様々な企業から見るチャットボットのゆくえ


資料

以下の記事がおもしろかったので、考えたことをまとめたいと思います。

資料の要約

資料のChatGPT要約を載せますが、記事を読んだら飛ばしていただいて構いません。

この記事は、企業がチャットボットを導入する際の視点について考察しています。特に、エンドユーザーにとってチャットボットが最適な体験設計なのか、本当に顧客は企業に対してチャットボットを望んでいるのかという疑問を提起しています。

記事の著者は、企業が独自のチャットボットを作ると、それは基本的にWEBサイトの代替となると指摘しています。しかし、企業のチャットボットは自社の情報しか提供しないため、ユーザーにとっては比較や他の情報の調査ができないという問題があります。

その代わりに、ユーザーが自分の好みでチャットボットを設定し、それが企業から情報だけを取得できるという仕組みが理想的だと述べています。これにより、ユーザーは企業のチャットボットを探しに行く手間が省け、自分の好みに合わないボットと話す必要もなくなります。

また、記事の著者は、チャットボットの世界も「デマンドサイド」(需要側)と「サプライサイド」(供給側)に分かれていく可能性を予測しています。デマンドサイドはユーザーの好みに合わせてカスタマイズされ、サプライサイドはチャットボットが読み込みやすい形で情報を提供します。

この記事は、チャットボットの導入を考える企業にとって、ユーザーの視点を理解するための重要な視点を提供しています。

ChatGPT GPT-4 Plugin WebPilot利用

解釈

各企業が作るチャットボットを使い分ける状況は、ユーザにとって手間は減らない結果となります。これに対してChatGPT(UI版)が強力なのは、情報を集約し、一つのインタフェースで全ての情報にアクセスできるからです。

ただし、ChatGPT(OpenAI)は既存の製品がないので、現時点では未完成の状態です。これから、ChatGPTのように情報を一手に集約して手間を減らせ、個々のユーザにとって好ましいキャラクターを持ったチャットボットが出てくる可能性があります。

デマンドサイド(ユーザーの要求に応じてサービスを提供する側)とサプライサイド(情報を提供する側)に分かれ、最終的にはデマンドサイド(=プラットフォーマー)が主導権を握る可能性が指摘されており、これはその通りだと思います。

また、デマンドサイドも以下の図のようにモードを使い分けたいというニーズがあるはずだということにも同意です。


"「企業チャットボット」ってユーザー目線での最適解なんだっけ?という話"記事中の図

例えば仮に、ChatGPTやBingが「着せ替え」のような機能をリリースしたら、かなりこれに近い状況になるでしょう。

「企業チャットボット」ってユーザー目線での最適解なんだっけ?という話

このアイデアは、なるほど!と思いました。チャットボットと対話するくらしが当たり前になると、このようなことはあり得ると思います。

この記事では、情報を抜かれるだけのサプライサイドにならないための一つのシナリオとして、以下の2つによってデマンドサイドとして選ばれることが必要としています。

  • 他の企業から情報を抜く側になる

  • 魅力的なキャラクターを持つチャットボットになる

個人的な見解

ただ、今後の各企業が情報を抜かれるだけにならないためのシナリオは、「サプライサイドのように独自の情報を持ちながら、デマンドサイドの特徴を満たす」という内容でした。これができたら最高なんですけど、企業の状況によってシナリオをもう少し詳しく考えると、各企業の特性によりシナリオが色々ありそうだなと思いました。

各企業が持つ3要素

この記事を読む限り、各企業が持つ要素は3種類になります。

  1. 複数の情報源から情報を収集・編集できる技術を持つ(デマンドサイド)

  2. 独自の情報やコンテンツを持つ(サプライサイド)

  3. 魅力的なキャラクターをデザインできる技術・コンテンツを持つ(デマンドサイド)

それぞれどの要素が強いかで、シナリオが変わってくると思います。

要素1については、ChatGPTがBrowsing, Code interpreter, Pluginsを活用して現在のリーダーとなっています。これはユーザの要求に対し情報を自動的に収集、編集する能力を指します。しかし、この領域はプラットフォーム構築力が必要で、ガラパゴス状態で国内で競い合っている日本企業には、苦手そうに見えます。

要素2は、自社の独自の情報(コンテンツ:製品・サービスなど)を持つことです。多くの企業は、現在すでにコンテンツを持っているので、APIを提供することでサプライサイドとなり得ます。

要素3は、情報以外の面において、ユーザの好む応答をする能力です。日本は、特に図中の「エンタメ」や「癒し」において、かなり高い障壁を持っているので、強みを発揮できる部分なんじゃないかと思います。ただし、はじめはコンテンツの一つとして(AITuberなど)、ここでいうデマンドサイドでもサプライサイドでもないところで進化すると考えられます。

ChatGPTに「着せ替え機能」が登場すると、デマンドサイドに対して、情報ではなくキャラクターを提供するサプライサイドになることが考えられます。ただこれは、情報だけを抜かれる形と異なり、利用に対してユーザやデマンドサイドから十分な利用料を得られそうです。

チャットボットをめぐる企業のシナリオ

各要素を持つ企業とチャットボットに関するシナリオを考えてみます。

まず、要素1についてです。これは、LLMを開発でき、そのアプリケーションを開発できる企業です。OpenAIはまさにここに入るでしょう。要素1を持つ企業は、要素2を取り入れる動きをします。Pluginsはプラットフォームとして集める方向です。この記事にあるようなデマンドサイドとしてサプライサイドの構図です。Mirosoftとの提携も、別の形で要素2を取り入れる動きと捉えられます。

