【感想】"音声教育学者ちんどりによる「シャウト / ノイズ」セミナー 主催 : ボイススタジオARIA"を聴講して
お久しぶりです。
先日、以下のセミナーを聴講してきました。
個人的な興味・関心にどんぴしゃだった、音声関連でのイベントでは一番の情報的な収穫が得られたようなイベントでした。
0.記述の方向性
今回、音声教育学を修められたちんどり先生より、多くの知見を授けていただく機会となれました。
イベントに同席していた方々には悪いなと思いつつ、そこそこに質問祭りをしてしまいました、主張が強く感じられていたら申し訳ないです。
さて、本当に多く腑に落ちる部分の出来た機会となりまして、バーッと書くつもりでした。
ただ、前に以下のような記事を出してまして。
まぁめちゃくちゃなんですけどね、当時の観測出来ていた範囲で考えていたことです。
別にこの一年弱で何か進展があったわけでもなく、今回で新規情報を得られたような所でしたが。
閑話休題、以前に自身の見解をまとめていたものがあるので、それらに突っ込みを入れていくような形でブラッシュアップ兼感想と出来ればな、という所です。
強く念を押したいですが、個人の感想と妄想です。
1.デスボイスの発声原理
当該セミナーでは一貫してノイズ・シャウトあるいはスクリームと仰られていましたが、その上でもとりあえずデスボイスとした上でですね。
①デスボイスに関して
という記載をしていましたが、これは概ね合っていました、それはそう。
セミナー中では、通常の周期的な音声と、サブハーモニックと、非周期的なノイズと3段階に分けてスペクトル及びスペクトログラムで解説されていました。
先生の音声デモの波形にて、上記が挙げた順に移行していくことが確認できていますし、概ね誰しも再現可能かと思います。
色々と後述もしますが、先生のデモの音声は呼気でのフライスクリームです。
この音色の変化として、声帯における緊張等の振動体としての在り方が左右で差異が生じ、それにより左右同じ振動→左右でサブハーモニックを生じる振動→左右ともに振動が非周期的、と変遷を辿っていました。
突っ込んで文献を当たれば非周期的な振動時の声帯運動も何かありそうですが、ひとまずは波形上はそういった情報が確認できた、という所でした。
②デスボイスの分類について
上記の通りなわけで、呼気による声帯で完結するフライスクリームは実現可能という結果がわかりました。
そのため、仮声帯が必須という前回の見解は大間違い、となります。
先生曰く、音声教育学…ないしはそれらのシーンで採用されているノイズ発声の分類として、CVTの先行研究を元に
・声帯での乱流
・声道内での乱流
の2つに大別していました。
大まかに言い換えれば、声帯のノイズか上喉頭腔の組織によるノイズか、という所ですね。
個人として、フライスクリームとフォールスコードスクリームの2つの大別していました。
ここから進むべき話としては、フォールスコードスクリームの実態面での細分化…のような所なのかなと思いました。
大前提として、デスメタル等で用いられるタイプのノイズはフライスクリームが必須と考えられます。
すなわち、フォールスコードスクリームと呼ばれるものでも、全てのデスボイスと呼ばれるようなパターンの音声では、声帯はフライスクリームを実現していると考えるわけですね。
少し整理したい点として、用語の部分ですね。
学術的なシーンでのノイズは声帯の周期的な音声パターン以外を指すケースが多く、概ねそれで間違いない認識と思います。
なので、「これがか?」みたいな音声デモもスクリームなりシャウトなり、そういったラベリングがされています。
個人的に、もといデスメタルやそれに準じる音楽を元に切り込んでいる人間としては、声帯が周期的-他組織がぶつかってノイジーはお求めのスクリームやシャウトでは無いと感じるかなと、そうじゃないです?
