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『過ぎた時間はどうにもならないけど お金はどうにかしようとすればどうにかなるから』

4月16日現在、残り1日だけど既刊全巻無料公開しているので(4/16 23:59まで実施)、マンガ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』の話。
タイトルは5巻118ページより引用。この作品の中で一番響いた台詞。

テレビアニメ放映されたので大きく名前は広まったけど、面白くて大好きなマンガだからもっと読まれてほしいので、レコメンド文になるかはわからないけど、自分が好きなところを書きます。


★推しがいるすべての人へ、は正しいか?

自分が読み始めたのは、1巻発売直後に地下アイドルとその女ヲタが主役のマンガが面白いって話題になっていて、自分も同じ立場だから気になったのがきっかけ。

もう4年前で驚いた。

基本的にはアイドル、しかもチェキや握手とか接触可能な規模での現場でのあるあるがこのマンガを構成する大きな一要素だから、それが分かるからこそ面白いと思っていた。
だから原作・アニメともに宣伝でよく使われている、推しがいる全てのひとにオススメ、的な触れ込みは正しいのか?と疑問に感じていた。
「アイドルのオタク」でも、メディア出演がメインだったりライブ会場もアリーナクラスのアイドルが推しである人には、チェキの距離が遠いとかレスが来ないっていうあるあるは通じないだろうし。

けれどそれだけだったら、ここまでオタクの共感を得られたうえでのバズりは多分起きていなかった。
この物語の主題は、たった一人だけの推しと出会って、好きが始まって、加速していく感情と、そこから生まれる「推す」という行為であり、それはあらゆるジャンルのオタクにとって普遍的なものだ。
ステージと客席という飛び越えられない(はずの)一線を挟んで関係性を築いていく難しさや面白みも、それがたとえ推しからは自分が認知されないような規模の現場であっても、多くの人が味わっているのだろう。
そのあたりがコミカルに、アイドルもオタクも誰も悪役にしない(ただし気持ち悪くはある)カタチで描かれているから、マンガがアニメ化するほど話題になり、さらにその芯の部分が改変されなかったからアニメも支持されたんだと思う。

それでもアニメやゲームなど二次元に推しがいるオタクは、またちょっと話が違うのではと思っていたら、その差もしっかりネタにされているのがすごいところだし、二次元オタクのあるあるもめちゃくちゃ共感できた。
アニメでは未登場のエピソード(原作6巻収録)にて、えりぴよが二次元のアイドル推しの友人・美結に頼み込んでChamJam現場来てもらったシーンでの、

えりぴよ「これが舞菜の握手券だから」
美結「これ1枚いくらするの?」
え「1000円」
美「やっす! こっちは当たるかも分からないイベントに応募する為に2万近くする円盤積んでんのに!?」
え「コスパ良くてすみません…」

は、どちらの目線でも本当に共感しかなかった。地下現場に慣れてしまうと、アニメイベントの参加までのハードルの高さに発狂しかけることがある。
推しがいるからいくんだけど。


★好きなエピソード

アニメでは全12話で1~4巻の話をほぼ原作に忠実に映像化されていたけど、個別のエピソードではいくつかカットされている。
そのひとつが、4巻収録第23話。

アニメ最終話で描かれたアイドルフェス直前~当日に、文が加入当時からのことを回想する話。
最初はグループのセンターに立ちたかった文が、れおという絶対的センターという存在を認めたことで、グループ内での自分の立ち位置を見出す、そしてそのれおも当然センターにいることには思いがあって……というエピソード。

自分はグループアイドルだとセンターよりも端や後列にいるメンバーに惹かれがちで、さらに「グループ」として頑張る女の子たちの姿にめちゃくちゃぐっとくる。だからセンターを巡る思惑や、ChamJamがグループとして全員で武道館を目指すという意志が強く見えるこの回が、すごく好き。
必ずしも希望通りではない自分がいるべきポジションで輝こうと頑張る文の健気さ必死さに、もし自分がこの物語の中でChamJamのオタクやるとしたら、文推しだと思うくらい惹かれる。
それと同時に、今はセンターながらも前のグループでは報われない経験をしていて、それでも腐らず驕りもせず、可愛く優しく真面目に努力し続けるれおが、物語の読者という立場からは殊更健気に見えるから、メタ目線ではれおが一番好き。

あと、眞妃とゆめ莉の百合的な関係はアニメでも度々クローズアップされていたけど。
他グループのアイドルであり眞妃の従姉妹という当て馬が現れたり(3巻~)、
そのグループ内でメンバー同士の百合営業を試みているメンバーがいたり(6巻)、
優佳と文が何かとふたりで遊びに行ってたりと、百合が香る描写は原作でも多いから、推し武道のそういった部分に惹かれた人にも是非原作読んでほしい。


ほんのいくつか不穏な匂いのする伏線を張りつつも、基本的には穏やかにコミカルに展開していくので、肩肘張ることなく気軽に笑えるマンガです。
アニメ版見た人見てない人、推しがいる人もいない人、みんなにオススメです。

もちろんアニメ版もオススメ。
原作読んでからChamJamのライブシーン見ると、7人が歌って踊ってることに、それだけで感動するはず。

https://fod-sp.fujitv.co.jp/s/genre/anime/ser5a87/


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