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小説-DAWN OF AKARI-奏撃の い・ろ・は

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以前クラウドファンディングでアニメ化を試みて未達に終わった「ABC of Akari」の企画をベースに、新たにストーリーを作り直した独自ビルド版の小説です。よろしければ読んでくだ…
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#ファンタジー小説

小説 -DAWN OF AKARI- 奏撃(そうげき)の い・ろ・は(10)

10  突然、二人組の黒服の男達がアレイスターに襲い掛かってきた。  ソーホーの裏通りにある日本料理店『バンザイダイニング』の通りに面している入り口付近だった。アレイスターがちょうど店に入ろうとしたところを襲われたのだ。 「何者だ!?」  アレイスターの問いに黒服の男達は全く答えない。  最初は酔っ払いが搦んできたのかと思った。しかし男達の機敏な動きから、ただ者ではないのが直ぐに判った。MPSで格闘術のトレーニングをしているアレイスターでさえも防戦一方だったのだ。  一足

小説 -DAWN OF AKARI- 奏撃(そうげき)の い・ろ・は(11)

11  若くして斬首刑に処せられた古代ローマの聖人の名前を冠したドーバー海峡トンネルを走る国際列車の発着駅がセント・パンクラス駅だ。  人工の三分の一が外国生まれの多民族国家イギリスでは多くの外国人達がこの駅を通じて往き来している。  駅構内にあるショッピング・コンコースの中央から二階へと伸びる階段の下には“Play me, I'm yours”(自由に弾いてください、あなたのものです)というメッセージとともに、一台のストリートピアノが置いてある。  旅人達はピアノの前に自由

小説 -DAWN OF AKARI- 奏撃(そうげき)の い・ろ・は(12)

12  ロンドン郊外の南西部で、中心部をテムズ川が流れる風光明媚なリッチモンド。其所はかつて英国王室の宮殿があった歴史的に重要な地域だ。ヒースロー空港とロンドン中心部の大凡中間地点に位置し、そのリッチモンドという名が示すように住民は富裕層も多く、比較的に治安の安定した高級住宅地としても知られている。最近は世界的に有名なインターネット関連企業のPayPalやeBayなどが英国における支社をここリッチモンドに拠点を移した事で、より多くのICT産業がこの地区に集積し始めているのも