銃 拾った拳銃が呼び起こす危険な青春
あらすじ
雨の夜、大学生の西川トオル(村上虹郎)は、河原でひとりの男の死体と共に放置されていた拳銃を拾い、自宅アパートに持ち帰る。銃を手に入れたトオルは、大学生活の心的様相も変わっていく。
トオルは、悪友のケイスケ(岡山天音)に誘われた合コンで出逢った女(日南響子)と一夜を過ごす。
翌朝、目覚めると女がトーストを焼いていた。あの銃と関係する男の遺体が発見されたというニュースがテレビで流れる。途端に気分が悪くなったトオルに、女は優しく接する。
その日以来、トオルは頭の中で彼女を“トースト女”と呼び、セックスフレンドとして性欲を吐き出すようになった。
時折、アパートの隣の部屋から、子どもの泣き声と我が子を罵倒する母親(新垣里沙)の声が聞こえる。トオルは親との忌まわしい過去がよみがえり、大音量の音楽で打ち消そうとする。
大学の学食で、以前も講義中に話しかけてきたヨシカワユウコ(広瀬アリス)と再会する。
トオルは彼女と付き合うことを妄想し、すぐにセックスをするのではなく、あえて時間をかけて親しくなることを計画する。
トオルはヨシカワユウコとトースト女の間で、自分なりのバランスを取っていく。
トオルは日々銃に惹かれていき、カバンに入れて持ち歩くようになる。その刺激は、さらにトオルを高揚させていく。
ある日、刑事(リリー・フランキー)がトオルのアパートを訪れる。刑事はトオルと銃のことを知っているようだった。
刑事が部屋に入るのは阻止するが、喫茶店で尋問を受ける。刑事からある言葉が発せられたとき、トオルは後戻りできない場所に踏み出していくのだった……。
芥川賞作家・中村文則のデビュー作を「百円の恋」の武正晴が映画化。
感想など
「たまたま拾った拳銃の魔性の力に魅せられ、運命が急展開していく」というストーリーは、阿部寛主演で映画化された「凶銃ルガーP08」などなど既視感あるけど、ラストまでモノクロームの映像と村上虹郎の乾いた心情を語るモノローグと女に心を許さない主人公トオルの言動とトオルを執拗に追う刑事との駆け引きと銃の力に魅せられ次第に殺戮衝動に取り憑かれるトオルの心のせめぎ合いが、村上虹郎の令和に松田優作が魔界転生してきたような鬼気迫る演技のおかげで、緊張感が途切れないハードボイルド・サスペンス映画に仕上がっている。
松田優作版「野獣死すべし」のように夢幻のようなラストの寂寥感も忘れがたい。
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