いわお個人が論を展開する上では、基本的にはフライスクリームありきで他の声道内の組織が干渉しているか否か、に焦点を当てています。
ただ、何か調べ物をする際、先行研究ではどの部位による振動が起こっているかで分類がされており音色が解釈不一致なパターンが大いにあり得ます、気を付けましょう。
さて、本題に戻ります。
なので、先行研究に準じて展開しようとするなら、フライスクリームは前提とした上での、声道内のパーツのどこが干渉するとどのような音声になるか、で分類がされていくべきという所ですね。
予想は出来ていた範囲内の事実ではありますが、エビデンスのバックグラウンドをもってして言えることが知れたっていうのが大きいわけですな。
「こうに違いないと思う」と「こうしてみたらこうだった」は雲泥の差です、前者はどこまで行っても憶測でしかない。
③呼気での発声
上述しましたが、仮声帯の関与は必須ではないですね。
加えて言えば、フォールスコードスクリームに分類されている音声パターンで実は仮声帯が関与していない可能性があるものも多いのでは、とも。
でもまぁ、咳き込みから導入するなら…もとい、三層弁としての仮声帯の性質を利用して導入を図ることが主流と思いますと、発展した先や我流で得たものならまだしも大多数は少なくともフォールスコードスクリームと分類されて差し支えないのかな、とも思いますか。
以前の記事で、
と、申し上げていましたね。
ちょっと読みながら書いてますが、意外と良い線を行っている記述もあるのウケますわな。
何度も記述しますが、声帯によるフライスクリームが大前提にあって、そこがブラックボックスと化していて迷走はしていましたが、
声門上部…というより正確には上喉頭腔かなと思いますが、その器官における非対称性のある粘膜組織の振動は重要なポイントかな、とは予想します。
それらの周期的な振動は喉ベースやカルグラとかですか、そういう唱法に寄っていくかなと。
2点目の、それが声帯振動へ作用するかは、先生曰く関係を結び付けられもするし切り離せもする、とのことでした。
空気力学的な作用も予想できますし、単に連続している組織なのでね、影響は述べようと思えば出来るとは思いますね。
ただ、関与するものが増えすぎると訳がわからなくなりそうとも思い、スッキリした研究デザインとするのには切り離す方がスマートとなるのかな、等とも。
考えれば考えるだけ、声帯よりデカい組織が非対称的に振動して、且つ歪な乱流を起こすのであれば声帯へ相互作用的に影響し得るのでは…という妄想は膨らみます。
デスボイスたるフォールスコードスクリームのポイントはそこにありそうな気がしないでも無いです、なんとなく。
という疑問に関しては、しているんですねで終わりでした。
器質的な変化が無いと…と書いていましたが、ここは声帯は左右対称にのみ運動出来るというバイアスが邪魔しまくってた所でしたね。
ひとつ考えていたことを活かそうとしてみるなら、声帯振動のみでのフライスクリームを生成することの工夫や代償手段的なやり方として、より大きな影響を喉頭腔に及ぼす仮声帯を用いている可能性があると言えるかな?という感じでしょうか。
これは経験則的にという気もしますね、そうとも言えそう位な範囲のことにも思えます。
④吸気発声に関して
ここに関しては前回書いていることで概ね間違いは無かったです、概ね。
純然たるフライスクリームは吸気のみ、が間違いです、はい。
2.デスボイスの種類
前の記事にそっての話はひと段落で良いかなとなれたので別の話題へ、発声導入とかは今の関心では無いのもあり。
ガテラルだのグロウルだのという所に関してですね。
それはそうかという所ですが、フォルマントで説明が多くつきそうだなぁという所でした。
セミナー中では、喉頭のF1と口腔のF2との話をされていまして、母音ですね。
また、フライスクリームのピッチはあるか?という点に関して、声帯で生成されるピッチは無いものの声道で形成されるピッチライクカラーはあるとのことでもありました。
これも割と直感には反さないことで、要は口腔内での舌をどうだこうだするもそうですが、そこに伴っての上喉頭腔の在り方だったり声道長が喉頭の挙上・下降によって変化したりで、要は振動体の振動数に依存したピッチの変化は無いが共鳴腔による変化はある、という所でしたね。
