上杉真人|ボードゲームデザイナー

職業ボードゲームデザイナー。『ボルカルス』『ペーパーテイルズ』『ダンジョンオブマンダムVIII』など。

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職業ボードゲームデザイナー。『ボルカルス』『ペーパーテイルズ』『ダンジョンオブマンダムVIII』など。

マガジン

最近の記事

実録! ボードゲーム出版社との契約交渉

世はまさに大ボードゲーム時代! 個人でボードゲームを作った結果、国内外の出版社から声がかかり、出版契約を締結することになったという人も多いと思います。 でも気を付けて! その出版契約、気軽にサインしてしまっても良いものでしょうか? 多くの場合、契約書の雛形は出版社側が用意してくれるでしょう。しかしその内容は、「このまま通ればラッキー」または「ここから作者の交渉を受けることが前提」という考えで、出版社側に有利なものになっていることもあります。 この記事では、「契約の交渉

    • 『Sapporo1876』と『Otaru1899』からゲームデザイナーが学べる3つのこと

      『Sapporo1876』というボードゲームがあります。 このゲームは Takeo Yamada 氏によってデザインされ、うちばこやさんから発売されました。 そしてその続編が、同じく北海道を舞台として共通のルールを持つ『Otaru1899』です。10月1日の発売に向けて事前登録キャンペーンが行われているとのことです。 『Sapporo1876』と『Otaru1899』は、シンプルであると同時にリッチな2人用の中量級ゲームです。高い完成度を持つこの姉妹作から、多少なりとも

      • ゴールデンボックス賞について

        2023年3月25日に、ゴールデンボックス ボードゲームアワード の創設が発表されました。 この記事は、この賞に関して上杉真人の考えを書いたものです。 賞についてまだご存知ない方は、ぜひ先にこちらの発表記事をご覧ください。 賞の成り立ちについてこの賞は、タンサンの朝戸一聖さんが発起人となり、「ボードゲーム業界の従事者を讃える賞を作りたい」という考えが出発点となって始まりました。 そのため、ゴールデンボックス賞は「すぐれた作品に与えられる賞」ではなく、「すぐれた功績を残

        • ChatGPTとボードゲームの話をしよう

          ChatGPT、とってもすごいですね。 ChatGPTにボードゲームのいろいろな話をしてもらいました。 3行でルールを説明してもらう小学生向けにルールを説明してもらうわかりにくくルールを説明してもらうなりきってルールを説明してもらう特定の文体でゲームを紹介してもらうゲームを比較してもらうゲームじゃないものと比較してもらうゲームをクロスレビューしてもらうゲームを買うよう説得してもらうゲームを買わないよう説得してもらうゲームの攻略法を教えてもらうゲームのレポートを書いてもらう

        マガジン

        • 『○○○』からゲームデザイナーが学べる○つのこと
          3本
        • ボードゲームのゲームデザイン
          3本
        • マジック:ザ・ギャザリングのゲームデザイン上の発展の歴史
          2本

        記事

          HIZURUデザイナーズノート②

          ボードゲーム『ヒイヅル(HIZURU)』のゲームディベロップを担当している上杉真人(@dbs_curry)です。 この文章は、その『ヒイヅル』という作品の制作記録の第2弾です。第1弾はゲームデザイン担当の秋山昂亮さんが執筆し、以下の記事として公開されています。 『ヒイヅル』とは『ヒイヅル』というのは、ゲームマーケットライブという配信番組の中の企画から立ち上がったボードゲームで、20人超のメンバーで協力して制作しています。 プレイヤーたちは日本のおとぎ話の主人公となり、最

          HIZURUデザイナーズノート②

          『Inscryption』をクリアした人のための攻略情報

          **この記事の内容は完全なネタバレなので、『Inscryption』をまだプレイしていないまたはクリアしていない方は読まないようにしてください。** 『Inscryption(インスクリプション)』、とってもいいビデオゲームですね。 もしまだこの最高のゲームをプレイしていない場合は、ぜひプレイしてみてください。Steam等のプラットフォームでPC版が販売されています。 この記事では、『Inscryption』を既にクレジットロールを見るまでプレイした人向けの攻略情報を掲

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          日本のボードゲームシーンの現況と展望

          ドイツのボードゲーム雑誌『SPIEL DOCH!』の2021年冬号に、日本のボードゲームシーンの特集記事が掲載されました。 この文章は、その記事が編成されるにあたって、上杉がドイツの記者から受けたインタビューの質問と回答を日本語に訳したものです。 本文では、日本のボードゲームシーンの現況と展望についての自分の考えを記載しています。 海外の記者に伝えるために、日本の状況を単純化している部分があります。また一部、日本のボードゲームシーンではなく、上杉個人に関する質問と回答が

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          あなたがボードゲームの出版契約にサインする前に確認すべきこと

          世はまさに大ボードゲーム時代! 個人でボードゲームを作ると、国内外の出版社から声がかかり、自分の作品が世界中で販売されて、印税収入で不労所得が得られる(かもしれない)というすばらしい時代になってきました。 でも気をつけて! その出版契約、気軽にサインしてしまってよいものでしょうか? この記事では、あなたがボードゲームの出版契約にサインする前に確認すべきことについて書いていきます。 1. その出版社は信頼できるかもしあなたがその出版社の名前すら聞いたことがないのであれば

