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妄想書簡 東京府囚獄掛斬役

父へ

お体変わりないでしょうか?こちらは最近めっぽう寒くなりました。

さて、この髷(まげ)無き私が明治政府に任命されました。
この手紙で語るのは野暮かもしれません。
最初の仕事を私はまだ忘れることはできません。
ただ、斬るたび斬るたびに一撃で手早く行えてしまう。
この人間の性は恐ろしいものです。
私は人を斬るのはもう勘弁なりません。
でも、誰が斬れるのか、と思うと誰にもできない。
こうして言い訳をいうことで正当化しようとしているのも重々承知です。
生きるためには…
今回はこれ以上書けません。
また、茶菓子でも頂きに帰ります。

東京府囚獄掛斬役 山田浅右衛門吉豊

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