ROOTS OF "D" 第5回 D'ERLANGER『LA VIE EN ROSE with remastered』(1995)
前回からだいぶ期間が空いてしまい、この連載を忘れかけている方も居ると思いますが、今回は思春期の自分に第3回で取り上げたZi:KILLと並んで『自分達がオリブの園(幼稚園の代わりに通っていた児童研究所)でターザン遊び(壊れたハイエースの上から飛び降りる遊び)をやっている頃にこんなカッコいい音楽やバンドがあったのか!?』という衝撃を与え、リアルタイムから遡ってVISUAL ROCKを掘り下げる直接的なきっかけを作った、D'ERLANGERが1989年にリリースした1stALUBM『LA VIE EN ROSE』の1995年再発リマスター盤『LA VIE EN ROSE with Remastered』について語らせていただきます。
VISUAL ROCKのみならず、90年代以後のJ-ROCKの礎を築いたと言っても過言ではなく、インディーズ作品でありながら凄まじい売上を誇ったこの歴史的マスターピースに関しては各所で語られているし、リアルタイムで衝撃を受け自分以上に思い入れを持っている方も多い筈なので、今回は作品自体に加えて、この95年再発のリマスター盤にフォーカスを当てて語りたいと思う。
まず97年春に哲朗少年と兄の幽閉がD'ERLANGERというアーティストを知り、この『LA VIE EN ROSE』再発盤を入手するに至った経過を説明すると、当時購読していた宝島社が発行していた『BANDやろうぜ』(通称:バンやろ)誌上にて『ギタリストが選ぶ名盤』という特集が組まれていて、既にPENICILLINやROUAGEをはじめとする当時の現行VISUAL ROCKに傾倒していた二人は当然の如く、そのバンドのギタリスト達が何を選んでいるかに着目。
第2回でも取り上げたPENICILLINの千聖氏はVan Halen『Van Halen』を選びそのギタープレイの魅力について語り倒していた一方でROUAGEのギタリストRIKA氏はD'ERLANGERという初めて名前を眼にするアーティストの『LA VIE EN ROSE』という1989年リリース作品を選び、寄せたコメントは『ただひたすらカッコいいです』という一言のみで、何だか良く解らないがこれはヤバそうだという予感を誘った。
かろうじて記事中の情報からギタリストの名は"瀧川一郎"という事と、現在は『LA VIE EN ROSE with Remastered』というタイトルで再発されていることを把握し、そのまま同誌のページをめくっていると"CRAZE"というバンドの記事で、そのギタリストとして"瀧川一郎"の名前を発見する。
CRAZEの名前は、Zi:KILLのベーシスト成一氏とこの連載の第3回で紹介した『HERO』でドラムを叩いてた菊池哲氏が在籍しているという情報でなんとなく認識はしていたが、なんとそのギタリストがRIKA氏が推薦するD'ERLANGERの元メンバーだということで点と線が繋がり、必ずD'ERLANGERは自分たち好みのバンドだという事を確信、当然ながら後に手を出すこととなるCRAZEは自分が人生で最も影響を受けたJ-ROCKバンドの一つとなり語りたいことが山ほどあるので、いずれ取り上げさせてもらうとして、そこから程なくして、兄が地元愛川町のショッピングモール・コピオ内にある久美堂にて買ってきたのが今回取り上げる『LA VIE EN ROSE with remastered』である。
このD'ERLANGERの記念すべき1st ALBUMは1989年2月にDanger Clue recordsからリリースされインディーズ作品ながら30000枚という売上を記録し、1990年2月のメジャーデビュー~同年11月に解散した後の91年4月にメジャーレーベルのBMGビクター・アリオラから再発されていて、僕らが初めて触れたのは95年4月にアリオラレーベルの初期作品を安価&リマスター再発企画でリリースされた盤である。
企画の主旨通り通常¥3000が定価の場合が多いメジャーレーベルのCDだが、¥2000と中学生の僕らでもお年玉の残高や小遣いを切り崩して、なんとか突発的に買える金額だった本作は音源のリマスターに加えて、オリジナル盤には無かった90年代前半にロッキンオンジャパン誌にてVISUAL ROCKを多数取り上げる冒険をしていた市川哲史氏と、当時FOOLS MATE誌面で名前を見掛けていた荒川れいこ氏によるライナーノーツ、簡潔なバンドヒストリー及びD'ERLANGERをはじめDEAD END、AION、DIE IN CRIES、DER ZIBET、Jackson Joker、Valentine D.C etc...アリオラレーベルのDISCOGRAPHYも同封されており、第1回で取り上げた氷室京介『SINGLES』同様に、情報を渇望している僕らにとって彼らの軌跡やメンバーの近況を知り得る貴重なアーカイブともなった。
そしてCDをコンポに入れプレイボタンを押して流れてきた不穏なSE~『LA VIE EN ROSE~』の呟きと共に始まる97年当時でも全く古さを感じさせないどころか、今現在自分たちが夢中になっているVISUAL ROCKの魅力は此処に集約されていると言わんばかりの狂気と淫靡さ(褒め言葉として)軽妙軽薄な恋愛観をはらんだリリックと、SADISTICAL PUNKのキャッチコピーに相応しい攻撃的ながらもメロディはキャッチーな楽曲の数々、その世界観、それは10曲で30分弱という収録時間が示すように徹底的にソリッドで無駄な要素が無く、ブックレットに記載されたメンバーの出で立ちも派手さとシックさを兼ね備え、トータル的に最強のバランスで成り立つサウンド&ビジュアルに一発でやられてしまった。
話をライナーノーツに戻し、バンドの簡易的なヒストリーを読んで、やはり衝撃を受けたのは90年のメジャーデビュー時のラインナップが88年に揃い、89年初頭に『LA VIE EN ROSE』リリース→翌90年2月にシングル『DARLIN'』でメジャーデビュー→同年11月に解散という彼らが僅か2年足らずの間に数々の伝説を残し短い時間を駆け抜け散っていったという事実だ。
97年当時に13歳の哲朗少年にとっては89年や90年というのは遥か昔の話であり、冒頭にも書いた通りオリブの園でターザン遊びをしたり、地球戦隊ファイブマン、特警ウィンスペクター、トランスフォーマービクトリー、魔神英雄伝ワタルなどのテレビ番組に夢中になって現をぬかしている裏で、D'ERLANGERが『LA VIE EN ROSE』の様な作品を残し、メジャーデビューから僅か9か月で解散していたと考えるとえもいわれぬ悔しさを感じつつ、この時点で哲朗少年にとってはD'ERLANGERというバンドは自分が知らぬまに過ぎた歴史上の存在であり、誇張でも何でもなく紛れもない"伝説"だったのである。
それから20数年経ち、その伝説は現存しつコンスタントに新作を発表し、ほぼ再結成後の楽曲で構成された現在進行形のバンドとしてツアーを繰り広げている。
もしタイムマシンがあったら、97年の山田兄弟に信じて貰えっこないだろうがその事を伝えにいきたい。
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