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サクラと御庭番

テロ組織・ヤマネコ

自らの行いを『聖戦』と称し各地でテロ行為を繰り返す組織があった

しかし、ヴァサラ軍の活躍により組織は解散
するも残党は方々に散らばっていった

そしてここにも・・・

「今日も上手くいったわね」

「当然だ、しかしこのまま盗賊稼業を続けていても埒が明かんな・・・」

「そうね、ここら辺襲える所はあらかた襲ったし次なる稼ぎを考えないとね」

「と、なると次の狙いは・・・」

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サクラ

人と鬼の間に生まれた彼女は鬼として彷徨っていた所をヴァサラに拾われ、以降はヴァサラ軍隊員として過ごした

引退後はヴァサラ軍から程よく離れた場所にある寺子屋で未来ある子供達の為に教鞭を執っている

「サクラ先生、おはようございまーす!」

「みんなおはよう、今日も頑張りましょうね?」

朝になると自分で登校してくる子や両親の送迎で登校してくる子などで賑わっているが
どうやらサクラを一目見ようと子供の送迎を兼ねる一部の親から妙な人気があるようだ

「先生、お早うございます!
き、今日もお綺麗で・・・」

「あら、ありがとうございます😅
褒めても何も出ませんよ?」

最初は戸惑った様子だったがすっかり大人の対応も板に付いてきたようだ
だが・・・

「先生、最近気になる噂を耳にしたのですが」

「あら、何でしょうか?」

「なんでも、ここから少し離れた街では民家を襲い金品を奪う賊の話が出るという噂で・・・
各所で被害が多発していて手に負えないのだとか
ここら辺もいつ賊に遭うか分からなくて・・・」

「それは心配ですね・・・
情報ありがとうございます
ただ何ぶん、1人で寺子屋を回しておりますので
私も気を付けておきますが各自でも十分にお気を付け下さい」

「はい、ありがとうございます」

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「ヒューマ、聞いた?」

「ああ、間違い無いようだな」

「見るからにか弱そうな女一人・・・
楽そうね・・・」

「万が一見つかったとしても突破は容易そうだ
最悪殺しても問題無いだろう
決行は今夜だ・・・
ユキ、準備を怠るなよ」

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(バレてないと思ってるのかしら・・・
私もナメられたものね

夜に来るのなら今の時間は子供たちに危害が及ぶことは無さそうね
ただ心配要素としては下校中に子供たちが賊と鉢合わせる可能性はあるわね・・・
でもいきなり賊が出るから気を付けてー!
なんて言ったら怖がっちゃうし・・・

そうだ!)

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夕刻・・・

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「今日の授業はここまで
みんな今日もよく頑張りましたね!」

「サクラ先生ー!
今日もこの後おやつパーティーしよう!」

「うーん、残念だけど今日はみんなお家に帰りましょうね?」

「えぇー!?どうしてー?」

「お昼休みにね、ヴァサラ軍の人からお話があって
ヴァサラ軍が今日この辺りで夜間訓練を行うらしいの
だから危なくないようにみんなをお家に帰してあげて下さいってことなのよ・・・」

「そうなのー?
楽しみにしてたのにー」

「ごめんねー
でも明日のお楽しみに取っておきましょうね?」

「「「はーい!!!」」」

「ふふ、よろしい☺️
では今日はここまで!
皆さんさようなら!」

「「「さようならー!」」」

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(本当は夜間訓練なんて無いのに・・・
子供たちに嘘を付くわヴァサラ軍をダシに使うわ・・・
ハァ━(-д-;)━ァ...
申し訳無いなー
私だっておやつパーティーしたかったなー

・・・っと、いけないいけない!

さあ、あくまで平静を装うけどこっちの準備は出来てるわ・・・

いつでもいらっしゃい?)

