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小麦アレルギーについて

〜小麦アレルギーについて〜
 小麦は3大アレルゲンの一つで、子どもの食物アレルギーでは3番目に多い食材です。成人の食物アレルギーの中では最も多い食材です。
 乳幼児期に発症した場合は、成長とともに治る可能性が比較的高いといわれていますが、特異的IgEの数値が高い場合などでは治りにくいといわれます。 
 アレルゲンとしては、大麦やライ麦、オート麦なども近いですが、これらは8割程度の方が症状なく摂取できるといわれるため、全部が全部を除去する必要はありません。特に麦茶などは大麦の中でも量が少ないこと、比較的早期に摂取することから多くの場合では摂取可能です(重度の方では飲めない方もいらっしゃいますが)。

* 診断について
 血液検査では主に小麦特異的IgE ω5-グリアジン特異的IgE を測定します。しかし、ω5-グリアジンは、(子どもでは)小麦アレルギーがあっても、陰性になることがよくあります。血液検査ではっきりしない場合や施設によっては皮膚検査を行うこともよくあります。
 いずれの結果も年齢や推移で判断することが大切です。ただ、他の食物アレルギーと同じようにこれらの検査は感作を評価するのみで、実際に症状がでるかはまた別の問題です。なので、結果は参考程度で、同じ数値でも人によって変わります。大切なのは実際に食べて症状が出るかなので、確定診断には食物負荷試験(実際に病院で食べてみる)を行います。

* タンパク質の特徴
 小麦の中に色んなタンパク質が含まれていますが、主な蛋白はグルテンです。グルテンの中に先程検査でも出てきた (ω5) グリアジンなどが含まれます。小麦のタンパク質は加熱に強いため、調理でアレルゲンを減らすことは難しいです。
 小麦を含む食品では小麦タンパク質の含有量を意識することで食事の幅を広げられるようになります。

以下うどん 10 g 換算
そうめん 7 g、パスタ 5 g、薄力粉 3 g、食パン 2 g、ビスケット 1枚

* 紛らしい食品や注意すべき食品
醤油、味噌:醸造の過程でタンパク質が分解されるため、ほとんどの場合で除去は不要です。

麦茶:大麦が原料ですが、タンパク質の量が少ないためほとんどの方は問題なく摂取できます。     

米粉パンなど:問題なく摂取できますが、市販の米粉パンでは小麦も使用されていることがあり、注意が必要です。アレルギー表示や店員さんに確認をした方が良いでしょう

* 栄養面で注意すること
 一般的なパンや麺が食べられないことから不便はありますが、栄養面では他の食材から十分に得られるため、大きな問題はありません。

* 特殊なタイプのアレルギー
 食物依存性運動誘発アナフィラキシー:中高生くらいから見られる珍しいタイプのアレルギーです。小麦を食べてから、だいたい2 時間以内に運動すると、アナフィラキシーを起こしてしまうことがあります。小麦以外にも甲殻類や果物などが原因のこともあります。 対応としては、運動前に原因食物を食べない、エピペンを所持するなどです。残念ながら、どのくらいで治るかなどは、まだはっきりとわかっていません。

 茶のしずく石鹸などに含まれた加水分解小麦によるアレルギー:グルパール19Sという加水分解小麦タンパクを含有した石鹸を使用した方に小麦アレルギーを発症した人が多数現れ、アナフィラキシーを起こす方もいました。多数の患者が危険な目にあったため大きな社会問題となりましたが、同時に経皮感作について世間に拡がる一つのきっかけになりました。
 小麦アレルギーとは別件として似たような話はピーナッツオイルを塗ってピーナッツアレルギーになる、きゅうりパックでウリ科のアレルギーになるなど多数報告があります。
 教訓として、天然物質で安全!などとうたっている食物タンパクを含有する化粧品などはなるべく手を出さない方が安全だろうと思われます。

これで3大アレルゲンのアウトプットがひとまずできました。今後はアレルギーだけでなく、小児科としての知識、勉強したこと、思ったことなど綴っていきたいなと思います。

参考文献

・食物アレルギー診療ガイドライン2016
・年代別食物アレルギーのすべて 改定2版
・シーン別 食物アレルギーの栄養食事指導

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