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小説 Like a『春色』バトルフィールド ♯16

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 俺が比呂のことを好きだと思ったのは、中学一年生の時だった。


 その日は無茶苦茶に熱い日で、セミの声がいつもよりも少なかった。35℃以上になるとセミも熱中症になるらしい、というのをテレビで見た。

 その上うちの中学は一部の教室を除いて冷房がなく、それはもう地獄と呼んで差し支えないような状態で、天井で力なく首をゆっくり振っている扇風機が自分の方を向くたびに、声が漏れそうになるほど気持ちが良かった。汗をかいた腕に何度もノートが貼りつき、苛立ちながら破れないようにゆっくり剥がした。居眠りすることもできずにほとんど意識を手放した状態で国語の授業を受けていると、板書のチョークの音も、汗を拭いながら時折息をつきながら何とか授業を続ける先生の声も、ひどく遠くから聞こえた。真っ白な日差しとベタつく湿気が教室を満たして、38人分の不満が音もなく響いた。

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