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散桜鬼 其ノ五 ~ヴァサラ戦記二次創作~

数日後、医務室にて

「・・・
・・・!?」

「良かった、目が覚めたのね」

「ハズキ・・・隊長・・・
ご、ごめんなさい!」

「病み上がりの状態でそんなに大声出しちゃ駄目よ?」

「でも私は・・・」

「ハイハイ、私は何とも無いんだからそんな顔しないの
もしまた暴走したらまた私が止めてあげるから
まああの時は一人じゃ止められなかったけど、どんな手使ってでも止めてあげるから」

「ぼ、暴走・・・?」

「そう、よく聞いてね?
あれから少し考えてね、あなたの血液を調べさせてもらったの
あなたは自分の事を半妖だと言っていたけどもう少し詳しく言うと鬼と人間の間に生まれたその時点で鬼としての素養が備わっていたの」

「あなたが村を逃れて蓄えが底を尽き
お母さんを食べたとき、何か変わった事は無かったかしら?」

「・・・確か血を飲んだ時、突然体の中が発火したような熱に見舞われました
そこから何も考えられなくなり気づいた時には必死で血肉を貪っていました
でも恍惚としてまたあの味が忘れられなくなって・・・」

「そう、血を体内に入れる事で鬼の力が覚醒する体質なのよ
ただあなたの場合は血を見ただけでもそれが出てしまうの
事実それ以外の時は何も無いでしょう?」

「ええ、確かにその通りです
でもそれが原因で」

「これからあなたがすべき事、それは
今はゆっくり休んで万全に動ける状態になったら力をコントロール出来るように鍛錬する事
もっと言えば鬼の力を自在に引き出せるようにするの」

「!?
そんな事が出来るようになるのですか?」

「そうよ
そうして鍛錬を積み重ねたその先にある
"極み"を会得出来るようになったら完璧ね」

「極み、私に出来るの・・・?」

「出来ないと思えば出来ないし
出来ると思えば出来るわよ
そのためにも今日は休む!」

「はい、何から何までありがとうございます」

「うん、素直でよろしい
おやすみ」

ーーーーーーーー

あれから更に数ヶ月、私はひたすら力をコントロール出来るよう鍛錬に励んだ
ハズキ隊長を始め多くの隊長さんや仲間から教えを請い吸収し何度も何度も取り組んできたが、その都度力が暴走し周りに迷惑をかけてばかりだ

・・・

決して諦めている訳では無い
なんとしてでも成功させて正しい力の使い方を身につけなければ!
しかしそこまでの道筋が見えないでいる
どうすれば答えがみえる!?

「頑張ってるわね」「ハズキ隊長?」

「どう調子は?」

「うーん、何とも言えませんね・・・
あれから色々と試行錯誤してるんですけど
これといった成果が出なくて」

「まさかとは思うけどあなた、結果を急ぎ過ぎてないかしら?」「そ、それは・・・」

「どうやら図星みたいね
いい、力のコントロールにせよ極みにせよ
強い力って言うのは一朝一夕で身に付くものじゃないの
あなたはヴァサラ軍に入ってまだ数ヶ月だし
まだあなたの持つ力に対して基礎能力が追いついてない可能性も否定出来ないわ」

「それともう一つ
以前あなたに水刃式をやってもらったけど確かにあの時、水の色は赤だと思うけど濁っていてよく解らなかった
前に五神柱ついても話したけどもっと言えば基礎があくまで五つなだけであって、極みの扉は無数にあるの
色は一種の目安みたいなものよ

