見出し画像

哲学史からみたアニマルライツ⑦

どうもアコニチンです。

動物の権利(アニマルライツ)に関する哲学の話を紹介します。友人に聞いたものです。

哲学史から見た動物の権利
(Stephen Law(2007) “The Great Philosophers the lives and ideas of history’s greatest thinkers”, Great Britain: Quercusを参照)

1. ジョージ・ベンサム(1748-1832)
哲学史上、初めて動物にも人間と同じ権利があると主張したのがジョージ・ベンサムである。
デカルトやカントは、動物には人間のような理性がないことを理由に、動物の道徳的な価値・権利を認めなかった。これに対してベンサムは、道徳的価値・権利の有無を決定づけるのは理性ではなく感傷性(the ability to suffer)であると考えた。理性が道徳的価値・権利の有無の条件であるとすると、理性を未だ持っていない幼児や精神疾患を持つ人たちに道徳的な価値・権利がないことになってしまうからである。

2. ペーター・シンガー(1946-)
ベンサムから時代を下ること約2世紀、動物と人間の権利の差に注目した思想を展開したのがアメリカのペーター・シンガーである。
私たちは(多くの国で)殺人を厳格に禁じているのにもかかわらず、動物の屠殺は全く禁じていない。私たちは近年動物の権利に敏感になってきているのにもかかわらず、いまだに動物の権利と人間の権利との間の区別を自明視している。
シンガーは、このような区別は実は道徳的には正当化されえないと主張している。
例えば、子供が大人のように運転する権利・投票する権利を持たないことは道徳的に正当化されうる。子供は大人のような判断能力を未だ持たないとみなされるからである。
しかし、動物を殺すのは問題なくて、人間を殺すのは禁じられているという事態は、道徳的に正当化され得ない。生存権はその個体の道徳的権利の最も基本的な権利であり、それが否定されるならその個体はいかなる道徳的権利も持たないことになる。しかし、道徳的価値・権利の有無が感傷性の有無で決まるとすれば、動物もまた人間と同じように道徳的権利を有していなければならない(ベンサムの議論を参照のこと)。動物が道徳的権利を持っているならば、その基本となる生存権も当然彼らは有していなければならない。したがって、動物が殺されることは道徳的に不当である。
とはいえ、事実として私たちは他の生物を殺すことなくして生き延びられない。だから私たちは、「道徳的・理性的な人間が動物を殺す」という行為をいかにして正当化できるかという喫緊の課題をなんとかして解決しなければならない。
この課題は、今もなお解決されないまま私たちの前に横たわっている。


この記事が参加している募集

#とは

57,847件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?