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よしなしごと


私の不思議体験の1つに「知らない声に起こされる」がある。

最初は中学生の時。

その日は偶然が重なっていた。

偶々、目ざまし時計をかけ忘れ、
偶々、母も他の家族も寝過ごしていて、
偶々、委員会の集まりが朝イチで遅刻すると迷惑がかかる

という状況で、私は夢の中で 知らない者の声によって起こされた。


何もない灰色の空間に声だけが響く。


囁きには大きく、少し楽しそうに

「起きなくて、いいの?」

と訊かれたのだ。


私は何の疑問も違和感もなく、

起きなければ、と目を覚ました。


目覚ましを掛けようとした時間より少し遅いが、
支度するには十分な時間であった。

私は滞りなく委員会に参加できた。



そして、この後、体育祭や部活の試合、何気ない平日

そこまで頻繁ではないが、この声は私を起こした。


声に聞き覚えはないが、いつも少し楽しげに

「起きなくて、いいの?」

と訊かれる。


たまにイタズラなのか、途轍もなく早く起こされたりするコトもあったが、

私はこの声に起こされるのは嫌いではなかった。



そして、自然と声に起こされるコトもなくなった。


不定期でそこまで頻繁ではなかったので、いつからなのか分からないが

声はしなくなってしまった。



それから何年もして、久しぶりにかの声を聴いた。

相変わらず
「起きなくて、いいの?」

の ひと言だか、私は旧友に会った気分で懐かしかった。




例えそれが、起床時間と程遠い真夜中であったとしても。



また暫く間が空いている。




次は、きちんと起床時間に起こして頂きたい。