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予定のない休日

適当に酔いたい時のために買っておいた安い酒。ボトルの残りが減らない毎日は幸せだ。 今日は、ボトルの減りが早い。撮りためたドラマを消化しないと、と考える頭と裏腹に、内容はまるで入ってこない。

明るかった窓の外は、気が付いた時にはもう薄暗い。部屋の片づけ、冷蔵庫の残りものの処理、適当な相手とのチャットメッセージ、細かな体のメンテナンス。 今日こなしたタスクの中に、将来につながるものはどれくらいだろう。

めんどくさがりで、怠慢な私が、ただひとつ欠かさないのは身体のメンテナンス。毎日のストレッチ、時間をかけたフェイスケア、ムダ毛の処理。「女子力が高い」とか、「丁寧な人」なんてほめられるのは、単純に気持ちがいい。けれど、そんな高尚な理由は、私のなかにはなかった。

ただ、あるのは恐怖。性格が特別いいわけでも、特別な地位があるわけでも、なにか輝かしい系経歴があるわけでもない。そんな私が、他人から人並みにはもてはやされる理由。「そこそこ」かわいいから。ただ、それだけで、それなりに他人から選ばれる。

単純に快感だった。若い自分を、消費してくれる誰かがいることが。でもいつか、「若い自分」は消えてなくなる。有限な「若さ」だけを武器にしてきた自分が、消費されなくなっていくのは、手に取るようにわかる。ただただ、怖かった。

手に取る化粧水が、伸ばす筋肉が、どれだけ時間を遅らせてくれるのかはわからない。たとえ遅らせてくれたとしても、いつかは必ずたどり着くところがある。 それでも、すがるように、しがみつくように。私は身体のメンテナンスを怠らない。

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