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リスクの直観的な理解 バスで何分?

一般的な意味のリスク

ふつうは、「リスクがある」とは「損をする可能性がある」という意味で使います。いい意味で使うことはあまりないですよね。”景気が悪くなるリスクがあるので散財せず貯金しよう”とは言いますが”景気がよくなるリスクがあるから、旅行を予約しておこう”とは言いません。日常の会話でこういう言い方をすると日本語としては通じません。上の図のように、悪いことが起きるるか起きないかという2択の話をしています。

ファイナンスの世界のリスク

一方で、ファイナンス理論が扱うリスクというのは、ブレの話です。例として、バスを使って駅まで何分かかるかという話をしましょう。

あるサラリーマンが平日朝、バスで駅まで何分かかるかを測りました。その結果、平均は約10分でした。しかし細かくみると、6分以下や14分の日もあります。たぶんこのサラリーマンは「通常10分で着くし、12-3分みとけば大丈夫。なんなら8分で着くときも結構ある。10分±2分ってとこかな。」と思いますよね。この2分が「ブレ」であり「リスク」ということです。ポイントは、プラスマイナス2分というように、上下に幅を持っているということです。

では徒歩だったらどうでしょうか。

当然時間は多くかかっているので、ベースは20分ですが、ブレはたったの10秒程度です。信号が3回あるのが、全部赤、全部青だと30秒ぐらい差がつきますが、赤赤青や青赤青などのパターンもあるので、だいたい10秒みとけば、ばっちり所要時間が当たります。20分±10秒なのでリスクは非常に低いです。

このように、「キホン〇〇だけど±△△でブレる」という場合、ファイナンスの世界では、「平均〇〇でリスクは△△」といいます。

FCFのリスクとディスカウント

このnoteで取り扱うDCFの世界において、さきほどの通勤時間はFCFにあたります。
自分の明日の通勤時間は「10分±2分」⇒A株式会社の来年のFCFは「100億円±5億円」
という具合に対応します。”企業業績やFCFの予想は非常に難しく、あたらない”という批判がよく見られます。しかし、発展させて考えると、当たらないけど、当たらない具合(ブレ=リスク)が分かるなら、リスクの程度に応じてディスカウントすればいいのでは?という発想になります。

「10秒の誤差で駅に着く」というのは、渋滞のリスクや電車遅延のリスクがないので、ほぼ確実な話なのです。投資に置き換えれば、「ほぼ確実に100億円がもらえる投資」ということで先進国の国債が該当します。したがって国債並みのディスカウント(0.1-0.7%ぐらいですかね)が妥当です。1年間の投資であれば、99.5円とかで買えばいいでしょう。あまり欲張って98円で買おうとする(ディスカウントレート2.04%)と、市場の価格とずれがあるためいつまでたっても買えません。

追記 ちょっと細かいリスクの話

リスクとか不確実性という言葉を、学問の世界で正確に定義しようとすると、メジャーどころでは、フランク・ナイトの定義にしたがって、計測可能性(measurable or unmeasurable)かどうかという2分類あります。統計学で処理できるかできないかという違いです。以下の3分類を見てみましょう。①事前に確率が分かっている(サイコロのように事象が限定される)
②統計的に確率が分かっている(過去のサンプルから統計的に予測可能)
③ 推定(事象の分類ができず分析の枠組みがない)

このうち①と②はmeasurableです。未来が発生する仕組みが分かっているか、十分なデータから統計的に予測ができる事象については、その結果が分からないことをリスク(またはその分からなさの程度をリスク)と呼びます。③は分析の枠組みもデータもなくunmeasurableです。要はお手上げってことです。これは不確実性と呼びます。

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