厳密にいこうとすれば、非周期的な声帯振動自体にも変化はあって声帯によるピッチの変化も生じ得るかなと予想は出来ます。
ただ、実際問題として観測することは難しいのと、要素として声道の変化によってもたらされるものが大きいのが実際と思います。
前に少し考えたこともありましたが、やはり波形で音声パターンは分類する他無いんじゃないかなとも思う所に至りますね。
ガテラルを凄い低いような音声と定めるなら、それは声道長を求められるのであれば、性差または個体差によって実現し得ないという物差しもあり得るかなと。
それは男女でソプラノやバスとか分かれて音声の実現が叶わないのと同じように、という感じでしょうか、その辺りは明るくないので違ったら申し訳ないです。
また、先述のように振動体がどこか、という所でしょうかね。
そのため、現状…をよく知りもしないですが、デスボイス全般の分類をしていこうとするなら
・振動体はどこが関与しているか
・スペクトログラムおよびスペクトル上でどうなっているか
を元に線引きをしていくことが定量的には持っていけるかと考えます。
まぁ定量的にもっていく意義は?という所はあるかもしれませんけどね。
3.個人課題
最近、本当にめっきり声を出すなどもしていなかったですし、特に人へ指導するなどもしていませんでしたが、ここが課題かなぁという点についてですね。
実演として、歌唱ほど高度なことはできませんがフライもフォールスコードも出来ていて、フライをベースに仮声帯ないしは上喉頭腔の組織を関与on/offも出来はしてます。
ここの自在性を高めていく、のもそうですが、個人的には音色の印象上低いフライスクリームを出していけたらなぁと思う所です。
吸気では出来るので、音量も出て呼気で出来たら色々とまぁ良しかなと。
また、ノイズの種類に対する弁別能は高めていきたいなと思うばかりですね。
やり方はわからないですし特に頑張る予定も無いですが、仮声帯の有無も、楔状結節なり別の組織の振動なのかとか、非対称性の有無とか自分の中で経験則的に何かを蓄積出来たら良いのかなぁと思います。
4.内容以外の感想
かな~り久しぶりに音声に関するイベントに参加しましたが、やっぱり楽しかったですね。
自分よりも物を多く知っている方に習うのはどんなシーンでも面白みを感じられることです。
遠慮なく質問をさせていただけたのもあってですね、これは本当にちんどり先生と場を設けてくださった岩崎先生へ感謝です。
良くも悪くも浮いた受講者になり帰り際にお声がけいただいたり、懐かしい方々と話せたり、そういった戻ってきた感も得られて良かったですね。
最近は完全にただの言語聴覚士をしているので、職場では神経心理屋がメインですからね。
面識の有無を問わず、とっつき難いタイプの人間にコミュニケーションを持ちかけていただいた皆様にも感謝です。
こういったセミナー、過去一度だけこれもまた岩崎先生に誘われてやったことがありましたが、参加者側として今後は長く覗ければなぁとなりました。
こと音声関連で、人にアウトプット出来るほど質の高い情報収集は出来ていないのと、やっぱり聴講者としてそれはそれで幾らか好きに質問させてもらえるのは楽ですし有難いです。
常々言っていますが、研究はしなくていいならしたくないですし、知りたいことを誰かが調べて教えてくれるのが一番楽ってところです。
ただまぁ、現職と今までの経験があってこそ出来た質問は多いかなとも思うので、この楽しみ方が出来ているのは色んな方のおかげ様という気でいます。
この記事も含め、こういうアウトプットがどの程度の面白みを持てているか不明ですが、誰かの何かの足しになればと思うばかりです。
5.終わり
相変わらず尻すぼみになりました。
声を大にして言えることとして、興味があることには飛び込んで損が無い、という話ですね。
今回のセミナーもタイトル等々見て出来る範囲で爆速で取りました。
というか、お手数おかけしますが何か面白そうなイベントあれば誘って貰ったり教えて欲しいなと思っちゃいますね。
最近はあまりTwitterに張り付いていないのでね、今回のイベントを取りこぼさなくて本当に良かったです。
また気が乗るか、何かあれば更新は細々します。