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ミュージカル 『悪ノ娘』

発売同時に完売公演が多数でてきたこの作品。先行抽選でチケ戦に敗退。一抹の望みをかけて挑んだ一般発売で、どうにか土曜公演のチケットを手に入れました。

仕事を半日で上がって、そのままダッシュで東京に向かいます。
舞台は連日満員だそうで、行く前から期待は上々。
原作『悪ノ娘』の物語は原曲を知っている程度。小説を読んだわけではないので、詳細は知らないままでの観劇でした。

スペゼロは一ヶ月前に『カラクロ』で訪れたばかり。音響も良いし、舞台が広いので、色々と圧巻だろうな…と思っていましたが、期待以上でした…!!まずね、この人数が誰一人欠けることなく、舞台上で動いているのがすごい。かなりの大人数の座組だったと思いますが、この人数でのミュージカルはやっぱり迫力が違う。そして、誰も彼も歌がうまい。そりゃそうか、本業の方がいらっしゃるようですし…。でも、動きながら(踊りながら)ミュージカルナンバーを歌うのってプロでも難しいと思うんだよなぁ。本当にすごかった。
そして、ビジュアルが兎に角すごい。
あんな豪奢なドレス、着せやすさと機動力に優れていなければならないなんて、一体どうなってるの…?その他、二次元から飛び出してきたキャラクターが沢山。目が足りない。

正直、原曲を聴いた当時(何年前なんだ…?)は「ボカロに良くある物語系かぁ」と、そこまで刺さらなかったこの物語。今回、舞台の上で生身の人間が演じて、人々の悲痛な叫びや登場人物の心の機微が具体的に表現されることで、ヒューマンドラマとして完成度の高さに圧倒されました。原曲という骨に肉付けがされ、血が通ったような印象です。(決して原曲を貶める意図はございません。原曲あってこその物語ですからね。)

ドラマとしては勿論のこと、演劇作品、エンタメとしてもとても面白かったです。映像を使わずに音響や照明でシーンの情景を作り上げているので舞台装置は至ってシンプルですが、だからこそ想像力がかき立てられる。
黄・青・赤のフラッグひとつで表現できることの多さに驚きました。演劇、これだから面白い。

さて、以下好きなところをいくつか抜粋したいと思います。
・レオンハルトお父様
推しの瀬戸さんが演じてくださったレオンハルト様。出てきて真っ先に思いました。

待って、あまりにもビジュが強過ぎん??

事あるごとに言ってしまうんですが、彼、体躯がドストライクなんですよ…。長身だから何着せても似合う。しかもめちゃくちゃ赤が似合う。
そんな今回の瀬戸さんの役どころ、レオンハルト様。ひときわビジュが良いし、衣装も相まってすごく存在感がある。舞台上に居るだけで目を引くお方です。
初めてのお父様役ということで、期待にわくわくしながら観劇。まだお若い方だから、「お父さん」の役をどう落とし込むのだろう…と思っていましたが、めちゃくちゃ素敵でした…!!
威厳があって、娘、息子思いの父親。親衛隊の隊長らしく、豪傑さがあって、軽やかさがある。
瀬戸さんの演じる役の中でも、「元気で明るい系」と「神経質系」は一等大好きなんですが、今回のレオンハルト様はそういう意味で美味しいキャラクターでした。貫禄と威厳、気難しさの中に余裕と茶目っ気が入っているレオンハルト様…こんなお父さん欲しい。どう考えてもこの作品の推しです。
殺陣もめちゃくちゃ格好良くて、観られて幸せでした…。
そして、めちゃくちゃ歌も上手かった…。ミュージカルは初挑戦だと仰っていたけれど、何故今まで歌っていらっしゃらなかったのか…!!すごく綺麗な歌声で聞き惚れました。
少し役者様に偏った感想になってしまいましたが…仕方ない、瀬戸さんが演じるレオンハルト様、本当に格好良かったんです。

