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沈黙のレジ前 その3

結局のところ、彼女にとって良いこととは何だろうか、、、。

自動扉が開く。
一瞬歩みを止め、振り返る。
少女はうつむいている。
助けるべきか、助けぬべきか。答えはどちらでもあり、どちらでもない。そんな気がする。
僕は扉の前で一瞬歩みを止めたが、また次の一歩を踏み出し、店の外へ流れた。それが僕なりの答えだった。
外はまだ夏の暑さが残り、湿気が体にまとわりつく。
僕なりに悩んだポイントを簡潔にまとめると、「100円(自分の持っているもの)で、できる事できない事を知る」と言う点と、「困っている人がいたら、誰かが助ける(見捨てない)世界観」のどちらが彼女にとって良いのか。この両者が、僕の頭の中で卓球のラリーのように打ち合っていた。
そして間もなく、軍配は前者に上がった。
試合解説をするとすれば、セブンイレブンには、100円で購入できる飲み物がある事。もし彼女がそれを買えなかったとしても、深刻な事態にならなそうな事が主な勝因だったように思う。

少女がその後どうなったかは、わからない。

今思えば、100円でそれは買えない事と、100円で買えるものを教えてあげる事はできた、、、とも思う。
今さら後の祭りである。
もっと違う考え方もできたかもしれない。

"選択"は、突然迫られる。
日頃から心を落ち着けて、備えておかねば。
そんな事を思う、まだ暑い朝の一幕のはなし。

おわり

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