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【しばたさとこ島】から10年

5月25日は新譜のリリースと再発が重なっていた
細野晴臣氏の【HOSONO HOUSE】が50周年記念盤重量版で再発、ceroの5枚目のアルバム【e o】のリリース、そして柴田聡子さんのファーストアルバム【しばたさとこ島】が再発された
jet setの通販で購入予定だったヴァイナルと一緒に購入し、一通り聞きつくした
特に感慨深かったのは柴田さんの再発だった
今回のこのヴァイナルは2012年6月5日にリリースされた柴田さんのファースト・アルバムリリースから10周年を記念して10INCHヴァイナルとCASSETTE TAPEでリリースされた
10INCHヴァイナルにはライターの松永良平氏による新装ライナーに加え、リリースから丁度10年目の2022年6月5日LIQUIDROOM公演のアンコールの模様を収めたCDが付随していた(内容は【しばたさとこ島】再現ライブ)
このタイミングでサブスクで配信もあったので、ヴァイナルが届くまで車でサブスクで2回、家でヴァイナルで1回聞いて、今日付随されていたCDも聞いた
いろんなことが思い出されてきた
柴田さんを初めて知ったのは、職場の先輩が教えてくれたのが最初だった
「カープファンの子」という曲がいい、とCDを貸してくれた
今から10年前の私は、仕事の後に翌日が休日の日には今は無き下北のレンタルビデオ屋【ドラマ】で10枚で割引されるレンタルCDを借りまくり、今は無さそうな明大前の漫画喫茶に向けてオンボロ自転車で甲州街道を走り、到着後オレンジのiPodにゴルゴ13を見ながらCDの曲を詰め込みまくっていた
翌日は昼からサッポロビールを飲んで電車に揺られ、これから行きたいライブの予習としてiPodの曲を聞くのが楽しみだった
そんな中の1枚が【しばたさとこ島】だった
心を打ち抜かれた私は、それから行ける限りライブに行った
お付き合いをしていた彼女や友人とライブ前にお酒を飲みまくり、ライブを見ている時が私にとって当時の東京にいる最大の悦びであったように思われる
松永さんのライナーを読み、10年前の下北沢周辺のシーンの荒いけど優しい手触りとビールの匂いが蘇った
なぜ、そこまで柴田さんの曲が好きになったのだろうと改めて考えた
私はたぶん「柴田さんになりたい」もしくは「自分は柴田さんだ」というような事を本気で思っていた
あんなにマッシュルームカットが頭に溶け込むような雰囲気を醸し出し、黒縁眼鏡をかけるべき顔の輪郭でひょろっとした確かな知性をふりまき、深緑のカーディガンが着られるべくあるようなたたずまいをされていたわけで【こうありたい】と思うのは必然のようにも思う
柴田さんは北海道で御生まれになり、武蔵野美術大学を卒業後、東京藝術大学大学院を修了されている
映像学科を専攻されていたと、ご自身がされている「シャムゴットトークドリル」というインターネットラジオお聞きした(恥ずかしながらメールをお送りさせて頂き、読まれたときに【もう少しうまいこといえたんじゃないか】という後悔がうまれたのは今でも覚えている)
シャムゴットとは前方に転がしたボールを反対の手で逆側にコントロールするドリブルムーブのことで、いわゆるバスケットボールの試合で使用するスキルである
柴田さんは学生時代バスケットボールをされていたそうで、現在も嗜好されている
イースター島に行きたいという話も山形の蕎麦屋で直接お聞きした
以上のことをすべてを踏まえて、改めて私は柴田さんにはなれないと思う
間違いなく、生まれ持って生まれている方なのである
憧れや嫉みのような身近な感情はない
身近にいるようで「柴田聡子」という存在をつかむまでの距離は全く、はるかに遠い
その存在をつかんでみたという想いが生まれるときに、距離感や音楽的才能、詩、眼鏡、声がしっちゃかめっちゃかに侵入してきて、私の黒い部分をばしゃばしゃ洗い流す
そのおおらかさが心地よかったのを確かに覚えている
おそらく、当時の私は往復ビンタを柴田さんから喰らいたかったんだと思う
柴田さんの洗礼だった
付随したCDには、当時の私が感じたものは無くなっていた
同じお方で、私自身もそんなに変わったわけではないのに全く別モノのように感じた
そのことで、柴田さんに異なる想いを抱くことは無い
期待をするようなことも無い
いつまでも変わらず同じように大ファンであるし、元気で生活を送ってもらいたいと山形で心から思う
渋谷クラブクアトロの35周年記念イベントである8月の家主とのツーマンは体感しに行こうとも思っている
それぞれの時代で【今】に奇跡的にであっちゃう音楽で、私の感動するハートはまだ残っているはずである
さっきも、車で音楽を聴いて少し泣いた
いささか私も年をとったが、もう年だからと泣き寝入りする野郎になるつもりは全く無い
私がファンの作家やミュージシャンは考えながら音楽を作り続け、本を書きまくったりしている
柴田さんの【しばたさとこ島】に感動したように、どんなフォーマットでも自身が心動くことに邁進し泣きながら笑っていきたい

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