見出し画像

再録「あのときアレは神だった」〜メルモちゃん

テレビアニメ、漫画、スポーツ、アイドル歌手などなど。
実在の人物から架空のものまで、
昭和にはさまざまな「キャラクター」が存在した。
われわれを楽しませたあの「神」のようなキャラクターたち。
彼ら、彼女たちの背後にはどんな時代が輝いていたのだろうか。
懐かしくて切ない、時代の「神」の軌跡を振り返る。

(2016年より、夕刊フジにて掲載)

最近、タワーマンションが増え、高層階からの子供の転落事故なども報じられるようになった。小さい頃から高層階に慣れていると、高所を恐れる感覚自体が育たないという話を聞いた。

その話の信憑(しんぴょう)性がどれほどのものなのかはよく分からないが、セミ取りの木登りから派手に転落して以来、マンションでも2階以下しか住まない高所恐怖症になったわたしにしてみれば、なるほどと思うことのひとつでもある。

さて、突然ではあるが、性教育における「空き地の木登り」の役割を果たしたのが、『ふしぎなメルモ』である。

1970年から1972年にかけて雑誌『小学一年生』に連載された手塚治虫原作のマンガで、71年からはアニメ放送もされた。

主人公のメルモちゃんが「ミラクルキャンディー」を食べると、あら不思議。大人になったり、赤ちゃんになったりする。まだ小学校3年生だけど、その「女体」が、服を着たままボインボインの「お姉さん」になり、小学生用の短いスカートからキツキツのパンツがあらわになったりする。

アニメ放送開始時のわたしの年齢は8歳。まさに、どんぴしゃりとこのメルモちゃんに性教育をされたクチである。

聞くところによると、同時期に大人気だった『ハレンチ学園』(永井豪原作)に対抗心を燃やし、それならこっちは「性教育」で、と図ったとか図らないとか。

雄しべと雌しべ、お医者さんごっこ、メルモちゃん、あのねのねの本、産休教師の代わりで来た若い女の先生の体操着姿、道端に落ちている雨にぬれたエロ本、などなど。

古今東西、モヤモヤのもとはあまたあるけど、今の子は果たして、何でモヤモヤするのだろうか。 (中丸謙一朗)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?