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面影

もう10年以上前に熊本を離れた、6つ程歳下の当時よく面倒を見てた子と久しぶりに会った。
髪を伸ばし顎髭も蓄えてた彼の姿は成長と時の経過を僕に感じさせた。
立派な青年になっていたが当時の面影も所々に残していた。
彼は僕に言った。「昔からかっこよくて憧れていたお兄ちゃんで、今も変わらずかっこよくて憧れる」と。
君が当時抱いていた憧れを壊さなかった僕自身を僕は誇らしく思うよ。
僕は君が思うほどかっこよくないし強くもなければ立派でもない。毎日不安に押し潰されそうになりながらギリギリ立ってるんだ。でも幼い君があの頃抱いていた「憧れ」の延長線に僕がまだ立っているのだと言ってくれたことが嬉しい。
幼い君があの頃抱いていた「憧れ」からかけ離れた、弱々しく頼りのない僕でなくて良かった。君を落胆させるような僕でなくて。例えそれが見せかけの虚勢であったとしても、君の前でそのハリボテを壊さずに振る舞えて本当に良かった。
君が語ってくれた僕への憧れは僕自身に「もっと強くなりたい」と思わせてくれたんだ。
君と次会うのは何年後だろうね。
その時も僕は君の「かっこいいお兄ちゃん」でいられるだろうか。
その頃には僕が必死に守ってるハリボテを見抜くくらいには君はもう世間や社会を知っているのかもしれない。でも次会うその時は今よりも強い僕でいたいと思うんだ。

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