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風のエッセイ(6)

口さみしい人々

フロイトによると、大人になって、唇に関連する「習慣」がある人は、乳幼児期に、母親との親密な接触に乏しいからだという。それが、「タバコ好き、ガム好き、酒飲み、爪を噛む、指をしゃぶる、甘えん坊、おしゃべり、グルメ好き」などとして、大人になってからの性格として現れるということだ。

中国を旅すると(妻の親戚は全員中国)、その喫煙率の高さに驚かされる。若い時から男性のほとんどはタバコを吸い、また、初対面の人にタバコを勧めるのが、礼儀である。今の中国を見ると、昭和の日本もそうだったなあと思い出すのである。

現代の中国は共働きの夫婦がほとんどで、乳幼児は「おばあちゃん」によって育てられることが多い。ゆえに、実の母親からの十分なスキンシップが欠けていると推測される。また、昭和の日本もまた、団塊の世代から核家族化という流れの中で、子供たちは孤独を味合うことが多かったのではと考える。

最近の日本は、嫌煙、分煙という流れで、確かに、吸う場所は限られてきたのだが、今でもコンビニでタバコを買う人は絶えることがない。つまり、タバコがなくなるということは考えにくい。

タバコに限らず、「口唇的嗜好品」を好む人は、一度、自分の生い立ちを振り返ってみると良いかもしれない。

私は、単に健康のために禁煙を勧めるのではない。むしろ、何らかの習慣に依存している場合、多くは、自分の満たされなかった「乳幼児」時代の、基本的要求があるのだと気づくべきだと思うのだ。

そして、それを、過去に遡って満たすことができるのは、無条件の神の愛でしかない、ということも知っていただきたい。

だから、禁煙とか、爪を噛むことを止めるためには、心の空虚さが満たされるということが必要なのだ。

あらゆる依存症は、満たされない心を埋めようとする「代償行為」である。タバコ、酒から始まり、ギャンブルや覚せい剤に至るまで、その病理は同一なのだ。

心の欠けを満たす、「神への信仰」は、私たちのあらゆる代償行為をストップさせ、心も体も健全にするのである。

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