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ChatGPTに法律相談してみた vol.2

こんにちは。

この前ChatGPTに相談してみた時のことを書いたら、思った以上にいろいろな方に読んでいただけて、とても嬉しかったです。

前回は、英語でのChatGPTに相談した結果についてあれこれ検討してみましたが、今回は日本語で相談をしてみました。


日本語で労務の法律相談をしてみた。

前回「What reason is required for a Japanese company to fire an employee?」という質問をしたので、比較の意味も込めて、同じような質問をしてみることに。

ただ、関心のある法的論点自体は同じでも、海外のクライアントと日本のクライアントでは、尋ねられ方のニュアンスが微妙に異なる傾向があるように思います。というのも、実際の国ごとに異なるのですが、相対的に日本の労働法制は極めて従業員保護に厚く、一種の温度差のようなものがあります。
つまり、海外の企業様からすると、解雇をもう少しハードルの低いものとしてとらえられていて、適式な手続きに則って解雇を進めてほしいのでサポートしてほしいというニュアンスで最初のご相談を受け、ご説明するにしたがって愕然とされることが多くあります。
対して、日本の企業様から質問を受ける際の言い回しを思い出してみると、日本国内で既にオペレーションしていることによる前提知識があるため、「とある従業員に問題があり、改善も見られないのでお辞めいただくことも視野に入れているのだが、法的に大丈夫だろうか」というお尋ねのされ方をされることが一番多い印象です。

そこで、今回は、こんな風に聞いてみました。

Q: 日本企業が、従業員を解雇するためにはどのような理由があれば違法にならないか。

A: 日本の法律では、企業が従業員を解雇するためには、法的に認められた理由が必要です。一般的に、以下のような理由が認められています:
・労働能力に基づく能力不足
・経営上の必要性
・従業員の不適切な行為
ただし、これらの理由を正当に証明することが必要です。また、解雇の前に労使協議や交渉などの必要な手続きを守らなければなりません。
注:この情報は2021年までのものです。現在の法律に適合しているかどうかは保証できませんので、詳細な情報は専門家にお問い合わせください。

引用元「OpenAIのAssistant」

いや~、うまい。
電話や対面での口頭の相談の場合、まず概要をお伝えし、徐々に細かい程度論をお話ししていくことが多いですが、chatという名称のごとく、会話形式の最初の質問に対する回答として見てみると、すっきりとしていて、難しい単語も見当たらず、正直良い回答だなと思いました。
さらに、注で専門家に問い合わせるよう的確なディスクレまでつけていて、ずいぶんなしっかり者だと感心しました。

こうして改めてみてみると、まずは、骨格を示すことで、もっと知りたい部分を自分で抽出できるので、会話がつながりやすくなります。
実際にご相談いただくケースでは、従業員が横領等の違法行為をしたというような場合よりも、経営側からするとパフォーマンスに懸念がある、ハラスメントをしている疑いがある、周囲とそりが合わないようだ等、経営側や周囲の従業員からの評価の積み重ねにより判断し、評価の低さが周囲へ与える悪影響が、解雇が認められる程度と言えるのかアドバイスが欲しいといってご相談いただく場合が多い印象です。

そこで、続けて、その程度について、尋ねてみました。
(黒か白かではない話についてどう回答するのかちょっとワクワクします。)

Q: どの程度の「労働能力に基づく能力不足」が認められれば、解雇は有効だと認められますか。

A: 「労働能力に基づく能力不足」が正当な理由として認められる程度は、法律や裁判所の判断によって異なります。一般的に、従業員の能力不足が以下のような場合に認められるとされています:
・役割や職務に必要なスキルや知識を持たないこと
・職務の遂行に必要な労働効率が低いこと
・職務に適した行動規範を守らないこと
ただし、これらの判断は個別の事情によって異なります。解雇が適切であるかどうかは法律上の手続きに従って決定される必要があります。

引用元「OpenAIのAssistant」

はい。まず、回答のフレームがほぼ完璧です。
もちろん言っていることも誤りではないのですが、何より、この手の質問、聞いている側としては、「〇〇なら大丈夫です。」と明確な線引きを以って回答してほしいのですが、個別具体の事情を調査した上で慎重に検討しないと、そういった「結論」は出せないのです。そのため、回答の骨子は「場合による。」となるわけですが、それでは法律相談の回答として、到底満足いただけるわけないのです。
そこで、一般的なケースを交えてイメージを少しでも具体的に持っていただけるような説明をしつつ、個別の事情の聞き取りへと続けて行き、しっかり相談に乗ってもらっていると思っていただくような会話をすることが必要なのです。

