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薬学部受験は妥協だったのか

私は現在、薬学部4回生だ。

先日、とあるイベントで薬学部受験生(高校生)とお話しする機会があった。
その時に聞かれた
「先輩って、なんで薬剤師を目指したんですか?」
という質問に私はうまく答えられなかった。

私はなぜ薬学部を、そして薬剤師を目指したのだろうか。

そこで、今一度人生を振り返ってみることにした。

幼稚園時代

幼稚園の頃から、漠然と医療系のお仕事に興味があった。
その理由は単純で、周りに医者を目指している人が多かったからだ。

幼稚園は私立に通っていたため、親御さんがお医者さんが多かった。
その影響で、子供たち(私の友達)も医者を夢見ている子が多かった。

私の親は、医者ではなかったが、母は看護師だった。
それも相まって、医療に関心があった。
いや、「医者」に関心があった。
その頃の将来の夢には「お花屋さんとお医者さんになりたい」と書いてあった。
それくらい、医者という職業を身近に感じていた。

小学校時代

小学校に上がると、現実を目の当たりにする。
小学校は系列の私立ではなく、地元の公立の小学校に行った。
そこで、「医者」という職業は稀で、本当にすごい人だけがなれる職業なんだ、と小さいながらに痛感した。
そのため、小学生の頃の将来の夢には「看護師」と書いてあった。

中学校、高校時代

そして、中学、高校時代。
私は中学と高校が繋がっている学校に通っていたため、早くから "大学受験" を意識する機会が多かった。
周りの友達も勉強熱心で、本当に恵まれた環境だったと今になって思う。
目標も高い子が多く、
「私も医者になれる可能性があるかも」
確かにそう思った時期があった。
大学受験に向けた集まりでも医学部志望者の集団に入っていた時もあったし、模試の志望校の上位に医学部を入れていた時期もあった。

「薬剤師」という候補がいつ頃から出てきたのか、自分でもあまり覚えていない。
しかし、今振り返ってみると中学校で行った職業体験も、高校の課題であった職業調べも、「薬剤師」を選んでいた。
周りに言われたのか、自分で調べる中で興味を持ったのか、その辺りも全く覚えていない。でも確実に、薬剤師という存在が自分の近くにあった。

医療系に興味を持った別の理由

ここまで触れてこなかったが、医療系に興味を持った大きな理由がもう1つある。
ありきたりかもしれないが、小さい頃から病弱で救急車に乗ったり、入院したりすることが多く、医療従事者の方に何度も助けていただいたからだ。
正直、その頃の記憶は明瞭ではないが、
「医療系のお仕事は、本当にすごいお仕事なんだ、人の役に立つ仕事なんだ」
という印象は強く残っている。

そして、薬も長期間服用していたため
「お薬ってすごいんだ」
というイメージもあった。

ただ、私がよく行っていた小児科は院内処方で、薬剤師さんと関わる機会はほとんどなかったのだ。
だから余計に、自分の中でどのタイミングでどんな理由で、薬剤師を目指したのか断言することはできない。

医学部をあきらめた理由

また、私自身興味関心が様々な方面に向くタイプだったので、高校では医療系以外にも教育(特に数学教師)や、研究(工学部の化学系など)にも興味を持ち始めて、収拾がつかなくなった。

この記事にも書いてあるが、最終的に薬学部を選んだ理由は、
自分の偏差値(学力)と職業の安定性(国家資格が取れるかなど)、将来性、自分の向き不向きを総合的に検討した結果であった。

つまり、言ってしまえば医学部を目指すには学力が足りなかったのだ。

親との話し合いで、高校3年生の夏の模試の成績で、医学部を目指すかどうか決めることになっていた。
その模試の結果、医学部を目指すのは厳しい、と結論付けられた。

それよりも前に自分の学力について理解していたし、そうなるだろうことも分かっていた。
でも、「私には無理だ」という現実を突きつけられた時、辛くて悲しくてやりきれない想いでいっぱいになった。

でも、受験生にそんなにくよくよしている時間はない。
実際、その年の10月ごろにあった薬学部の推薦を私は受験している。

その間に何があったのか、話していこうと思う。

薬学部志望になった経緯

医者という夢が破れた私は原点に帰って、なぜ医者という職業を目指したのか考えた。
考えた結果、特に ”医者でなければいけない理由” がなかった。
小さい頃からの憧れは、ただの憧れであって、人の役に立つという観点でいえば、薬剤師も同様に素晴らしい仕事である。
薬剤師は医療系で、国家資格も取れて(仕事復帰しやすい)、給料も安定して自立もできる。希望通りである。

家族も学校の先生も、塾の先生も薬学部について色々と調べてくれて、相談に乗ってくれた。
その結果、「薬剤師でもいいのではないか。」と思い始めた。

もちろん医学部よりは、難易度が下がるが、それでも難関学科。
それも志望は国立。
合格するためには、努力して成績を伸ばす必要がある。

そこで、「薬剤師になろう!」と意思を固めた。
時間でいうと、医学部をあきらめてから、3日ほどだったと思う。

自分にしてはよく頑張って決断したと思うし、
その決断は間違っていなかったと思う。

後日談

今になって感じることだが、私はありえないくらい手先が不器用だ。応急処置で皮膚を縫うことも難しいと思う。
薬剤師だって、調剤で細かい計量など必要になってはくるが、これは今後ロボットが完璧にしてくれるようになるだろう。

そしてなによりも、薬学生として生活している今が楽しい。
研究室は大変だけれど、薬の勉強は面白いし、たくさんの素敵な友達に出会えて本当に良かった。

だからこそ、
薬学部受験は妥協ではなかった。
妥協ではなく、周りの人(家族や先生、塾)と話し合って、自分で決めた選択である。後悔はしていない。

これが、私の
#自分で選んでよかったこと
である。

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