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胎内の街 (短歌)

緻密に緻密を
かさねたスライドの
いつかの時間わたし以外の

ナホトカの海の
白飛びする画像
見知らぬ人の時間の流れ


色褪せた波間にうまれ
消える泡
わたしのものではない時間


奔放なヒマラヤ杉の
庭にいる
少女の髪でひらく花々


カムチャツカの姉妹が消息を断つ
小説を読む
昨年のこと


うつくしい世紀末の
裏路地で
周波数を移動させる人


つながらない街の
落日をゆく車
街はわたしの胎内にある


今はただオゾンの皮膜に
甘えたい異国のラジオを
傍受しながら

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