・ジョセフィーヌ(馬)
超有名な歌い手さまの初舞台、ということですが…まさか、ただの馬にこんな見せ場が用意されているなんて思いもしませんでした笑。流石のエンタメ力…!
有名も有名な超実力派歌い手様ですから、今更「歌がうまい!」なんて野暮な感想は控えさせていただくとして…彼の台詞の読み方や間の取り方が好きでした。高貴でどこか滑稽なんです。バラを背負って歌ってしまうし、エンタメの権化。
そして、忘れちゃいけないのが、後半の馬の殺陣!(殺陣と言って良いのかかはこの際置いておいて)ジョゼフィーヌさん、めちゃくちゃ強い。兵士たち相手に足技を繰り出して圧倒していく姿、最高に格好良かったし最高にコミカルでした。暴れ馬に近づけない兵士の皆さんの動きが揃っていて、ダンスを観ているかのような楽しさがありました。作品のジャンルを問わず様々な殺陣を観てきたけれど、その中でも印象に残るシーン。楽しかった。

・緑の女
前述したように、私は原曲程度の知識しか無かったので、「緑の女」がどのようなキャラクターか知らないままでの観劇でした。モチーフはあの人気キャラクター、初音ミクさん。となれば、そりゃあきっと、非の打ち所の無いような、おしとやかなキャラクターなんだろうな…と勝手に想像しておりましたが、違った。ミカエラちゃん、あんな破天荒なキャラクターだったとは!
彼女の声が、完全に二次元から飛び出してきた声で、圧倒されました。言葉を選ばずに言うならばヘキに刺さるキャラクターです。ただただひたすらに可愛い。
そしてその友人のクラリスさんも良かった…。少々厨二病らしさが滲んでいて、色々な意味でそわそわしましたw平成のオタク感がすごい。いや、この作品が書かれた時代を考えると、彼女はむしろ最先端のオタクだったのかもしれない…。兎にも角にも、かなり二次元寄りに振り切っているキャラクターたちで、この子たちが作品の世界観作りに一役買っているな、という印象です。可愛かった…。

・青の国
残念なイケメンキャラ、ということは伺っていましたが、本当に残念なイケメンで始終笑いが止まらなかったカイルさん。マスクつけて乗り込んでみたり、突っ込みどころは満載なのにちゃんと格好良い、狡いキャラクターです。
そしてそんなカイル様のおつきの方、アルカトイル様。はい、推しです。推しが演じるキャラクターです。
紳士で穏やかで主君に忠誠を誓っているアルカトイル様。個人的に、千葉さんにこういうキャラクターを演じさせたら、右に出る者が居ないのではないかと思っています。柔和で穏やかな表情なのに、凜としていて武人然。役者様とキャラクターの境が曖昧になってしまうくらい、自然に演じられてしまうキャラクターです。
今回も安定感抜群の演技で、安心して観劇できました。殺陣も騎士らしい正統派の格好良さがあるし、大人数の合唱でもちゃんと聞こえる美声だし。文句のつけようもありません。
強いて欲を言うのであれば、とっても歌がお上手な方だから、彼のソロ曲も聴きたかったな…って事ぐらいでしょうか。安心、安定、信頼の千葉さんのお芝居、大好きです。大好きです。(二回目)

長々とすみません。
以上、連ねたらキリがないほど、素敵なシーンが沢山ありました。他にも色々刺さるところが多々あるものの、とりあえずこのくらいにしておきます。
今回の舞台、「ミュージカル」と銘打っているだけあり、音楽がとても良かったです。それもそのはず、『ピオミュ』で素晴らしい世界を見せていただいた和田さんでした。オタク、好きに決まってる。知っている楽曲も、舞台オリジナル楽曲も、どれもが個性豊かで強烈な光を放っていて、ミュージカルの良さが詰まっていました。観せる楽曲もあれば聴かせる楽曲もあり、2時間半があっという間!
そして、改めて、『悪ノ娘』という原作の持つ魅力を目の当たりにしました。すごく考え抜かれた世界観の上で、数々の伏線が絡まって生まれる壮大なドラマ。この舞台を観劇するまで、『悪ノ娘』を音楽としてしか聴いていなかったのが悔やまれます。とんでもない作品だったんだな…。

何度でも繰り返しますが、楽曲からドラマを生み出し、登場人物の心の機微を纏わせたこの舞台。観劇後、一つの大国の歴史を見たような気がしました。文句なく、面白かった…!

そんな素敵な作品に出会えたことを幸せに思います。素晴らしい時間をありがとうございました。

ミュージカル『悪ノ娘』
2024.3.16(土)夜
こくみん共済coopホール スペース・ゼロ



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