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絵画への目覚め(ベラスケス:ラス・メニーナス)

 初めまして。CDOと申します。
 当面は備忘録的に学習して面白いと思った絵画や歴史のことについて投稿していこうと思っています。

導入的自己紹介

 鳥取県のタバコ・米農家の次男として生まれて、高校卒業するまでずっと畑作業を手伝っていました。(田植えなどの季節は公休扱いでした)
 高校卒業後は京都大学に進学し、そのまま大学院にも進学し植物の遺伝子組み換えの研究をしていました。大学教授になるべく頑張っていたのですが、ある日突然、実験中にあと30年頑張らないと教授になって研究室の長になれないのかと思った瞬間心が折れてしまい、民間企業に就職して働き始めました。
 職業は外資系の戦略コンサルティング会社で、最初の1年は本当に死ぬのではないかと思うくらい働かせられましたが(事実同期の2割が倒れていきました)、ドMなのか今振り返ってみると非常に充実していたように感じます。ちなみに私が所属していた会社は今ではそのような働き方はできなくなっており、良かったと思う反面、ファーストキャリアで回りより圧倒的な実力をつけるためのスタートダッシュを切ることが難しくなってしまったのではないかという残念さもあります。
 そこで5年ほど働いておりますが、近々退職して友人と起業する予定です。コロナ禍の下での起業は無謀だと言われもしましたが、そのあたりの内容も今後記事に書けたらいいなと思っております。

絵画に興味を持ったきっかけ(ここから本題)

 さて本題ですが、私は上記の通り田舎育ちな上に、大学でも理系至上主義で文系の人間で数学出来ない人間を馬鹿にするような思い上がり人間で、文化的な素養は皆無でした。そんな人間が社会人になったあと、絵画に興味を持ったきっかけがこの本でした。

 千住博に関しては、音楽は好きだったので次男・長女の活動は知っていましたが、長男の活動に関してはあまり知らなかったので勉強がてら帯が気になったこの本を買ったのでした。ちなみに、千住博は日本画家で西洋画は専門ではありません。それが故に自由な発想で西洋画の本を書いたのかと思いますが、これが非常に面白く、中学時代に美術が嫌いになった人たちにはぜひ読んでいただきたい一冊です。
 この本の中で一気に私が引き込まれた紹介文が、本文のタイトルにもなっているベラスケスの「ラス・メニーナス(宮廷の侍女たち)」に関する解説文です。

映画のような物語

 この絵を描いたベラスケスは、17世紀のスペインの王フェリペ4世からの厚い信頼を得ており、ベラスケスが病死した際には、フェリペ4世は親友を失ったかのように悲しみ、追悼をし続けたと記録されています。

 さて、そんなベラスケスですが、ある日フェリペ4世から家族と側近も登場する大きな肖像画の依頼を受けます。しかし、そこにはいくつか条件がありました。

"家族とは言ってもフェリペ4世自身とその妻マリアナ、そして一人娘のマルガリータ王女だけですから、その周囲には楽しい日常が伝わるような近しい人々も配置してほしい。当然ベラスケスもこの中に絵を描く姿として入らなくてはならぬ。目の中に入れても痛くない待望のマルガリータ王女はひときわ目立つように描いてほしい" 
"老人のとなった自分(フェリペ4世)はなるべく小さく、よくわからないように描いてほしい。それと妻マリアナもあわせて同じようになるべく小さくしなくてはならない" 
原文ママ

 これにベラスケスは悩みました。例え国王自身の発注であっても、王の威厳を損なうような肖像画を描けば、側近たちから厳しい処分が下るだろうし、ベラスケスの宮廷画家としての名声も地に落ちることとなります。
 しかしそれは、スペイン絵画史上最大の巨匠であるベラスケスであればなんとかしてくれるというフェリペ4世の信頼から来る依頼でもありました。

 ベラスケスはこの課題に考えに考え、1つの解を見出します。
 それはベラスケスがフェリペ4世と王妃マリアナ夫妻を描いている姿を見ている人々を描くという構図でした。

 画面中央の鏡にはポーズをとる二人、フェリペ4世と王妃マリアナが映っています。つまりこの絵の視点はフェリペ4世から見た様子となっているのです。絵の左側にはフェリペ4世夫妻の肖像画の製作するベラスケス、中央には現場を見に来た一人娘、そしてその周りを囲む宮廷の侍女や道化たちが見えます。そうすることによりこの絵にはしっかりと王・王妃の存在感を感じさせた上で、宮廷内の賑やかで和やかな雰囲気を伝え、娘の存在も際立った構成の絵となります。

 フェリペ4世はこの絵を痛く気に入り、生涯自身の近くに飾っていたそうです。

(ちなみにこの物語の出典が不明なので、もしご存知の方いましたら教えていただけますと幸いです。)

背景とセットで絵を見る楽しさ

 この絵の制作物語を知ったあとにこの絵を改めてみると、1本の映画を見たかのような満足感と高揚感がありました。
 絵画の見方にはいろいろあり、見たままの印象を楽しむことももちろん大事ですが、背景を知ることでより楽しむことができます。それはたかも、意味を知らない外国語の歌の歌詞を知ることでより深く楽しめるように。
 名作と呼ばれる作品はおおよそ、過去にない困難を乗り越えて生み出されるものが多いです。(この辺りの話もおいおいnoteに書き込みたいところです。) また、名作と呼ばれる作品を知っておくことで、それをオマージュした作品を見かけた時の楽しさが倍増します。

 例えば下記のピカソの作品

ピカソ-ラスメニーナス

 この作品見覚えがありませんか?
 そう、先ほど紹介したベラスケスのラス・メニーナスのオマージュになっています。この絵単体でも面白い絵ですが、ベラスケスの絵、そしてその絵が描かれた背景をしっていると余計に面白く見えるはずです。

 このように絵そのものを見てもよくわからないなという人はぜひ、その絵の歴史から絵をみるというアプローチをとってみてほしいと思います。新しい発見があり、絵に興味をもち、最終的には絵そのものをみてあれこれ考えて面白いと思えるようになると思います。

 今後も絵・歴史にまつわる文章を自身の勉強・備忘を兼ねてあげてまいりますのでよろしくお願いします。

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