ピアノのネタです
このピアノはオーストリアのピアノメーカーのベーゼンドルファーのモデル290インペリアル・コンサート・グランドピアノ。
1台4000万円以上する。97鍵のコンサートグランドピアノ。僕は今から45年ほど前、東京の新宿区の専門学校の音響科に通っていた。その学校のスタジオでこのピアノの音を初めて聴いた。それまでグランドピアノというと、音楽室のお馴染みYAMAHAしか知らなかった。ロック小僧で、ほとんど生楽器に馴染みのない僕も、学生時代に授業で体験し、衝撃を受けたのがこのベーゼンドルファーのピアノとストラディバリウスのバイオリンの音だ。話が逸れるが、ストラディバリなんて、楽器の授業でやってきた東京藝大の大学院生が講師で持ってきたんだけど、小さな教室で聞いたんだからエライコッチャで、生音なのにフェンダーツインリバーブのフルボリュームで鳴らしてる?くらいの音量だったんだから。
話を戻します。ベーゼンドルファーというのはまさにモンスターみたいなピアノだった。鍵盤の数ももちろん多いんだけど、低音から高音まで実にふくよかな音がする。倍音成分が多いんだろうね。録音の実習で、マイクを色々と試してみたが、モニタースピーカーからあの音は出てこない。先生に「オメーらどんな耳してんだよ、全然音違うじゃんよ。もう一回スタジオ入って生音聞いてこい!」なんて怒鳴られて。結局再現できなくて。でもあの音は忘れられない。確か三重県文化会館の大ホールにあるんだよね。
僕が初めてベーゼンドルファーの音を聞いたのはたぶんこのアルバム、ゲイリーピーコック「Tales Of Another」だ。ベースのゲイリーピーコック名義のアルバム。ピアノにキースジャレット、ドラムスにジャックデジョネットというトリオ。今から48年ほど前の高校生の頃。当時の日本ではピアノのキースジャレットの方がネームバリューがあったためキースジャレット名義でリリースされていた記憶がある。もちろんアナログレコードだ。ドイツのECMというジャズ専門メーカーからで、スピーカーから出てくる音の生々しさに驚いた。ベースの音、ドラムの音そして何よりピアノの音の存在感。とても耳に優しい、それなのに主張の強い音。そりゃキースジャレットですもんね。
それで学校のスタジオで聴いて驚いた。「あのレコードと一緒やん!」スタジオ実習で課題が出た「それぞれが音がいいと思うレコードを持って来てスタジオで聴く」もちろんこのレコードを持って行った。あの恐い先生も、このレコードのチョイスは褒めてくれた。後に知ったんだけど、キースジャレットは、コンサートでもレコーディングでもベーゼンドルファーのモデル290インペリアル・コンサート・グランドピアノが必須だとか。以来僕はこのアルバムをオーディオチェック用に使っております。50年近く経過して買い直したけど、CDは音が悪いので迷わずSACDです。
キースジャレットの名作がこの1975年のドイツはケルンでのソロコンサートのライブ。レーベルは同じくECM。ピアノ1台のみのすべて即興演奏のライブアルバム。音はもちろんECMなので透明感に満ちた録音。このレーベルのコンセプトは、「音は回路を通すごとに悪くなるので、極限にシンプルな録音」と聞いたことがある。この時はあらゆる面で最悪の条件下でのコンサートだったらしい。キースジャレットも長いツアーの疲労が溜まり最悪の体調。そして肝心のピアノ。当然事前にピアノはベーゼンドルファーのモデルまで指定してあったのに、現地入りすると、練習用のしかも調律もしてないピアノだったそう。それだけでもキャンセルしてもやむなしという状況だったにも関わらず、満席のお客さんと録音の段取りもできているということで、キースジャレットは決行したそうな。もちろん調律だけはしっかりとし直した上で。
そんな条件での音がこれ?そりゃ名盤になるわ。しかも頭から終わりまで即興演奏って…。
キースジャレット聴くならまずこの2枚からお勧めします。
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