ヨメのワタシ その5

何も連絡はなかったのですか。携帯に着信は?
ケアマネさんが慌てているのが携帯を持つ手からも伝わった。

何かありましたか。
またお断りしたのかな?
そう思いながら、尋ねた。

ケアマネさんが訪問すると、たった今、義父の容態が低下し直ぐに病院に来るよう連絡があったと言うではないか。運転免許を持たない2人は、大通りに出てタクシーで向かうとアタフタと出かけて行ってしまったらしい。

帰宅の自転車を漕ぎながら、オットに連絡する。
やはり、オットにも連絡無しだ。

自宅は何度かけても留守番電話が同じ言葉を繰り返すだけだ。義母も義妹も今を生きていないので携帯電話を持たない。
連絡を取る術が無いので、病院に電話をした。
MSWは帰宅して不在。
病棟ナースに繋いで貰う。

キーパーソン以外には、本来お伝えできないと前置きされた後、ご臨終なさいました。と若い声が返ってきた。
まだ、霊安室にいらっしゃるか否かは病棟からは分かりかねます。
ご最もです。ご多忙中ありがとうございました。
とオットが狼狽した声で携帯を下ろした。

どうしたらいいのか。
何処へ向かって車を出したらいいのか分からないワタシたちだった。
取り敢えず義父がお世話になっていた病院まで行く事にした。
首都高を西へ西へ。
助手席から、何回も義母の自宅電話へかけるが、出るのは留守電の女の人。

病院へ到着した。
が、そこにはもう遺体となった義父と義母と義妹の姿はなかった。

また、同じ質問を浴びた。
ご連絡はなかったのですか。
携帯へ連絡なさったら如何ですか。

分かりました。
いろいろありがとうございましたとオットがスタッフらしき人へお辞儀をした。

葬儀屋さんと話して、既に次の段階へ進んでいたのだ。

病院からそう遠くない自宅近くのコインパーキングに車を停め、義母と義妹が帰宅してくるのを待つ事にした。

#義父 #嫁 #ヨメ #長男の嫁

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