見出し画像

アレント 人間の条件

努力の結果が努力を費やしたのとほとんど同じくらい早く消費されるということ、これこそあらゆる労働の特徴である。しかもこの努力はその空虚さにも関わらず、強い緊迫感から生まれ、何物にもまして強力な衝動の力に動かされている。なぜなら生命そのものがそれにかかっているからである。


苦痛に満ちた体力の消耗と喜ばしい再生という定められた循環の外側に、永続的な幸福はない。
しかしこのような消耗と再生のバランスを崩してしまう生活もある。
 
たとえば、消耗のあとに再生がやってこないで、そのまま悲惨な状態が続く貧困と困窮の生活がある。
あるいは逆に、巨万の富の生活、全然努力を必要としない生活がある。
 
この場合には消耗の代わりに倦怠が現れ、消費と消化という必然の挽臼が無気力な人間の肉体を情け容赦なくすりつぶして、空しく死に至らしめる。
 
このように、消耗と再生の循環のバランスを崩してしまうものは、たとえそれがどんな生活であっても、生きていることからくる基本的な幸福感を台無しにしてしまうのである。

わ〜い!😄