若手弁護士と言うのは、大概ボスや先輩について法律相談に同席し、議事メモを取りながらこういうところを学んでいます。
どういった場合に解雇が違法になったかというたくさんの判例等の知識を詰め込んだ状態が、司法試験合格後修習終了時の新人弁護士であり、「どの程度って言われても、具体的な状況がわからないので、場合によるとしか言えません。ただ、いずれにせよ法律以上の手続きはきちんと守ってくださいね。」という回答が瞬時に出てくるのが、「優秀な」新人弁護士です。しかし、それでは、弁護士としては、「優秀」どころか、もはや最低で、お客様を失望させてしまいます。

社会人にとっては、当たり前のことなんですが、いかんせん、六法を丸暗記という比喩が生まれるくらい、頭ぱんぱんに知識を詰め込んで資格を得るので、キャリアの最初には、知識を正確に吐き出せるようになることでいっぱいいっぱいになってしまっているのですよね。一つの質問に対して、言わなくてはならないこと、言った方がいいことが芋づる式に頭から出てくるのですが、それらを並べただけでは、到底お客様にはとても分かりづらい状態になっているわけです。何年もかけて勉強した膨大かつ専門用語満載の知識をずらずら並べても、そりゃ、わからないですよね。
そこで、次に、お客様にどう満足していただく答え方をするのか、というところを身につけないと、弁護士としてのサービスにはならないのです。この部分は、基本的に、資格を得た後、OJTで修得するのですが、この点は、業界内で一般的な指導の仕方があるわけでもなく、ついた先輩のやり方を見よう見まねでやってみるということくらいで、自分なりのスタイルやフレームが見えてくるまで苦しむ人が多い印象を持っています。

法律事務所は得てして小規模な上、弁護士で、後輩の指導に長けている先生は正直かなり稀という印象です。
私としては、ずっと、苦しむだけでなく若手の向上心が刺激されるような若手育成がこの業界でもスタンダードになればいいのにと考えていて、そのためには、上記のような弁護士としての回答の組み立てスキル等がある程度可視化されるといいなと思っていました。マニュアル思考はいかがなものかという考えもあるものの、ある種の型の様なものの引き出しをたくさん持てるような工夫はあってもいいなと思っていました。
誠に勝手ながら、AIの技術は、正確な知識の掃き出しに終始するのではないかという偏見を持っていたのですが、少なくともChatGPTに限って言えば、受け取り手が理解しやすいように知識を提供するという観点を踏まえた、簡単な会話形式の回答の組み立て方について参考にするという使い方があるように思います。

そういうことで、もう一つ、質問。
クライアントがご相談にいらした場面というのは、確定できない事項が複数にまたがってしまっていて、次にどうしたらいいのか手詰まりになってしまっている状況であることがほとんどです。
そこで、相談時には、その相談が終わった後、〇〇についてはクライアントの方で誰に何をヒアリングしていただく、△△については当事務所にて調査して詳細な回答をお出しするので××までお待ちいただきたい、とか、具体的なアクションに落とし込んだ状態まで持って行くことが非常に重要です。
今回の相談は、一つ前の質問の段階で、問題社員の取り扱いに苦慮しているということがわかってきている状況を想定しているので、実際に、今後どう対処すればいいかをアドバイスすることを目的に、次のように聞いてみました。

Q: 労働効率が著しく低い従業員がいるので、指導を行っていますが、改善されません。解雇を見据えて、改善の指導を促すための面談の記録を作成したいのですが、どのような点に注意すればいいですか。

A: 解雇を見据えた従業員の改善指導の面談の記録作成には以下の点に注意することが重要です:
1. 公正な指導:面談記録は、公正な評価を行い、客観的な情報を提供することが重要です。
2. 労働能力に関する具体的な評価:面談記録は、従業員の労働能力に関する具体的な評価を提供することが必要です。
3. 改善提案:面談記録は、従業員の改善のための提案を明確に述べることが重要です。
4. 改善期間:面談記録は、従業員の改善を図るための期間を明確にすることが重要です。
5. 改善の結果:面談記録は、指導後に従業員の改善が実際にどの程度行われたかを記録することが重要です。
これらの記録は、後で解雇に関連する法的問題が起こった場合に、正当な理由があったことを証明するために使用することができます。