他にも、現在乱立している、OpenAIなどのLLMのAPIを使ったLLMサービスもここに入ります。しかし、コア部分をOpenAIなどに抑えられているため、独自のLLMを開発できなければ、独自性が生まれず消えていくと考えられます。

次に、要素2を持つ企業です。これは、デジタルやリアルのコンテンツを持つ企業です。要素2を持つ企業は、要素1を取り入れようとします。特にデジタルコンテンツを持つ企業は親和性が高く、動きが活発です。

Microsoftはこの代表例で、OpenAIとの提携をしています。もともとの製品が「オフィスワーク領域」以上をカバーしているため、要素1との組み合わせで大きく進化します。Windows Copilotが強力な理由ですね。このように、要素1をいきなり取り込む動きをできるのは、ある一つの領域を広くカバーしている企業です。

一方、Expediaは、同じ要素1を取り入れる動きでも、異なる動きをしています。まずExpediaは、まっさきにPlugin提供しました。そしておそらくそれを活かして開発されたチャットボット機能を自社アプリにリリースしています。つまり、一回ChatGPTのプラットフォームに載ることで要素1の伸ばし、それを活かして自社コンテンツを進化させています。これからは、「旅行領域」でのデマンドサイドになっていくことを狙っていくのではないでしょうか?

私は、Pluginsが発表されたとき、Plugin提供をするメリットがあまりわかりませんでした。一見、ChatGPTの一律のUIの中に並べられ、差別化要素が限られた厳しい競争になるだけなのではないかと感じます。しかし、Expediaの動きを見て、上記のような意味があるのかも、と思い直しました。逆に日本のクックパッドは、このような目論見があってPlugin開発を行ったのか、ただのパフォーマンスなのか、気になるところです。

Expediaは旅行という領域全体をカバーするポテンシャルがありますが、ニッチなデジタルコンテンツを持つ企業もあります。そのような企業は、プラットフォームに参加せず、コンテンツに振るのがいい気がします。LLMをデジタルコンテンツ生成に使い、充実した独自の世界観を作っていく方向です。例えば、LLMはユーザ投稿を品質の高いコンテンツに変換することができます。クックパッドのシナリオはこれかもしれません。

ここまでは、要素3としてデジタルコンテンツを持つ企業についてでした。これに対し、リアル領域のコンテンツ(機器など)を持つ企業はどのようなシナリオが考えられるでしょうか?

まず、ニッチなリアルコンテンツを持つ企業は、サプライサイドでもいい気がします。デジタルを拡充してもいいですが、それでも広い領域をカバーできないと考えられるので、デマンドサイドへ行くのは長過ぎる道のりに見えます。それよりも、サプライサイドとして、リアルコンテンツの改善にデマンドサイドを利用してやる方法があると思います。例えばPluginでユーザの入力自体も取得できれば、「ユーザの声」を、今までより新鮮なものをより多く集められます。これに基づいて改善を行うことで、成功しているニッチな領域での進化が見込めます。

また、リアルコンテンツを持ち、広い領域をカバーしている企業は、デマンドサイドもサプライサイドも自社内で作れ、さらに一体化できる可能性があります。例えばPanasonicなら、「くらし領域」を広くカバーしています。そのリアルコンテンツの壁で守りながら、要素1を取り入れる動きをすれば、「くらし領域のデマンドサイドとサプライサイド」を自社で作れます。さらにデマンドサイドとサプライサイドを密に結合することで、リアルーデジタルで強固な世界を構築できると思います。

具体的には、上にニッチなコンテンツを持つ企業のシナリオで挙げた、デジタルコンテンツ生成による世界観の充実・対話UIによるフィードバック収集・リアルコンテンツの改善です。Panasonicのようなリアルコンテンツのカバー範囲(=大きな)企業なら、くらし領域をデジタルコンテンツが強い企業や要素1を持つ企業に侵食されにくく、このシナリオがあると思います。

最後に、要素3を持つ企業です。上にも書いたとおり、はじめはコンテンツの一つとして(AITuberなど)、デマンドサイドでもサプライサイドでもないところで進化すると思います。あとは、Generative Agentsのように記憶管理の部分が研究される、というところですね。チャットボットに載ってくるには、「ChatGPTの着せ替え」が早いかもしれません。

ここで紹介している記事やこの文章自体は、Custom Instructionsがリリースされる前に書いているのですが、これはまさに「着せ替え機能」ですね。今は自由に決められることで、色々着せ替え方のデータを収集しているんですかね。私自身は全く使いこなせていません。。

日本は要素3の種となるデジタルコンテンツを多く持っていると思います。要素1と2を揃えていく日本企業が、こういう企業と組んで作っていくことで、要素3を育っていきそうです。

まとめ&感想

こちらの記事がおもしろく、これをきっかけとしてすごく頭が動きました。ChatGPTが突然出てきて、何をどうすればいいかわからない混乱状態ですが、これまでの様々な動きとこの記事の考察から、色々考えることができました。

ある程度自分の中では辻褄が合った感じがしていますが、ニュースなどはかなり大雑把に見ているので、知らないことが多いと思います。もしおかしいところや抜けている部分があれば、教えていただけると嬉しいです。

初めて技術ブログじゃない記事を書いてみましたあが、時間もかかるし難しいですね。これをどうやったらすばやくわかりやすい文章を書けるのか。。ただこういうことを考えるのは楽しかったので、練習していきたいです。

参考

「企業チャットボット」ってユーザー目線での最適解なんだっけ?という話|Takuya Kodama

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