「画面を見られない方には申し訳ないのですが」に対する思い

アクセシビリティがテーマの会議でしばしば耳にするこの表現「画面を見られない方には申し訳ないのですが」、皆さんはどのようにお聞きになっていますか?あるいは、どのようにその表現を活用されていますか?

主にスクリーン・リーダーを使っていて画面を見ることができない会議参加者に対してプレゼンターが発する言葉、僕といっしょにちょっと考えてみましょう。

なぜこのような発言があるのか?

アクセシビリティをテーマとした会議でなぜこのような発言がプレゼンターからおこなわれるのか、僕の推測の範囲では以下のような原因があるのではないかと思います。

画面に表示している図やグラフのことを申し訳なく思っている

「画面を見ることができない方には申し訳ないのですが」、この発言がおこなわれる多くの場合は、言葉の通り、おそらくこのような背景があると思っています。
「画面には図やグラフを表示していて、本当ならグラフや図ではなくて、全ての会議参加者に伝わる方法で表現したい。でも、図やグラフを使えば参加者の多くには俺が意図していることは伝わるはずだ。だから、会議参加者で画面を見ることのできない方々(たいていの場合数はそれほど多くはない)にはちょっと我慢してもらってその場をやり過ごしたい。」
そんな思いで発せられるのがこの言葉、なのではないでしょうか?

たいていの場合「画面を見ることができない方には申し訳ないのですが」はそれで1つの発言として完結することが多いようです。
中には「言葉でもできる限り図の内容を説明しますので、どうぞご了承ください」とか、「後でテキストの資料を共有しますのでいったんは聞いておいてください」などの文言が続くこともあります。

ちなみに、スクリーンリーダーを使っている僕の立場で遠慮しないで言わせていただくと、可能な限り言葉で図を説明しながら進める会議は、発表者が思っているほど参加する側の僕には理解できていません。むしろ、まどろっこしい説明を聞いていることで余計に論点がわからなくなるケースもありますし、最初は丁寧に図の説明をしていた発表者が「時間の関係でここからは駆け足でお話ししますが」とでも言おうものなら、丁寧な図の説明はなくなり、結局何が言いたかったんだかわからなかったねえ的な感想しか持てないこともあります。

図は使うけど自分は決してアクセシビリティを軽視しているわけではないことをアピールしたい場合

他のアクセシビリティをテーマとした会議に参加したときに聞いた「画面を見ることができない方には申し訳ないのですが」に感激して、自分もそう発言さえしておけば許されると考えてそう発表の中で発言されるケースがこれです。
結局のところ、申し訳ないお気持ちだけ頂戴しただけで、発表内容はわからないままで会議が進むことは結構あります。
(申し訳ないと思ってくださるのであれば、饅頭とか最中とか参加者にお配りになるのが良さそうデス。)

じゃあどうすりゃいいのよ?

スクリーンリーダーを使っている辻がそんな発言や発表に不満を持っていることはとりあえずわかったけど、「じゃあどうすりゃいいのよ?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

謝るくらいなら画面の図に依存した発表をしない

まず試していただきたいのはこれです。
図を見てもらった方が自分が伝えたいことが伝わる、そういうケースもあるでしょう。図を見ていただくことで、自分が意図していることに共感してもらえたり、グラフがあればこれまでの数字と現状が比較できて便利なこともあるでしょう。

そうであれば、それを言葉で表現すれば良いのです。
「昨年の○○は代替□□パーセントだったのに対して、今年は××パーセントに増加しており、これが~~に影響しているものと思われます。」とか、言葉で表現する時間を作れば、「画面を見ていない方には申し訳ないのですが」と弁解している時間以上に相手に伝わる発表ができるのではないかと思います。

思い切って会議をリスケする

もし、画面でしか伝えたいことが伝えられない発表を仕様としているのなら、自分が伝えたいことを言葉で伝えられるようになるまで、会議を思い切ってリスケするのもありだと思います。
会議の参加者全てに伝えたいことが伝えられない会議であれば、その会議の意義は十分に達成できないのではないでしょうか?

もちろん、画面を見られない人は会議参加者のごく一部であり、自分が情報を伝えたい人ではないので気にしない、という考えであれば、僕はそれを止めることはしません。
むしろ、そういう会議であれば呼ばれないことの方が幸せかもしれない、とさえ思います。

余談ですが、以前僕は「十分に準備ができていないのであれば、思い切って会議をリスケしてください。」とおっしゃる上司の下で働いていました。
時には、そういう思い切った決断をすることは、発表する側にとっても、参加する側にとっても幸せなことかもしれないので、是非検討してみてください。

最後に

デジタルで資料を準備できるようになったり、オンラインで会議を開催することでより多くの方々が参加できるようになったりと、以前に比べて会議を開催するハードルはとても小さくなったと思います。
次のステップとして、本当に誰一人鳥残さない会議のやりかたについて皆さんといっしょに考えていけたらいいなと思って、こんな駄文を書いてみました。
特定の誰かを批判する意図はないこと、いっしょに会議のアクセシビリティについて考えていきたいという僕の思いが、お読みいただいた方に伝わることを願っています。

来年の前半に、オンライン会議のアクセシビリティについて記事を執筆させていただく予定がありまして、記事を書くときに感情的になったりしないようにしたいなあという思いで、ちょっと書いてみました。
来年の記事にご期待いただけますと幸いです。

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