引用元「OpenAIのAssistant」

今回は、次の取るべきアクションのうち、改善指導をする際の記録作成上の注意点という手続き的なポイントに絞って質問したつもりだったのですが、改善指導の実体面での注意点についてメインで回答してくれました。
1番目の質問から同一のチャット内で会話しながら質問したので、流れも汲んでくれたということなのでしょうか。だとしたら、こちらが質問した手続き面についてももう少しでいいから回答してほしいなという点を差し置いても、もう、すごいとしか言いようがないです。

ちなみに、ちょっとだけ内容的なお話をすると、問題のある従業員の改善指導を行う態様には、①指導書等の書面による方法と、②口頭による方法が考えられますが、②口頭による場合でも、記録を取っておくことが重要です。
上記質問は②口頭による指導の記録の作成場面を想定しています。この場合、書式に決まりはありませんが、実施の日時、場所、同席者を明確に記載した上、指導対象の行為と当該行為が与えた影響、改善のための指導内容、本人の言い分や応対内容等を、具体的に記載することが大事です。
上手な文章ではなくて構わないので、一文ずつ主語を明確に書くとうまくいきます。(このあたりの、訴訟を見据えた記録作成のための日本語の使い方については、得意分野なので、また今度。)


日本語だと、どれくらい使える?

上記のとおり、私個人としては、かなり使えると思いました。
前回と同様の感想ではありますが、めちゃくちゃできる新人がそばにいるという感覚です。(しかも24時間いつたたき起こしてもパワハラにならない。)
簡単な相談概要のみがメール等で送られてきていてわかっている状態で初回相談を迎える際の準備の時や、セミナー依頼があった場合の骨格作りの際に、これだけまとまった形で回答が出てくるのであれば、非常に助かります。具体的には、企業様の担当者になったつもりで、こんなことを知りたいのではないかということをいくつか壁打ちのように質問を投げてみて、こうした回答の形で情報を収集して、改めて客観的に見てみることで、お客様へのサポート内容を練り上げていくことができ、慣れてくれば時間もコンパクトにしてけるのではないかなという印象を持ちました。今までも所内で簡単にブレストするような場面もよくありましたが、そこにAIも参加させていくというイメージでしょうか。こちらが聞き方さえ間違わなければ正しい知識をわかりやすく答えてくれるので頼もしい同僚になり得ると思います。私たち生身の弁護士は、自分の個性や、自分なりの経験に基づいた洞察力を発揮することにより注力でき、弁護士業務が従来よりもっとクリエイティブな色彩を帯びていきそうな気がします。

また、想像を超えた良さというのは、今回散々称賛したように、その会話力です。若手弁護士であれば、AIはこんな風に答えるのかというのを参考にして、簡潔でわかりやすい回答の骨格を知ってみる勉強ツールにもできると思います。

企業のご担当者様であれば、弁護士に相談に行く必要があるのかどうかの前捌き段階があると思います。これまでであれば、ググってある程度の知識を整理された上で、上長や担当部門と相談されて、弁護士相談へとつながっていたかと思いますが、その「ググってある程度の知識を整理」する段階で、時間も短縮でき、有用なツールになるように思います。
こういったツールには賛否両論あると思うので、実際の顧問先の弁護士がどのような受け止めをされるかはわからないのですが、少なくとも私であれば、「●●という点が問題となっていて、そこで、▲▲という点がポイントになると考えたので、ChatGPTに聞いてみたら××という回答だったのですが、これは本件にも当てはまるのでしょうか?」といったように、ご相談いただく際の補助ツールとしていただいてもまったく構わないです。むしろChatGPTは日本語もナチュラルなので、ご懸念点を理解するための良い助けとなる可能性も十分あると思います。

