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5/15放送分「葵祭」

葵祭は、下鴨神社と上賀茂神社の例祭のことを指しますが、今から約1500年前に始まったとされ、京都最古のお祭りです。今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の主人公・紫式部が記した『源氏物語』にも登場するほど歴史があります。また葵祭は、7月の祇園祭、10月の時代祭と並んで「京都三大祭」の一つに数えられています。

葵祭は古くは賀茂祭(かもさい)または北の祭とも呼ばれ、平安中期のきゅうてい(宮廷)貴族の間では、“まつり”といえば、この葵祭のことであるとされるほど有名でした。540~571年のきんめい(欽明)天皇の時代に、「飢饉の原因は、賀茂の大神様に丁寧なお祀りをしていないため」と言うお告げに従って、賀茂社(上賀茂神社・下鴨神社のこと)に遣いを送ったところ、天候が劇的によくなるという出来事がありました。それ以来、毎年朝廷から、天皇の使者であるちょくし(勅使)が送られ、祈りが捧げられるようになりました。

そのため、葵祭は、京都三大祭の一つであると同時に、石清水八幡宮の石清水祭、春日大社の春日祭とならぶ「(さんちょく)三勅祭」の一つに数えられています。天皇の使者、ちょくしが派遣される祭りをちょくさいといいますが、3つのちょくさいでさんちょくさいなんですね。京都だけでなく、国の平安を願う、スケールの大きい祭という位置付けになっています。

現在に至るまで受け継がれている葵祭ですが、室町時代に衰え、戦乱期に入ると行列は姿を消してしまいます。江戸・元禄期に再興されたが、明治維新で行列は中止になります。1884年明治17年に復活したが、第2次大戦でまたもや中止され神事だけが続けられていました。戦後、行列が巡行するようになったのは1953年昭和28年からで、斎王代の登場は1956年、昭和31年からとなっています。

葵祭の最大の見どころは、なんといっても今日これから行われる「路頭の儀(ろとうのぎ)」です。きゅうていしょうぞく(宮廷装束)に身を包んだ総勢500人以上の人々に加え、馬36頭、牛4頭、牛車2基、斎王代が乗っている乗り物、腰輿(およよ)と呼ばれる輿(こし)1台が一緒になって列をなしますが、その長さは1キロにも及びます。京都御所から上賀茂神社までの全長約8kmの道のりをゆっくりと進んで行きます。
行列が上賀茂神社、下鴨神社に到着すると、勅使の御祭文(ごさいもん)の奉納や舞の奉納など、社頭の儀が神前で行われます。

「路頭の儀」の行列は、「本列」と「斎王代(さいおうだい)列」の2つで構成されています。まず、勅使を中心とする「本列」が進み、その後ろに「斎王代列」が続きます。

「本列」は、先導する騎馬隊の「乗尻(のりじり)」から始まって、行列の警備の役目を担う「検非違使(けびいし)」や「山城使(やましろつかい)」が続きます。その後、神前に捧げる供物を納めた「御幣櫃(ごへいびつ)」と、それを管理する役人「内蔵寮史生(くらりょうのししょう)」や、美しい藤の花が飾られている「牛車」、そして神前で舞を奉納する「舞人(まいびと)」、楽器を演奏する「陪従(べいじゅう)」が続きます。

そして、行列の中で最高位を誇る天皇の使い「勅使」が立派な飾りに包まれた馬に乗って進みます。現在では、実際の勅使は路頭の儀には参列されていないことから、その役目を「近衛使代(このえつかいだい)」が担っています。その後、大きな傘の上に美しい花を飾る「風流傘(ふりゅうがさ)」が行列を彩り、「本列」の結びとなリます。

本列のなかで、ひときわ目を引く乗り物が「御所車」と呼ばれているうしぐるま、ぎっしゃ(牛車)。薄紫色の藤の花の装飾を揺らしながら、車輪を回してゆっくり進みます。また、大きな傘の上に、牡丹や杜若などの花を飾り付けているのは風流傘です。まさに平安絵巻が目の前に!といった感じで見所がたくさんあります。

路頭の儀の御所車や勅使、列を共にする人や衣類などに緑の葉が飾られますが、これは「葵桂(〝あおいかつら〟または〝きっけい〟)」といって、桂の小枝に、下鴨神社と上賀茂神社の神社の紋章である、二葉葵の葉を絡ませたものです。

葵祭は、もともとは「賀茂祭(かもさい)」と呼ばれていましたが、江戸時代に祭が再興されてから葵の葉を飾るようになり、「葵祭」と呼ばれるようになったそうです。祭で使われる葵は毎年両神社から御所に納められています。

本列が終われば「斎王代(さいおうだい)列」になりますが「斎王」というのは、かつて上賀茂神社・下鴨神社に巫女として奉仕した未婚の皇族女性を指す言葉です。かつては斎王が葵祭に奉仕していましたが、現在は斎王の制度がなくなったため、斎王の代わり、という意味の「斎王代」が行列に加わっています。

この斎王代は、毎年、京都ゆかりの未婚女性から選ばれます。今年、第66代斎王代は、中京区在住の会社員、松浦璋子(あきこ)さん(22)が選ばれています。松浦さんは壬生寺の貫主の娘さんだそうです。斎王代は十二単のきらびやかな衣装をまとい、およよに乗って登場します。まさに葵祭のヒロインといったところです。斎王代は美しい十二単を纏っていますが、重さはなんと約20kgもあるそうですよ。

さてこの路頭の儀、午前10時半に先頭が京都御所を出発し、午前11時40分ごろ下鴨神社に到着します。「社頭の儀」を経て午後2時20分、上賀茂神社に向かって出発します。

行列に伴い交通規制などが実施されます。交通規制の詳細は府警のホームページで確認できますので、時間に余裕をもってお出かけください。

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