自問自答の末に答えは出ない

むしろ答えなんてものは要らないのかもしれない。

『俺は何故、音楽をやっているのだろう。』

別に親に強要されたなんてことはあるはずもなく、モテたかったわけでもない。
モテる為にしなきゃならないことは音楽ではないと、肌で感じていたくらいだし。

小学生の頃に自らの夢について書かなければならない時間があった。
今思えば他にさせることがなかった所為じゃないかと思うけども。
道徳の時間だったか、社会の時間だったかは忘れたし、学年もほぼ憶えていない。

俺はそこに『ギタリスト、ラジオのDJ』と書いた。
よく憶えている。
ギタリスト?割にお前ギターヘッタクソやなぁ!!はっはっは
と思ったあなた。
殴りますので、その後一緒にビールを呑みましょう。
違うの。そんなことが話したかったんじゃない。
なんだか書いておきながら、ギタリストという言葉に異常なまでの違和感を覚えたことを鮮明に覚えている。
時間にしておよそ30年前のことなのに。

ラジオのDJはいまだに良い夢やんと思える程度には憧れているが、職業にできるかなと思うくらいのもんだ。
だけど、ギタリストは違う。

そして、およそ30年後の今
ギタリストじゃない。音楽で稼いでいるわけではない。
だが音楽は続けているし、辞めようとは全く思えない。
辞められないのは『続けてきた』からではない。

これが『何故俺は音楽をやっているのか?』という問いに変わった。

辞められない理由をまず考えた。

そんなもん無い。

今すぐにギターを燃やし、エフェクターを叩き壊してアンプを奈落に投げ捨てたりしろ!と言われたって気にしない。
だけど、歌えなくなるのは困るな。


お?俺は歌いたいのか?
いや、違うな。楽器が無くたって音楽はできると思っているからか。
つまり別段ギターに執着してるわけじゃないってのがわかった。
でも今んところ一番自由に演奏できる楽器は『ギター』ってだけか。

まぁ実生活に支障をきたすので、声を奪われたり、腕を切られたりってのは困る。
仮に歌えなくなったり、ギターを触ると痙攣する呪いみたいなもんにかけられたらどうだ?

それは困るな。

困るぞ。でも辞められない理由なのかはわからないな。

自分の人生や生き方から音楽が切り離せないってことなのか。

もはや俺は音楽なのでは?

ということか。

そうなると、なぜやっているかなんてのは愚問だな。

俺こそが俺にとっての音楽だからだ。

確かに学生時代、言われたことがある。
酒向くんはいつでも音楽を聴いているの?

こいつ何言ってんだ?と質問の意図がわからなかった。
無音で食事をしたり、車を運転したり、書き物をしたりしてんのか?
と思った。

質問の意味がわからなかったので、答えるのに少し時間がかかったと思う。
でもきっとその子はそんなことない人生を送っているんだと今なら思う。
それが普通じゃないということが俺にとって新鮮だったし、初めて気づいた瞬間だったと思う。

そりゃ、自分以外の人間がいる時は無音での食事や移動や何かしらがあるのはわかっていたけれど、それはそれぞれ音楽の好みや、会話の邪魔になるからだと思っていた。確かに好きでもない音楽を聴き続けるのは苦痛だ。当時の俺は好み以外の音楽が本当に苦痛だったし、狭い範囲の音楽しか聞かなかった。

これは今でも後悔している。
だけど無理なもんは無理だったのだから仕方がない。

近年はだいぶ変わった。
ちょっと遅かったなと、今になると思うけど。
なんでもかんでも一聴する。
開始5秒でダメな曲もあれば、数十回リピートする様な曲がジャンルレスで現れる。

そんなのが次から次へと現れて、こんなのもいいな、このビート最高やん。このメロディは病みつきになるぞ。とか、なんかわからないけどカッケェ!となっていたら、自分でも生み出したくなる。

だから俺は辞められないのかもしれない。

知らんけど。

考えてみたり、文字に起こしてみたりするけど、結局わからない。

別に知らなくてもいいのか。

知らんけど。

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