1つ
それから、解体した支保工を更に上階に転用したいという理由もあります

型枠の存置期間

問題文の続きで【設計基準強度の50%】とありますが、これは国交省告示に定められた数値です
スラブ下」の「せき板」は50%で解体OKです
同じ国交省告示でも「スラブ下」の「支保工」は85%の強度が確認出来ないと解体できません

一般的な工法だと、せき板は支保工に支えられているので、せき板を取り外そうとすれば、自ずと支保工も取り外さなければならないのは分かりますね
そうしなくてもいいようにパーマネントサポート工法を採用しますが、この場合には、型枠の構造計算をしなければいけません
この計算結果に基づいて計画書、計画図面を書きます
こういった計算根拠に基づいているので、解体しても問題無いってわけです

施工科目は経験が必要?

建築現場の経験者が施工科目において多少有利な面はあります
それはどういったことなのか考えてみました
それは、以下のような【感覚】が経験上備わっているからではないかと考えます

先程の余談ではないですが、例えば型枠の日数や強度についても、現場を経験しているとある程度の感覚があります
存置日数の『5日』が長いのか短いのか、或いは標準なのか?
コンクリートの圧縮強度の100%が要求されるのは、どんな部位なのか?
どうして50%、85%で解体してしまっていいのか?
日々現場に居て、各工程を肌で感じているからこそこういった【感覚】が身に付いています

現場の経験の無い方が全く同じような感覚を短期間で身に付けるのは難しいでしょう
しかし上記の「長いのか、短いのか」のような視点で過去問や解説集の表などを読み解いていくと、正解を導きだす感覚が身に付いていくと思います

反対に、現場経験者で注意したいのは「いつもこうやってるから」という感覚です
過去問を解いていて「あれ?自分の経験してきた感覚とずれてるな」と思ったら、そこは試験と割り切って、考え方を修正しましょう

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