上顎骨のロック
今日は歯科の話を…
上顎骨(写真の黄色い骨)のロックと言っても、骨がロックンロールするわけではない。
頭蓋骨はひとつなぎの一個の骨ではなくて、23個の骨が縫合で繋がってできている。
それぞれの骨は呼吸に合わせて、リズミカルに膨らんだり縮んだりしている。
(厳密には1次呼吸という脳脊髄液の循環に合わせて行われる。頭に指を置いてわずかに感じられるくらいの動き)
ところが、呼吸に合わせて骨が動かない人いる。
左だけ動かない人、右だけ動かない人、左右とも動かない人。
こういう状態を「ロックがかかっている」という。
鍵がかかったみたいに動くことができないのだ。
上顎は成長方向(前方)に向かって上下に微小に動いている。
上顎骨が呼吸に合わせて動けない状態を「上顎骨のロック」という。
上顎が動けない=成長できないということは、歯が植っている骨が小さいまま大きくならない→歯が生える十分なスペースがなくなり、歯並びが悪くなるということ。
歯並びをよくするためには、上顎にロックがかからずに、きちんと成長することが大事。
ロックがかかる原因は産道を通る時から、いや、もっと遡ると妊活の時から始まっている。産道を通る圧力、方向、離乳食の与え方、スプーンで与える方向、食事の時の姿勢…言い出したらキリがない。
ロックを外して骨を正常発育させれば、歯は自然に適切な位置に生えてくる。
(以上 ナチュラルメディカル 水野 聡先生 講演より)
実際に、姿勢や生活指導だけで歯並びを改善する指導をしている歯科の団体がいる。
重症の場合は、10年くらいかかって、生活の中で姿勢や噛み方の改善や口のトレーニングをして治しているのを見たことがある。
トレーニングだけでよくなる時期の人、レベルの人ならいいが、大人の歯がすべて生えてしまった方、あるいは現在子供の歯と大人の歯の入れ替わりの時期で、ほぼ歯並びの外形が出来上がっている子供、重症の歯並びの方だと、トレーニングだけでは不可能か、あるいは親子共々トレーニングに費やす時間が多くなってしんどくなる。
上顎骨の発育が悪くて、上顎の歯がきれいに並ばず凸凹だと、上顎がかぶさる下顎の歯列も自動的に小さくなり凸凹するか、逆に下顎が上顎にかぶさってしまう場合もある。
当院では、機能矯正装置を使って、まず上顎骨を大きくしていく治療を行っている。(上顎骨が大きくなったら、次に上顎に合わせて下顎も大きくして、きちんと噛み合うようにする)
大きくすると言っても、その人の歯のサイズに合った大きさにするので、どこまでも♾️に大きくするのではない。
「上顎骨を大きくすると、顔も大きくなりますか?」という質問もされるが、最大でも横幅と前方向に1センチ程度。平均で5〜6ミリ程度。
見た目はほとんど変わらない。
装置についているネジを回して、上顎骨を真ん中から開いていき、横幅を大きくする。
そして装置で上顎骨を前に引っ張って、前方向にも大きくする。
これらは、縫合を緩めてロックを外し、成長を促進することになる。
大人の歯が生えてくる前に、上顎骨を大きくして歯が生える適切なスペースを作ってあげるだけで、歯は自然と真っ直ぐに生えてくる場合が多い。
5歳くらいから始められるし、大人の歯への生え変わりの時期まで(10歳くらいまで)に開始するのがよい。
小学校の検診をして20年経つが、きれいに歯が並んでいる子供がだんだん少なくなってきた。
100人の中で5人いるかいないかである。
歯並びが悪くて凸凹していると、見た目に影響があるばかりでなく、歯磨きしにくくて虫歯になりやすい、口呼吸になりやすい(口呼吸の害はまた別の機会に説明します)、噛み合わせにも影響するので、食べ物が噛みにくい、姿勢が悪くなることもある。
下は7歳の時に機能矯正を始めた子ども。
今年の春、中学生になった。
出っ歯とガミースマイルが主訴で来院された。
こんなにきれいな歯並び、口元に変化した。
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