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現代の経営課題を30年前の書籍から学ぶ
この投稿はおよそ1,800文字。3〜4分で読めます。
30年ぶりの再読
ヤン・カールソン著『真実の瞬間』を読みました。
この本は1990年3月に日本で第1刷が発売されています。
最前線従業員の15秒の接客態度が、企業の成功を左右する。
その15秒を”真実の瞬間”と呼ぶ。
発売当時、このフレーズが話題になりました。
ぼくも発売直後に読んだ記憶があるので、
およそ30年ぶり!の再読です。
『真実の瞬間』の概要
ぼくの手元にあるのが、2021年12月20日発行の第59刷。
ロングセラー本なので
読んだことのある方も多いと思いますが、
簡単に内容を紹介します。
デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの
3国共同経営であるスカンジナビア航空(SAS)。
17年間連続して収益をあげていた同社も、
1979年〜80年は停滞して3000万ドルの赤字を累積。
そんな苦境のなか、子会社等で実績を残した
ヤン・カールソン氏が1981年社長に就任。
従来のピラミッド機構から、
分権化された顧客主導型へ転換することで、
わずか1年で黒字回復させた経営ストーリーです。
現在の経営課題へのヒント
内容を読み返してみると
2023年現在、多くの日本企業が取り組んでいる
経営課題を解決するためのヒントが溢れていました。
経営課題
社員に意欲的に主体的に働いてもらいたい
前例にとらわれず、積極的に新しいことにチャレンジしてもらいたい
長くなりますが、
ポイントと思う箇所を引用します。
必要なのは戦略的思考”ヘリコプター・センス”つまり、高所から細部にとらわれずに地形全体を把握する能力だ。変化を理解し、方向づけを行う能力が、有能なリーダーには不可欠である。今日のビジネス・リーダーは、財務や生産、技術だけでなく、人的資源も管理しなければならない。明確な目標と戦略を策定し、それを従業員に伝え、目標にそった従業員教育を行えば、リーダーは柔軟で、革新的な企業体質を培う健全な職場環境をつくることができる。したがって、新しいビジネス・リーダーとは、他人の意見の聞き役、意思伝達者、人材教育者であって、自らすべての意思決定を行うというよりは、むしろ適正な企業環境をつくり出すことのできる、人々をやる気にさせるオープンな経営者である。
分権化した機構を円滑に運営するには、中間管理職の職能が不可欠である。現場従業員の意欲を盛り上げ、業務活動をサポートするには、指導、情報伝達、批判、賞賛、教育に熟達した、見識ある中間管理職が必要だ。
私は本書で、中間管理職と現場従業員に総合戦略を伝えることについて、繰り返し述べているが、総合戦略は、彼らが分権化された企業で業務を適正に遂行するための一つの武器なのだ。
成果に対するより適切な報奨は、明確な責務と信頼を与えることだ。才能のある人間にその力を発揮させるのは、経営者にとって最も困難な課題である。形式的な昇格で報奨するのは、自分の無能さを認めるようなものだ。
結局はスカンジナビア航空の将来を左右するのは、人間なのだ。
多くのリーダーが自社の分権政策はすでに実施されていると信じて、「君たちはもう自分たちで意思決定ができるんだ」と従業員に語りかける。しかし私は、あなた方は本当に従業員に責任と権限委譲したいのか、と問いたい。彼らが真に分権化を行い、従業員が結束する目標を立て、それを伝えないかぎり、リーダーが本当に権限を委譲したことにはならず、従業員はいつまでたっても、問題の大小にかかわらずリーダーに頼らざるを得ない。従業員は、目標も戦略も知らないために、自分の決定の成否を判断できないのだ。意思決定の前提条件である情報を与えずに、決定権を委譲してもまったく無効である。
「時代の風雪に耐えた名著からは、いつまでも学びが得られる」
今回そのことを再認識できました。
追伸
スカンジナビア航空(SAS)は2022年7月5日に、
米連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請してたんですね。
私は企業経営について、駆け足でさらに新しい教訓を学んでいた。目標を達成すると、成功のとりこになってしまうということだ。
わかっていても、同じ過ちを繰り返してしまう。
人間って面白いですね。
ディアログ合同会社 小川剛司(つよし)
「学びをよろこびに、人生にオーナーシップを」
美味しいものを食べて、次回の投稿に向けて英気を養います(笑)。