ビャクエンやルトのように基礎を鍛錬する人も入れば五神柱が派生して全く別の未だ見ぬ新たな扉を開く人だっているわ

もっともそれが今日になるか明日になるか
はたまた数年先になるか
それは誰にも分からないけどね」

「・・・ありがとうございますハズキ隊長!
私、自分に負けそうになっていました。
でもここから何年かかってでも今の力を上手く使えるよう頑張ります!」

「そう、その意気よ!
あなたなら大丈夫、私がついてるか
「伝令です!」「もうタイミング悪いわね!」
「すみません、総督様がサクラ隊員をお呼びです」

「あらなんでしょう?」
「私も一緒にいくわね」

ーーーーーーーー

「サクラか、よく来たのう
ハズキも一緒か」

「あらおじいちゃま、迷惑だったかしら?」

「いや、むしろ居てくれた方が良い」

「サクラ、お前が"見習い"として鍛錬を重ねたこの数ヶ月
仲間も増え、昔と比べれば随分と成長したことじゃろう
そろそろ見習い期間は終わりじゃ・・・」

「お前を今より、
"十二神隊"隊員として認める!」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

「うむ!じゃがここからが本当のスタートじゃ、より一層気を引き締めていくんじゃ!
ところで配属先じゃが・・・」

「なら私がもらうわ」「おお、そうか!」

「もちろん、初めて会った時から傍に居るし今のサクラを一番理解してるのは私だと思うの」

「ふむ、サクラは問題無いか?」

「はい!私もハズキ隊長の所が良いと思っておりました」

「なら良いじゃろう
サクラ、お前は今日から六番隊隊員じゃ!」

「はい!ハズキ隊長、改めてよろしくお願いします!」

「こちらこそ、よろしく
でも私の隊に入ったからにはビシバシいくわよ?」

ーーーーーーーー

あれから数年後、サクラは六番隊の隊員として着実に力をつけ副隊長格と肩を並べられるまでに成長していた
入団当初は頻繁に暴走していた力も長年の鍛錬の末に何とか自力で抑え、尚且つ自在に引き出せる様になっていた

そしてある日、ハズキとサクラに任務が言い渡された
かのブドウ村にて不穏な気の動きが見られた
カムイ軍が再び動かんとしている
サクラにとって苦々しい記憶がある地だが・・・

「サクラ、大丈夫?」

「はい、あのような失態は犯しません
大丈夫です」

「頼れる時は頼っていいからね?
でも昔と比べて大分成長したわね、暴走も最近は減ってきたし」

「本当に恥ずかしい限りです・・・
ハズキ隊長にも迷惑かけて・・・」

「人間ってのは迷惑をかけてかけられて成長するものよ?
だから迷惑なんて思わないで?」

「はい、ありがとうございます」

何気ない会話をしながら二人は辺りを探索する
相変わらず怪しい雰囲気は否めない
むしろここまで何事も無く来ているのが一層不安を増幅させる

「何かの罠かしら・・・
なにも無さすぎる」

「ん?あれは・・・」

ーーーーーーーー

サクラの視線の先には一人の少年が辺りを見回している
ただその表情から察するに道に迷ったのかかなり不安を募らせ今にも泣き出しそうだ

「どうしよう・・・変な所にでちゃったな
早く帰らないと村の皆んなが心配してるかも・・・」

少年が歩を速めようとしたその矢先何かとぶつかり転倒してしまう

「うわっ!痛たっ、ごめんなさい」

「おいそこのガキ、どこを見て歩いてるんだ?」

「ほ、本当にごめんなさい!急いでて」

カムイ軍の手勢が五、六人ほど少年を取り囲んでいる
そのうちの一人は余程機嫌が悪いのかよもや少年相手に今にも得物を振るわんとしている

「相手が悪かったな、丁度憂さ晴らしがしたかった所だ
死ねぇっ!」

「お父さんお母さん、村の皆んな
ごめんなさい」

無駄な抵抗だと分かりつつも少年は体を屈める
自分はここで死ぬんだ・・・
そう思った

・・・

「ん、あれっ?」

痛みがない
何が起こったのか分からないままゆっくりと目を開いた

「ガ、ガハッ・・・」

今の今まで自分に得物を振りかざそうとしていた男が腹を貫かれて倒れている
そして残った数人と黒髪に和服を纏った女性が一人

「子供一人を相手に得物を?
フフフ・・・浅ましいですわ」

「何だこの女、殺れ!」

カムイ軍はサクラに対し執拗に攻撃を繰り返すがどれもひらりと躱され時間と共に一人、また一人と徐々にその数を減らし遂には一対一の様相となる

「悪しき行いにはそれ相応の報いがあるものです
さあ、どうしますか?まだやりますか?」

「ちっ!覚えていろ」

残った最後の一人は足早にその場を去っていった

「大丈夫?ケガはないかしら?」

「助かった・・・お姉ちゃんありがとう!」

「サクラ、突然どこかに行ったかと思ったら・・・
まあこんな状況だったし仕方ないけど」

「ところでこんな場所でどうしたの?
迷子になっちゃったの?」

「うん、近道しようとしたら知らない所に来ちゃって
ブドウの村に帰りたいんだ」

「ブドウの村ね・・・
サクラ、この先も何があるか分からないわ
その子を村に連れてってあげましょう」

「それがいいですね
というわけで僕、ここからはお姉さん達と一緒に行動しましょう
私はサクラ、こちらはハズキ隊長よ
よろしくね」

「僕はショウキっていいます
ん?隊長ってお姉ちゃん達ヴァサラ軍の人なの!?」

「そうだけど積もる話はまた後で、急ぎましょう」

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