美術館、そして海へ(短歌)
桃香る居間に時計の針の音ますます映えて夏は憂れゆく
そら色の歩道橋ごと舞い上がるマグリットへの憧れだけで
控えめなシャネルの香る指先が紅いチケットちぎる確かさ
不確かなデジャヴに遭って立ち止まるパウルクレーの光と影と
睡蓮のほとりで夢で見た人がわたしを見ては何かつぶやく
あの夏、何と別れてきたのだろうヤマユリだけが鮮やかな路
中国茶の開ききるまでを凝視する非常に静かな一分間
子どもより「降ります」ボタン早く押す私の中の小さな悪意
大人でも子どもでもない顔をして浜に流れるイーグルス聴く
帰属することで心は満たされてビニールシートが海風に舞う
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