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インターネット世代の意見が法を作る、台湾のデジタル民主主義

vTaiwanとは、台湾発の合意形成プラットフォームである。若者世代が意見を交換し合うSNSであり、その意見は立法にも反映されるというのだ。

インターフェースは極めてシンプルで、誰でも議論のトピックを作成でき、それに対してupvote/downvoteを表明できるというものである。これだと普通のSNSのように聞こえるが、ポイントは"リプライできない"という点にある。これにより荒らしへのモチベーションを劇的に下げるのだ。

もう一つのポイントは、人々の意見がクラスタリングされるという点である。似たような思考の人たちが集まり、意見が集約される。対立するグループのどちらからもupvoteが得られる意見が上位に表示され、自然と対立グループの溝が埋まっていくという仕組みである。

vTaiwan上で議論された象徴的なトピックとして、Uberをどのように規制するべきか、というテーマが挙げられる。当初Uber賛成派は反対派の2倍を上回っており、その溝は非常に深いもののように思われたが、ここで奇跡が起こる。より多くのサポーターを得るため、両陣営が誰もが大事だと認めるような論点 - 例えば「自家用乗用車は登録されるべきである」「雇われドライバーが複数のライドシェアプラットフォームに参加することは許されるべきである」- をポストし始めたのだ。賛成派と反対派は互いに歩み寄り、Uberとタクシー会社が同じ土俵に立ち、消費者を保護しつつもより多くの競争を生み出すにはどうすればよいかというコンセンサスを生み出すようになったのだ。オードリー・タン氏自身もその提案を受けて、Uberやタクシードライバー、専門家と直接話し合い、政府はvTaiwanで議論された新しい規制を採用するに至ったのである。

当然ながら、まだまだ課題点もある。政府が結果を取り入れなければならないということはないし、デジタルプラットフォーム上で意見が生まれるのはデジタル関連のイシューがメインであり、年金問題や労働者問題といった問題に切り込めていない。また「反対するか?賛成するか?」の2値分類とも捉えかねられない。それではtraditionalなvotingシステムと同じである。このようなオンラインプラットフォームが、今後どのように"リアルな力"を得ていくのかに注目したい。

内容は以下のブログ記事を日本語に翻訳し、まとめ直したものとなっております。
MIT Technology Review
The simple but ingenious system Taiwan uses to crowdsource its laws


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