見出し画像

再録「あのときアレは高かった」〜グルービーケースの巻

「あれ、欲しい!」

そう思うが月々のお小遣いでは到底手が出ない。恐る恐るおかんに相談してみたら、「そんなのおとうさんに言いなさい!」とピシャリ。
そりゃ、直接言えるのなら、おかんに相談しませんわな……。
と、そんなわけで、クラスの中の金持ちのボンだけが持っているのを横目に見ながら、泣く泣くあきらめたあの日の思い出。
そう、あの時あれは高かったのだ。

昭和の、子どもには「ちょっと手の出しにくい」ベストセラー商品。
当時の価格や時代背景を探りながら、その魅力を語る。

     ◇

グルービーケースはミドリから昭和46(1971)に発売された、当時の小学生の間で爆発的に流行った文房具入れのようなものである。

価格は400円前後。消費者物価指数で現在の価格に直すと1200円前後。そんなに高いものではない。ただ、そうは言ってもダンボールのような素材にコーティングを施しただけの「チャチ」な箱だ。

そんな「子どもだまし」商品が爆発的にヒットした理由は、昭和49(1974)にマルマンによって発売されたNFLシリーズの力が大きい。

デザインにアメリカのNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)チームの名称やマークが使用され、やれ「俺はピッツバーグ・スティーラーズだ」だの、「僕はロサンゼルス・ラムズ」だの、箱全面に塗られたチームカラーとワンポイントで添えられたヘルメットのデザインを自慢し合ったものだった。

しかし、このブーム、振り返ってみると何だか唐突だった。

アメリカンフットボールという競技があるということは知られつつあったが、テレビなどで積極的に放映していた記憶はない。なのに、なんであんなに流行ったのか。単なる「舶来」の流れか?

極東の小さな島国で流行ったそれは、乱暴なたとえで言えば、現在急成長しつつあるアフリカの小国で、いきなり大相撲の力士の顔と相撲字(江戸文字)が入ったズタ袋が小学生たちの間で大流行しているようなものなのか。

私ももちろん持っていた。マイアミ・ドルフィンズだった。

でも、1年ぐらいで飽きたような気がする。

当時、全米で人気となっていたトーマス・ハリス原作の映画『ブラック・サンデー』(スーパーボウルの会場で要人暗殺用の飛行船が爆発する)が米国で公開されたのは、そのブームも一段落した1977年のことだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?