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組織能力ベースの人的資源管理

組織活動における人的資源管理の意義

これまで、企業が持続的競争優位を構築するために、組織能力を構築し高めていることを説明してきました。組織能力は、組織活動つまり組織メンバーの集団的な学習を通じて形成されていきます。ここでは、そのような組織活動における人的資源管理の意義を検討していきます。

組織活動は、企業の機能を構成するそれぞれの職能分野で展開されています。企業のマネジメントは、購買・生産・販売・流通・人事といった各職能を対象にこれらを調整しています。

この中で、人事に関わる人的資源管理は他の管理活動にはない特性を持っています。その根源は、人的資源管理は極めて主体的な活動であるという点にあります。つまり、他の職能と同じように人的資源管理は組織の目的、戦略に沿って調整される活動です。しかし、人的資源管理はそれにとどまらず組織を構成する人々の協働に直接働きかけます。これは、人的資源管理が単に組織を調整するのにとどまらず、組織自らの存在意義を形成していることを示しています。

組織能力の向上と人的資源管理

組織能力は、組織メンバーがその時々に直面する問題状況を解決していく学習能力を通じて向上していきます。さらに、組織が直面する問題状況を適切に捉えるための認識枠組み自体を作り替える活動プロセスを通じて再形成されています。

組織能力は、現場の実行レベルでは組織ルーティンとその改善能力として取られます。実践は知識の適応プロセスですが、単なる反復練習ではなく絶えざる学習の過程であり、その時々に判断を介した訓練によって形成される活動です。確実な実行のための訓練も繰り返し教え込みによる知識の固定化ではなく、微妙な付加価値的知識を獲得する動的な活動です。これが、現場レベルで戦略を形成されるプロセスです。

他方、組織能力は、トップレベルの戦略的意思決定能力としても捉えられます。トップは、絶え間なく変化する消費者のニーズや技術的機会、競合他社の活動を捉え、適切な戦略的意識決定を行なっていかなければなりません。しかし、そのような環境変化の認識は、トップマネジメントにおいて直接なされるわけではありません。事業機会の完治あるいは創造といった戦略的意思決定は、現地でキャッチされる情報と蓄積した知識に依拠しています。現場で戦略が実行される中で蓄積されてきた知識を活用し、あるいは組織活動の至るところで認識された環境に知識を意味づけていくことによって、新たな機会が感知・創造されます。

人的資源管理は、これらの組織能力を従業員の協働という面から支えます。人的資源管理が従業員の協働意欲を高め、彼らの能力を適切に発揮させることによって、組織の戦略実行能力を高める役割を担っていることはいうまでもありません。これに対して、戦略のダイナミックな再形成を可能にする環境適用的な組織能力と人的資源管理は、一見すると関係がないように思えます。しかし、トップによる戦略的意思決定が現場の環境認識能力、戦略創造能力に大きく影響され、かつ現場の組織能力が従業員の集団的学習によって担われることからすれば、人的資源管理が戦略創造能力にも貢献し得ることがわかります。

このように考えると、戦略と人的資源管理の適合とは、戦略形成プロセスの一端を担うものになります。人的資源管理は組織目的達成のた目に潜在的能力が高く多様な人間を確保し、戦略の着実な実行のために従業員の能力を最大限位引き出すために諸施策を考えます。そして、学習の機会を様々な形で提供することによって従業員の自立益な環境適用的行動を引き出し、ひいては組織の戦略創造能力に貢献する役割を果たしているのです。

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