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牛乳アレルギーについて

牛乳アレルギーについて
 3大アレルゲンの一つで子どもの食物アレルギーでは2番目に多い食材です。成長とともに治る可能性が比較的高いといわれていますが、特異的IgEの数値が高い場合やアトピー性皮膚炎が十分に治療できていない場合は治りにくいといわれます。
 アレルゲンとしては、牛乳に含まれるタンパク質のカゼインが主です。これらは乳児用ミルクや羊・ヤギの乳にも含まれているため注意が必要です。
 よく、牛乳を飲んで下痢することがあるという方もいますが、それはアレルギーではなく、乳糖不耐症の可能性が高いです。

★ 診断について
 血液検査では主に牛乳特異的IgE と カゼイン特異的IgE を測定しますが、これらはほとんど同じ値になります。他の食物アレルギーと同じように値が高ければ本物の可能性は上がりますが、血液検査は参考程度で、同じ数値でも人によって変わります。
 大切なのは実際に食べて症状が出るかなので、確定診断には食物負荷試験(実際に病院で食べてみる)を行います。

★ タンパク質の特徴
 主要蛋白のカゼインは加熱や発酵に強いため、通常の調理ではアレルゲン性を下げることはできません。乳製品には色んなものがありますが、気をつけるのはタンパク質の含有量です。牛乳やヨーグルトには 約 3 %のタンパク質が含まれますが、チーズはその 7 - 8 倍のタンパク質を含んでいます。また、脱脂粉乳や低脂肪ヨーグルトは油分を抜いている分タンパク質量が多いので注意が必要です(脱脂粉乳は牛乳の約 10 倍!)。

牛乳 10ml 換算量
バター 50g、ヨーグルト 9g、クリームチーズ 4g、プロセスチーズ 1g

*牛乳アレルギー用ミルク:加水分解という特殊な方法でタンパク質を小さくして反応しにくくしています。

★ 紛らしい食品や注意すべき食品

乳糖:多くの牛乳アレルギーの方は乳糖の摂取は可能です。超重症な方のみ注意が必要です。

乳酸菌:乳酸菌そのものに牛乳のタンパク質は含まれていないため摂取可能です。ヤクルト®などの乳酸菌飲料は乳が含まれるため注意が必要です。

牛肉、乳化剤:牛乳アレルギーでも問題なく摂取できます。

* 栄養面で注意すること
 牛乳はカルシウムを豊富に含むため、除去する場合、カルシウム不足に注意が必要です。特に、牛乳を完全除去している子では低身長のリスクも報告されています。
 離乳食だけで十分なカルシウムを摂取することは難しいので、乳児期はアレルギー用ミルクも検討した方がよいです。また、牛乳よりは少ないですが、豆乳や豆腐、しらすなどからもカルシウムを摂取できますので、可能であれば積極的に食べておきたいです。

* 少量ずつ食べていく場合のコツ
 基本的には牛乳やヨーグルトをベースで考えた方が間違いが少ないです。重症な子では牛乳を水などで薄める牛乳水というやり方で飲んでもらうこともあります。

* 予防について
 近年の研究でピーナッツと鶏卵については、ある程度予防が可能であることが報告されています。牛乳についてははっきりしていない状況でしたが、2020年に牛乳アレルギーの予防についての研究が報告されました。
 
方法としては、生後1〜2か月の間に粉ミルクを1日 10ml程度摂取することで、これにより粉ミルクを避けた群(必要時は大豆ミルクを使用)と比べて生後半年での牛乳アレルギーの発症を有意に減らすことが確認されました(粉ミルクを飲んだ群 0.8%、飲まなかった群 6.8% )。

 確かに母乳には栄養や免疫面、愛着形成、腸管細菌叢など母乳の明ならではの良さがあり、世界的にも母乳栄養が勧められるていると思います。また、混合栄養自体にもやや難しさがあるので、この報告だけで、全員粉ミルクを飲みましょうという話にはさすがになりません。また、生まれてすぐに粉ミルクを飲むと牛乳アレルギーになりやすくなるかもしれないという報告もあるため、まだまだ研究段階ではあると思います。
 
 ただ、方向性として経口免疫寛容を進めることで卵・ピーナッツ以外にも予防ができることがわかってきたことはポジティブに捉えてよいものだと思っていますし、実感としてもミルクを飲んでいる子の方が、牛乳アレルギー自体は少ないとは思います。


 今回は牛乳アレルギーについてまとめてみました。一般的なことなので、個々の患者さんでは少し違う部分もあると思いますので、参考程度に読んでいただければ幸いです。
 ご心配なときには、なるべくアレルギーを得意としている病院、可能なら食物負荷試験を行っている病院でご相談ください。


参考
・食物アレルギー診療ガイドライン2016
・年代別食物アレルギーのすべて 改定2版
・シーン別 食物アレルギーの栄養食事指導
・Sakihara T, et al. Randomized trial of early infant formula introduction to prevent cow's milk allergy. J Allergy Clin Immunol. 2020; S0091-6749(20)31225-2.
・Urashima M, et al. Primary prevention of cow's milk sensitization and food allergy by avoiding supplementation with cow's milk formula at birth: A randomized clinical trial. JAMA Pediatr. 2019;173(12):1137–45.

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