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深夜

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「ヒューマ、下見した通りよ」

「よし、潜入するぞ」



「金目の物はこの辺りだな・・・」



「施錠も開いたわ」



「よし、一通りの物は盗み出せたわね」



「・・・」

「ヒューマ?
何か気になることでも
「おかしい」

「?」

「やけに静かだ
やけに上手く行き過ぎてる」



「やっと気付いたようね」

「しまった・・・」
「狼狽えるな、女一人どうとでもなる
殺るぞ」

「甘く見られてるわね、でもこれでも教師だし戦闘くらいは出来るわよ?」

サクラは木刀を得物に二人と相対する
機敏な動きで牽制しつつ傷を負わせずに捕らえる算段であったがしかし二対一では分が悪いのか、サクラは
”あっさり”敗れてしまう

「やはり大した事無かったな・・・
死ね」

ヒューマの持つ得物で腹部を貫かれたサクラは力無くその場に伏すかと思われた



「「!?」」

「フフ・・・
フフフフフ・・・」

「ど、どうして!?」

「腹に風穴を開けられて
何故立っていられる!?
確かに貫いたはず・・・!」

「確かに貫かれたけど・・・

・・・・・・・
たったそれだけよ」

「た、たったそれだけ!?
何故生身の人間がそれだけで済むの・・・」

「私はね・・・醜い半妖よ?
まあ、そうでなくともこの程度の力で私を殺せると思っていたの?
甘いわね・・・」

「「くっ・・・!」」

「貴方たちのような悪い大人たちは私がみっちり”狂逝”しないといけませんね?
フフ、最近体も鈍ってたし久しぶりに暴れさせて貰うわよ!」

「狂逝の極み・・・
”調狂!”」

サクラの身体から赤黒く禍々しい力が溢れ
二人を気だけで圧倒していく

「フフフフフ・・・
吸血姫!」

凄まじい速さでヒューマに斬りかかり返り血を浴びたサクラはボルテージを上げていく
先程貫かれた筈の傷は跡形もなく消え去っていた

「ぐっ・・・
ユキ!お前は逃げろ!」

「ヒューマ!?でも・・・」

「ヒヒヒヒヒ、逃がしませんよ!
音沙汰無(おとさたもなし)!」

たじろぐユキの背後に一瞬で周り一太刀を浴びせる

「ああっ・・・!」

「ユキ!?
こ、このっ・・・」

「無駄無駄ァァッ!!
蝶苦乱舞(チョークらんぶ)!」

懐から取り出した無数のナイフを苦無のように投げつけ肉を切り裂き、服の上から刺すように壁に拘束され戦意を喪失した二人はそのまま気を失う

「ふぅ・・・
今日の所はこの位にしておきましょう・・・」

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医務室

「「うぅっ・・・」」

「二人とも、目は覚めたかしら?」

「「!?」」

「逃げようとしても無駄ですよ?
さあ、愚行に及んだ訳を話して下さい」

二人は観念したのかこれまでの経緯を話した
テロ組織に属していたことや解散と共に賊として各地を荒らし回ったこと、そして・・・

「俺達二人には身寄りがないのだ
物心ついた時に親は既に亡く、施設に預けられた」

「ただそこも養護施設の皮を被って
裏ではヤマネコと繋がり様々な悪事に手を出していたわ
所詮、私達もヤマネコの一員になるように仕向けられていたのよ」

「傍から見ればどんなに愚かな組織でも俺達にとっては唯一の居場所だった
しかしそれもヴァサラ軍によって壊滅させられた・・・
俺達は二度も居場所を奪われたのだ」

「それでも私達なりに居場所を求めて、生きる糧を求めてやってきたのよ

・・・それがこのザマだけどね
もう諦めはついてるわ、さっさと殺して頂戴?」



「未熟な私のままなら、そうしていたわ

でも貴方達の話を聞いて分かった
貴方達も私と一緒なのよ」

「・・・同情しているのか?」

「ううん、そうじゃないの
私も小さい頃に突然居場所を失った
そして生きる糧を求めて貴方達のような・・・

いいえ、貴方達よりも残酷な事を繰り返してきた」

「ある日、そんな愚かな行いをヴァサラ総督に止めてもらってね?
総督はこんな私を軍に迎え入れてくれたわ

それからは軍の一員として、人として
多くの事を学ばせてもらったの」



「だから私、今ではこうして寺子屋の先生をしているのよ
あの頃の私のような子供を生み出さないように償いとしてね?」

「出会いや思い出は人を育ててくれるの
もちろん善人を生み出すこともあれば悪人を生み出すことも・・・

貴方達も今までは出会いや思い出に恵まれなかったのよ
ここまで辛かったでしょう?」



「でも、それももうお終い」

「「?」」

「ここで貴方達を許す代わりに条件があります

見て知っての通り、人が足りないのよ
ですから今日から貴方達は私のお手伝いさんになってもらいます!」

「「!?」」

「タダとは言いません
お給料はちゃんと出しますし住居も私で手配します
あともちろん、この話はヴァサラ軍及び総督にはしっかり通しておきますからね?
悪い話では無いと思いますよ?
もとより断れる状況でも無いと思うけど
如何かしら?」



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翌朝・・・

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「と、いうわけで今日から寺子屋に来てくれることになった新しい先生方を紹介します!」

「ヒ、ヒューマだ・・・」
「ユ、ユキといいます・・・」

(ホラ二人とも、子供達が恐がるから!
笑顔で優しく!)

「「よ、よろしくお願いしまーす!」」

「「「よろしくお願いしまーす!」」」

「ヒューマ先生、カッコイイー!」

「ユキ先生、彼氏いるんですかー!?」

((コ、コイツら・・・))

「ハイハイ、さっそく授業始めるわよー!
質問攻めは休み時間かおやつパーティーの時にしましょうねー!?」

「「「ハーイ!!!」」」

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数週間後・・・

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寺子屋は今日は休み
サクラと御庭番(役所名)は日々の雑務をゆったりとこなしているようだ

「寺子屋にはもう慣れたかしら?」

「はい、お陰様で」
「私も大分慣れました、ありがとうございます」

「それは良かったわー
二人とも、あの時と比べて顔つきも柔和になって安心したわー」

「こちらこそサクラさんのおかげで色々余裕も出来ました」

「それが聞けて良かった
やっぱり出会いや思い出は人をそだてるわね

さあ、今日のお仕事はこのくらいにしておやつパーティーしましょう!」

「「き、今日もですか・・・?」」

「そうよー!
この日のためにワグリくんがいーっぱいお菓子持って来てくれたんだから!」

「そのためという訳では無いと思いますが・・・」

「細かい事は良いの!」

ヒューマとユキもすっかり寺子屋に馴染んだようで
今ではサクラのサポートをしながらサクラが所用で寺子屋を空ける時は彼等が子供達を教えているようだ

寺子屋も今まで以上に賑やかになりこの平穏を絶やすことのないようより一層頑張る事を誓いながらお菓子を口いっぱいに頬張るサクラであった・・・

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