なお、詳しいアルゴリズムはわかっていないのですが、個別具体の事情を含むケースを読ませるのはどうも抵抗があったため、あくまで、私は、一般的な質問を投げて試しています。なので、あくまでも一般的な知識を体系的かつ分かりやすく得られたというのは当たり前のことでかもしれません。
ChatGPTに、個別具体の事情に基づいた判断をさせた場合、どのような回答をしてくるのかわかりませんが、もし仮に、個別具体の事情を正確に与えれば弁護士としても一定のクオリティを満たした回答をするとしても、実際の案件では、個別具体の事情を正確に収集する必要があります。少なくともChatGPTは、こちらから質問を入れて回答を吐き出していく形なので、判断する側であるChatGPTから回答を導き出すために必要な質問を投げて判断に必要な個別具体の事情を収集するということができないことになります。その意味で、生身の弁護士の出番はまだあるのだと思います。
反対に、現時点でもここまでの精度なのであれば、そう遠くない未来、そうした双方向の質問回答を繰り返せるようなAIができるのかな、と妄想してしまいます。

ついでにキャリア相談もしてみた。

こんなにナチュラルな回答が来ると、ついつい自分の悩みなんかも相談したくなってしまいます。

まずは、

Q: いい弁護士の条件とは
A: 良い弁護士の条件は様々な要素から構成されますが、以下は一般的な条件です。
1. 専門知識: 該当する法律分野に熟練した知識を持っていることが重要です。
2. コミュニケーション能力: クライアントとのコミュニケーションを円滑にとることができ、クライアントのニーズを把握し、適切なアドバイスを提供できることが求められます。
3. 問題解決能力: 問題に対して適切な解決策を見つけることができる力を持っていることが求められます。
4. 責任感: クライアントの代表として、責任を持って業務を遂行することが求められます。
5. 誠実さ: クライアントの最優先事項を尊重し、正直かつ誠実なアドバイスを提供することが求められます。
これらは一般的な条件であり、個人によって異なる場合もあります。重要なのは、クライアントにとって最適な弁護士を選ぶことです。

引用元「OpenAIのAssistant」

おっしゃる通りです。。。
言われてみれば当たり前の内容ですが、こうしてコンパクトにまとまっていると、後輩に接する際等、いい指針になりそうです。

最後にもう一個。

Q: 独立するべきタイミングとは
A: 独立すべきタイミングとは、あなたが自分自身の人生を自分で管理する能力があり、責任を負い、自分自身の未来を作ることができると感じたときです。独立すべきタイミングは人によって異なりますが、通常は大学卒業やキャリアのスタートなどが考えられます。

引用元「OpenAIのAssistant」

なんか、妙に刺さりました。
一見、ごく一般的な内容に見えますが、この回答を得て、「私は、自分自身の人生を自分で管理する能力を身につけて実践していると言えるだろうか」「自分自身の人生に責任を負えると言えるだろうか。」「自分自身の未来を作ることができると自信を持てているだろうか。」と自問自答してみると、答えが自分の中で明確に導き出されました。
AI、おそるべし。


AIに教えられたこと。

生身の人間の仕事がAIにとってかわられない要素として、人の心に寄り添えない等と言われることもあるかと思いますが、上記のキャリア相談への回答や、法律相談への回答を見ていると、必ずしもそうは言えないのではないかと思いました。生身の人間にとって、感じのいい答えだなという印象を持ちました。

なんでかなと改めて考えてみましたが、回答内容自体はごく一般的な内容であっても、①問いに対応している回答を、②具体的なイメージが浮かぶ程度に明確な言葉で説明し、③個々の人や場合にとって正解は異なるとして目の前の人の個性を尊重する、という共通点が見えてくるような気がします。

たしかに、AIに心はないのかもしれませんが、例えそんなAIであっても、生身の人間に嫌な思いをさせない工夫というのはできるのだなというのは、一つの学びでした。
形式さえ踏襲すれば心を寄せなくていい、というのは、それこそ人間性の希薄さが漂い、せっかく生身の人間として生を受けたのに、なんだか残念な態度と思いますが、目の前の生身の人間を傷つけないように、なるべく暖かな気持ちになってもらえるように、形式を工夫してみるということもまた、自分と他人の人間としての心を慈しむために必要なことなのだな、と、AIに教えてもらいました。
AIの向こう側に、AIを作った人がいるんですね。

今のところ無料版ですが、アップグレードすると「Available even when demand is high」なのだそう。
しちゃおうかな。。。

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