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詩集

24
心の赴くままに詠います。
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記事一覧

月と私と秋の道

水色の宙を見上げたら 真昼の月が歌ってた ファンキーだね 君と同じビートを刻み 走り抜ける秋の坂道 一番好きな季節の中を 色葉いろの風に乗り 君と並んで天高く 何処までも  何処までも

神様の涙

  雨の音で目覚めた朝 しばらく横になったまま 雨音の隙間からたなびく ヒグラシの声を聴いていました 天から落ちてくる雫は 神様の涙だと 昔 何かで読みました あまりの激しい雨に 神様のことが ちょっと心配になり カーテンを開き 強く打たれる木立を見つめる ほどなくして雨はやみ 花々が気になりテラスに出ると 雫のジュエリーが ラベンダーを輝かせていました キラキラと 音が聴こえてきそうなほど輝く 瑞々しい世界 真っ赤なハートは 天からの

夢の花園

夢の中 指先で触れるものすべてが  色鮮やかな花になり 甘い香りが漂う中 次から次へと花を咲かせていた 夢のように 出来たらいいのに・・・・・・ 悲しんでいる人の心に触れ 美しい花を咲かせられたらいいのに もう一度 夢の世界に戻りたくて 瞳を閉じ まどろむ朝

幽玄の夜

つま先まで紺碧の幕が降りると 微かに一番星が輝き始めた 薄雲の向こうで  月が頬杖をついて ぼんやりとこちらを見ている 「いつも明るくなんて出来ないよね こんな日があってもいいよね」 届くはずもないのに 何となく 手を伸ばし 月の頭をそっと撫でる 憂いを帯びた静かな夜の丘 透き通る風が 月光のベールを引き寄せると 目の前を小鹿が駆け抜けていった 夜空を飛ぶように 煌めく幻想のカケラを散りばめながら 幽玄の世界に居るような錯覚の中で 瞬間の残

ニュームーン

ほんの少しの優しさが欲しくて 小さなお月様をふたつ買いました ニュームーン 高冷地で咲く花 元気そうな苗をひとつ選んでもらい もうひとつは自分で選ぶことに 密やかな姿に惹かれて  一番小ぶりで控えめな子を選びました そのせいか 何も言わずに100円引いてくれました その子が真っ先に花を咲かせました 思った通り  誰よりも優しいお月様でした 今宵は新月 夜空にお月様はいないけれど 満天の星空にニュームーンをかざし 私だけの満月の夜空を作ってみる

翠雨

鬱蒼と茂る木々 蝉時雨が空間を埋め尽くすように  隙間なく響きわたっていた ベンチに座って瞳を閉じていると 忙しそうな羽音が耳元をくすぐる そっと瞼を開けると  真っ白な日傘の中に レースのような羽衣を纏った青いトンボがとまっていた このままじっとしていよう・・・ 暫くすると  すぅっと日傘を離れ 視線を導くように目の前の柵にとまると 玉虫色に輝き始めた じっと見つめる柵越しの水面に  水の輪がひとつふたつ広がり 水の精が踊り始める 夕立・・・

記憶の砂時計

ガラスの隙間から ひと粒 また ひと粒 零れ落ちる刹那の時 砂と共に流れゆく出来事 いったいどれだけのものを 記憶に残すことができるのでしょう 忘れてゆくもの 忘れられないもの 忘れたくないもの 忘れてはいけないもの 何が残り  何が消えるのか・・・・・・ 無意識の領域で選択され 書き換えられる記憶の意味 意識の及ばぬところで繰り返されるなら せめて今この瞬間 幸せを強く感じていたい 過去でも未来でもなく 永遠の現在にしか生きられないのだか

アイ

愛にカタチがないように 見ようとしなければ見えないものが この世界にはたくさんあります 愛のまなざしで見つめ 心がほっこりするような何かを感じた時 愛のカタチを見たような気がします eye (め/ひとみ/まなざし) 相 (みる/うらなう/すがた) 逢 (あう/であう/むかえる/) 哀 (あわれむ/かなしい/せつなくて) 和 (やわらぐ/おだやか/のどか) 曖 (かげる/おおう) 娃 (うつくしい/みめよい) 藍 (あい/あいいろ) Ay (トルコ語

愛月~1,000mの愛~

生まれてくる時間と場所を間違えた。きっとそうだ、そう思うことにしよう。  東京生まれの東京育ちでありながら、心も身体も永遠に馴染めそうにない感覚。それはまるで時間軸の歪んだ不思議の国を彷徨っているようでした。 東京は朝早くから夜遅くまで活動し一日が長いのに、時間がとても早く過ぎていくように感じられました。いつも何かに追われ、いつも何かを追いかけ、走り続けているうちにどんどん月日が流れて行きました。  もしかしたら大切なものを見逃してしまっていたかもしれない。 時々漠然とした後

瞑想浴

バスタブの底に ゆっくりと身体を沈め 水のヴェールに包まれて  水の音を聴いていると 胎児の頃に戻ったように安心して いつの間にか無心になる 肉体の衣を脱ぎ  裸の心を水に浮かべて 無重力にしてあげると 思考から離れた心は  自由に水面を漂う ふわり ふわり 羽根のように軽い心 水の底に横たえた身体を起こすと 肉体に戻った心は 急にずしりと重くなる 心の重さは 体重の何%あるのだろう・・・ 計り知れないひらめきとともに 瞑想から目覚める

香の簪

春とすれ違い 夏の中に飛び込んで行くような向かい風 南の風6m 彼方から夏の始まりが運ばれてくる 生まれたての風に揺れ開いた 一輪のジャスミン 瑞々しい甘い香りを摘み取り そっと髪にさす

空色の星

重たいものはすべて下ろし 余計なものは何も持たず 小さな種に銀色の羽だけを纏い どこまでも高く どこまでも遠く飛んでゆく ふわりふわり空に溶けるように飛んでゆく 空から色をもらったような花 ブルースター いつかどこかの大地に舞い降りて 空色の星を輝かせるのでしょう あなたのようになれたらいいのに・・・・・・ キラキラと煌めきながら 風と戯れるあなたが羨ましくて 私も心の荷物を下ろして  ほんの少し軽くなる 軽くなった心で 陽だまりのテラスで背伸

半夏生

鏡の中を怪しげに 波うつ雲が流れてゆく 天から毒気が降ると言われる半夏生 垂れさがる曇天から 雨と共に降りてきそうで 思いつめた白い花は 悲しくうつむく 迷信にとらわれまいと 筆をとり いつになく茜色の紅をひく 鏡の中 鈍色の空にほころぶ赤い花 紫陽花が咲く浴衣の衿を抜き まとわりつく曖昧な気を 団扇を揺らし振り払う 毒気なのか 暑さなのか 分からないまま 天の重みに心憂える半夏生

すみれ色の夕暮れ

すみれ色の空のような やさしい人でありたい 多くを望むことなく 必要な分だけ糧を頂いて 小さな花を育て あとはただ 夕凪の心で微笑んでいたい