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          専業ゲームデザイナーとして最初の2年で学んだ4つのこと

          I was game の上杉(@dbs_curry)です。 10年間勤務した会社を2018年末に退職し、2019年からボードゲームのゲームデザイナーとして独立して事業を始めました。 この記事では、専業ゲームデザイナーとして最初の2年で学んだ4つのことについて書いていきます。 ゲームデザイナーとしての生活ゲームデザイナーは日々どのような生活を送っているのでしょうか。 これは「学んだこと」という括りからは少しずれますが、興味のある方もいらっしゃると思うので、自分の例を書い

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          『Outer Wilds』からゲームデザイナーが学べる3つのこと

          『Outer Wilds』、とってもいいビデオゲームですね。 このゲームは当初、2012年に Alex Beachum 氏の在学中の修士論文として始まりました。 その後、2015年にアルファが無料で公開され、Independent Games Festival での受賞を機に注目を浴び、最終的に作り直しを経て2019年にリリースされました。 『Outer Wilds』は、まさにセンス・オブ・ワンダーの塊のようなすばらしい探検ゲームです。そこから多少なりとも我々が学べるこ

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          『マラカイボ』からゲームデザイナーが学べる5つのこと

          『マラカイボ』、とってもいいボードゲームですね。 このゲームはアレクサンダー・プフィスター氏によってデザインされました。 彼は『アイル・オブ・スカイ』『モンバサ』『グレート・ウェスタン・トレイル』『ブラックアウト香港』といった怪物級のゲームを毎年のように連発している(さらには『オー・マイ・グッズ!』のような完成度の高い小さなゲームも並行して出している)、才気あふれるゲームデザイナーです。 『マラカイボ』はその中でも氏の集大成と言えるすさまじいゲームです。そこから多少なり

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          ボードゲームのゲームデザイン:第3の柱「選択」

          この記事は、ボードゲームのゲームデザインにおける「選択」についてお話するものです。 第3の柱「選択」 おはようございます。I was game の上杉です。 このnoteでは、「ボードゲームのゲームデザイン」という名目で、現代的なボードゲームのゲームデザインについてお話します。 第3回目の今回は、ゲームデザインの12の柱のうち第3の柱である「選択」についてお話します。 ゲームというのは、単に数字の詰まった長方形のマトリクスにすぎない本題に入る前に、ジョン・フォン・ノイ

          ボードゲームのゲームデザイン:第3の柱「選択」

          ボードゲームのゲームデザイン:第2の柱「進行」

          この記事は、ボードゲームのゲームデザインにおける「進行」についてお話するものです。 第2の柱「進行」おはようございます。I was game の上杉です。 このnoteでは、「ボードゲームのゲームデザイン」という名目で、現代的なボードゲームのゲームデザインについてお話します。 現代的なボードゲームに興味のある方、あるいは、ボードゲームを作ってみたい方向けの内容となっています。 ここでは、ゲームデザインの巡礼ということで、僕の考えるボードゲームのゲームデザインにおける1

          ボードゲームのゲームデザイン:第2の柱「進行」

          ボードゲームのゲームデザイン:第1の柱「目的」

          この記事は、ボードゲームのゲームデザインにおける「目的」についてお話するものです。 第1の柱「目的」 おはようございます。I was game の上杉です。 このnoteでは、「ボードゲームのゲームデザイン」という名目で、現代的なボードゲームのゲームデザインについてお話していこうと思っています。 現代的なボードゲームに興味のある方、あるいは、ボードゲームを作ってみたい方向けの内容になるかなと思います。 具体的にどんな話をするかと言いますと、僕の考えるボードゲームのゲー

          ボードゲームのゲームデザイン:第1の柱「目的」

          マジック:ザ・ギャザリングのゲームデザイン上の発展の歴史(2)

          アンリミテッド・エディション(1993年12月) 白枠 アンリミテッド・エディションのアルファとベータが瞬く間に売り切れたあと、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは非限定版としてアンリミテッド・エディションを発売した。 アンリミテッド・エディションは、基本的にはリミテッド・エディションとすべて同内容の再販だった。しかし唯一、カードの枠の色が黒から白に変更された。これによって、リミテッド・エディションのコレクションとしての価値を維持しようと考えたのだ。つまり、ウィザーズ・オブ・

          マジック:ザ・ギャザリングのゲームデザイン上の発展の歴史(2)

          マジック:ザ・ギャザリングのゲームデザイン上の発展の歴史(1)

          リミテッド・エディション(1993年8月)マジックの誕生 マジック:ザ・ギャザリングは、リチャード・ガーフィールドによってデザインされ、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社から発売された。 リチャードは当初、『ロボラリー』というボードゲームを作ってウィザーズに持ち込んだ。CEOのピーター・アドキンソンはそれを気に入ったが、当時のウィザーズ社には生産のための十分な資金がなかったため出版はせず、ゲームとゲームの合間にプレイできるような安価で手軽なゲームを求めていると話した。それを

          マジック:ザ・ギャザリングのゲームデザイン上の発展の歴史(1)